尿路上皮癌待望の分子標的薬情報を見つけました。
ヤンセンファーマが現在治験中のエルダフィチニブ(Erdafitinib)という飲み薬の情報です。
FGFR遺伝子変異のある尿路上皮癌患者を対象に治験第二相でとてもよい成績を出しています。

エルダフィチニブはFGFRというレセプターのチロシンキナーゼ阻害剤で、いくつかの癌種で治験が進行中です。
特に尿路上皮癌ではアメリカのFDAに画期的新薬として迅速承認の指定を受けており、先月の米国臨床腫瘍学会でBest of ASCOに選ばれた期待の新薬です。
2018 ASCO: Erdafitinib Shows Activity in FGFR3-Mutated Urothelial Cancer
http://www.ascopost.com/News/58916

尿路上皮癌は膀胱癌・尿管癌・腎盂癌により構成されるがんです。
そのほとんどが膀胱癌で、弟分の腎盂・尿管癌は数が非常に少ないためほぼ膀胱癌と同じ取り扱いで化学療法を行います。
おさらいになりますが、尿路上皮癌は化学治療が乏しく、昨年の12月に免役チェックポイント阻害剤のキイトルーダが承認されるまではファーストラインのGC療法が効かなくなったところで「もう治療がありません」となってしまう状態でした。
キイトルーダがなかなか良い結果を出していると主治医は言っていましたが、すべての人に効くという訳ではなく、有効な次の一手の登場が待ち望まれています。
そのような需要に応えるため開発中の分子標的薬の一つがこのエルダフィチニブなのです。

上記の米国臨床腫瘍学会の記事によると、転移をしている膀胱癌の患者の15-20%にこの薬がターゲットにするFGFR遺伝子の変異があるそうです。
(アメリカでのデータなので、人種的な違いにより日本のデータとは異なる可能性はありますが…。)
そしてこの遺伝子変異があると免役チェックポイント阻害剤が効きづらい可能性が高いとのこと。
そこでこのFGFR遺伝子が変異している転移ありの膀胱癌患者に対しエルダフィチニブを投与する治験が行われています。

治験第二相の結果は…
・奏効率:40%(CR3%、PR37%)
・病勢コントロール率79%(CR3%、PR37%、SD39%)
・全生存期間中央値:13.8ヶ月
・免役チェックポイント阻害剤が効かなかった患者の奏効率:59%

何ともすごい結果です。
分子標的薬というと副作用に苦しむ方が多いと聞きますが、この治験では治療関連死はゼロで、グレードの低めの報告が多かったため十分実用に耐えるようです。
一日も早く実用化してほしいです。

記事によると治験第三相がただいま準備中のようです。
治験情報サイトで調べてみたところ治験第三相は国際共同治験のようです。
・Clinicaltrials.gov(英語)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT03390504
・iyaku search臨床試験情報(日本語)
http://www.clinicaltrials.jp/user/search/directCteDetail.jsp?clinicalTrialId=20541
日本では34例の組み入れを予定しているそうです。

治験を行う病院は日本では20か所。
現在準備中でまだ募集は始まっていないようです。
一応リストを作ってみました。
・弘前大病院
 Hirosaki University School of Medicine & Hospital    
・国立がんセンター東病院
 National Cancer Center Hospital East    
・香川大病院
 Kagawa University Hospital
・神戸市立医療センター中央市民病院    
 Kobe City Medical Center General Hospital
・獨協医科大埼玉医療センター
 Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital
・四国がんセンター
 National Shikoku Cancer Center
・宮崎大病院    
 University of Miyazaki Hospital    
・長野市民病院
 Nagano Municipal Hospital    
・愛知県がんセンター
 Aichi Cancer Center Hospital
・近畿大病院    
 Kinki University Hospital    
・大阪国際がんセンター
 Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases
・大阪市立大病院
 Osaka City University Hospital    
・北里大病院
 Kitasato University Hospital    
・東邦大医療センター佐倉病院
 Toho University Sakura Medical Center
・北海道がんセンター    
 National Hospital, Hokkaido Cancer Center
・東京女子医大病院
 Tokyo Women's Medical University Hospital
・日医大病院
 Nippon Medical School Hospital    
・筑波大病院
 University of Tsukuba Hospital    
・山口大病院
 Yamaguchi University Hospital    
・横浜市立大病院
 Yokohama City University Medical Center    

治験対象の要件がFGFR遺伝子変異以外にも細かく設定されているので、もしこの治験を検討される方は主治医の先生に相談してみるといいかもしれません。

一日も早く新しい薬が登場して、転移でも再発でも尿路上皮癌ではなかなか死なないような時代が来てくれることを願ってやみません。