オリゴメタ説(少数転移説)というのは我々がん患者の間でしばしば話題になるキーワードです。
従来であれば再発や転移があると既に全身にがん細胞がまわってしまっているので局所療法は無意味で全身療法しかないとされていたのですが、最近ではオリゴメタ説といって、少数の転移であれば局所療法が意味があり、予後の改善に有効であるという考え方が出てきています。
私が再発治療で局所療法を模索する根拠もこのオリゴメタ説にあります。
オリゴメタ説はこれまでエビデンスが弱かったそうなのですが、先日アメリカで行われた第60回米国放射線腫瘍学会(2018ASTRO)にて少数転移を有する患者に対して行ったランダム化試験において、定位放射線(SABR)で転移を治療することが大幅に予後や生存期間を改善することが発表されたという情報をキャッチしたので共有します。
ランダム化試験で証明されたのはどうやら初めてのようですね。

記事:
2018 ASTRO: SABR-COMET: Stereotactic Ablative Radiation Therapy for Oligometastatic Tumors(The ASCO Post)
http://www.ascopost.com/News/59410

元となった学会発表:
Stereotactic Ablative Radiation Therapy for the Comprehensive Treatment of Oligometastatic Tumors (SABR-COMET): Results of a Randomized Trial
D.A. Palma et al
https://www.redjournal.org/article/S0360-3016(18)31106-4/fulltext

1~3箇所の転移を有するカナダ、スコットランド、オランダ、オーストラリアの患者99人(乳癌18人、肺癌18人、大腸癌18人、前立腺癌16人を含む)を①通常の治療を行うグループ②通常の治療に加えて転移先に定位放射線(SABR)をあてるグループの二つに分け、2012年~2016年の間治療を行ったそうです。
生存期間中央値(OS)は①通常の治療のグループでは26ヶ月、②通常の治療に加えて転移先に定位放射線(SABR)を行ったグループでは41ヶ月と大きく伸びました。
5年以上の生存率は①通常の治療のグループでは24%、②通常の治療に加えて転移先に定位放射線(SABR)を行ったグループでは46%とこれも大きく伸びました。
ただし治療の有害事象は①では9%に対し②では30%とかなり副作用はきつめの様子です。

記事によると演者のPalma医師は今後転移先が10か所までの患者を扱ったSABR-COMET-10という治験を計画中のようです。
再発しても、転移しても、それでもあきらめずに治療をするオプションが増えることは非常にありがたいことです。
このところお世話になっている読影医の先生も再発治療はガイドラインを超えて放射線治療や手術などの局所療法で踏み込んだ治療を行うことが成果をあげていることが現場では知られているとおっしゃっておりました。
一つや二つの転移であきらめずに全身療法と局所療法を複数組み合わせた集学的治療で挑むことがもっと一般的になり、より多くの癌患者が長期生存できるようになってほしいものです。