先週末に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)にて、転移性尿路上皮癌(膀胱癌・腎盂癌・尿管癌)のオプジーボ+ヤーボイ併用療法の治験第二相(CheckMate-032試験)の結果が発表されたそうです。

オプジーボ+ヤーボイ併用療法は二種類の異なるターゲットを用いた免役チェックポイント阻害剤の併用療法で、国内ではメラノーマに次いで最近腎細胞癌で承認されたばかりです。
2018年のノーベル医学生理学賞はオプジーボなどが用いるPD-1を発見した本庶先生とヤーボイなどが用いるCTLA-4を発見したアリソン先生が受賞したのは記憶に新しいと思います。
この二人のノーベル賞受賞者が見つけた夢のドリームタッグで癌に挑むのがオプジーボ+ヤーボイ併用療法です。
私のブロ友さんは腎細胞癌サバイバーの方が多いため、皆さまがこの新治療でざわついているのを横目に、腎盂癌のような尿路上皮癌でも使えたらいいのになと興味を持っておりました。
先週末のESMO2018で治験第二相の良い結果が発表され、日本でも現在治験第三相の募集が始まっているという情報をキャッチしたため共有いたします。

この発表についての小野薬品のプレスリリースはこちらです。
「オプジーボとヤーボイの併用療法が、進行膀胱がん患者において有望な結果を示す」
https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n18_1022_1.pdf

また、この発表についての記事はこちらです。
「進行尿路上皮がん(膀胱がん等)患者に対するオプジーボ単剤療法またはヤーボイとの併用療法 欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)」
"ESMO 2018: Nivolumab Alone or in Combination with Ipilimumab in Patients with Platinum-Pretreated Metastatic Urothelial Carcinoma, including the Expansion from CheckMate 032"

2種類以上の治療歴のある274人の進行尿路上皮癌患者を①オプジーボ単剤②オプジーボとヤーボイを3:1で使用③オプジーボとヤーボイを1:3で使用、の三つのグループに分けたそうです。
・奏効率(ORR):①オプジーボ単剤で26%②オプジーボとヤーボイ3:1で27%③オプジーボとヤーボイ1:3で38%
・全生存期間中央値(OS):①オプジーボ単剤で9.9ヶ月②オプジーボとヤーボイ3:1で7.4ヶ月③オプジーボとヤーボイ1:3で15.3ヶ月
・治療関連有害事象による治療中止率:②オプジーボとヤーボイ3:1と③オプジーボとヤーボイ1:3では13%、①オプジーボ単剤では4%

オプジーボ+ヤーボイを1:3で使うと奏効率も全生存期間中央値も大きく上乗せされるようですね。
二つ以上の治療を試してもう手が尽きた状態からのスタートだと考えると非常に期待が持てる結果です。
さらに演者のRosenberg医師によるとがん組織中のPD-L1発現率が1%以上の患者ではオプジーボ+ヤーボイ1:3では奏効率は58%、生存期間も長くなるとのことです。

記事によると現在この結果を踏まえた上での治験第三相が行われているようです。
治験第三相(CheckMate901)はグローバルで897人を組入れ予定で、日本では18か所で現在参加者を募集しているようです。
こちらに治験情報があります。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT03036098
治験の対象の要件がきつめですので興味のある方は主治医の先生に対象になるかどうかを聞いてみて下さい。
どうやら転移した状態での治療をしていたり、免疫チェックポイント阻害剤の治療歴があると対象外なようです。

免役チェックポイント阻害剤や分子標的薬、それらを既存の化学療法と組み合わせた併用療法など、次々と新しい治療法が尿路上皮癌にも登場しつつあります。
尿路上皮癌は聞いた話によると20年前からほとんど新しい治療の動きがなく、20世紀に取り残された癌腫の一つだったそうなのですが、ようやく21世紀の最新がん治療に追いつきました。
昨年12月に承認されたキイトルーダを使って多くの尿路上皮癌の先輩方が戦っています。
切除できなくても、再発しても、あきらめずに根気強く戦う気持ちをかなえるための武器が揃いつつあることは非常に心強いです。
今後の研究開発にも大いに期待しております。