今日は主治医による診察です。
カンファレンスの結果を踏まえて術後半年足らずで傍大動脈リンパ節に局所再発してしまった癌を手術できるかというのを聞いて、セカンドオピニオンも含め今後の治療方針を練ることになっていました。

結論から言うと手術は断られました。
「切れない」というより「切らない」とのこと。
技術的には難しいものの切ること自体は可能だそうです。
しかし切ることのリスクと得られるリターンを考えた時に、トータルで患者本人の利益とならないためこの病院では手術をしない方針を取るとのことでした。
私のケースは局所再発ではあるものの、術後半年以内での早期の再発であるという点と、術前投与5クール、術後投与3クールと抗がん剤治療を長くしたにも関わらず抑え込めなかったという点から、手術をしてもまたすぐに再発してしまう可能性が高く、手術のダメージで体力が落ちると急に癌が暴れだしてしまう可能性もあり、手術はデメリットが大きいとのことでした。
既に全身転移している可能性も考慮しなくてはならないようです。

しかしこの切ることのリスクと得られるリターンの評価については医師や病院により見解が異なるとのことで、セカンドオピニオンをする意義はあるそうです。
慎重な先生もいればイケイケな先生もいるとのことです。
「泌尿器科医が100人いたら何人くらい手術しますか?」との質問には「10人くらい」と答えてくれました。
そういう訳で前回教えられた手術するかもしれない病院二ヶ所の主治医がお勧めする先生と、主治医の元上司で結構イケイケな方であるそうな先生を加えた三ヶ所にセカンドオピニオンに行くことにしました。


手術の代わりにする治療としてはカンファレンスの結果、化学放射線療法が提案されました。
放射線とシスプラチンを併用することで効果を大幅に増強する治療法です。
放射線は20日連続で照射し、最初の5日と最後の5日にシスプラチンを投与します。
ただしこの治療法はよそに転移が飛んでいないことを全身検査で厳密に確かめないと適応しないというのがカンファレンスの結果決まったそうです。
全身検査はPET-CTとDWIBS(拡散強調全身MRI)の両方をするそうです。
全身検査は放射線をするにせよセカンドオピニオンの結果手術をすることになるにせよ必要なので、セカンドオピニオンと並行して行うことを提案されました。
PET-CTは院内で、DWIBSは八重洲クリニックで撮影します。
八重洲クリニックの3.0テスラのDWIBSはとてもきれいに撮影してもらえるので主治医たちはいつもここを使っているそうです。

重粒子線についてはとりあえず三ヶ所のセカンドオピニオンが出そろってから動こうということになりました。
前回のセカンドオピニオンの先生は腎盂尿管癌のような尿路上皮癌はそれほど放射線感受性が高くないとの報告があるので重粒子線をお勧めすると言っていたのですが、主治医によると感受性は実は低い訳ではなくシスプラチンと合わせるとかなり使えるとのことでしたので、そちらももう少し調べたいと思います。


全身療法のキイトルーダ単剤療法に行く前にもう少し局所療法を頑張ってみたいです。
主治医の話によると腎盂癌や尿管癌はたとえ局所再発であっても再発癌は切らずに化学療法のみというのが普通で、局所療法というのはほとんどやらないそうです。
切れるからと切ってもものすごい勢いで癌が広がってしまいかえって予後を悪くするというケースもあるらしいとのことでした。
業界としてはあまり良い思い出がないジャンルのようです。
私としては思い出話に留めずに、後ろ向き研究でいいのでデータをまとめて再発局所治療のエビデンス(あるいは再発局所治療を行わないエビデンス)を作ってほしいものです。

思えばこの腎盂・尿管癌という癌は人数がそれほど多くないためか、果敢に挑んだ治療のデータがなかなかまとめられず、結果として全体的にあきらめが早い傾向があります。
私が初発治療で受けたステージ4でもリンパ節転移を術前補助化学療法で消してから手術するという集学的治療による拡大手術も、だいぶ前から行っていたにも関わらずそのエビデンスが世に出たのはたった数年前のことでした。
もちろんガイドラインには載っていません。
それどころかガイドラインが最後に更新されたのは2014年です。
拡大手術によるリンパ節転移症例の治療も、セカンドラインのキイトルーダも最新版のガイドラインにはありません。
夏に参加した臨床腫瘍学会で聞いた肺がん治療のガイドラインの作り方の話と比べると寂しいものがあります。
もちろん泌尿器腫瘍の先生方は外科と内科の切り分けがなく、外科医と内科医の両方の仕事をしなくてはならず多忙なため、外科と内科の分業が完全に成立している肺がんとは状況が異なるのでしょうが、もう少しでいいので頑張ってもらえたらなと思わざるをえませんね。

年末の繁忙期で仕事が非常に忙しいのですが、調整やキャンセルなどをやりくりして何とか「ながらワーカー」を全うできるよう頑張りたいです。
楽しみにしていたいくつかの忘年会もキャンセルです。
昨年GC療法真っ只中のため出られなかったので今年こそはと思っていたのですが治療と仕事の両立のためなら仕方ありませんね。
心のどこかで「最後かもしれないのだから出ればいいじゃないか」と思う自分もいるのですが、そんなことにならないよう治療を見定めて主治医や医療者の皆様の助けを借りて乗り切っていきたいです。

明日は私の事務所の冬のボーナスの支給日です。
スタッフ一人一人の労をねぎらう大切な日です。
これだけは外せません。
明日の朝一番で回ってから病院にPET-CTを撮影しに行きます。