昨年12月のキイトルーダ承認により、腎盂癌・尿管癌・膀胱癌を含む尿路上皮癌の治療に革命が起きました。
尿路上皮癌はもともと化学療法が未発達で、シスプラチンを中心としたファーストラインが効かなくなった時点で治療の手が尽きてしまう状態が長く続きました。
ステージ3までならばそこそこ予後の悪くないがんであるにも関わらず、ステージ4になった途端に予後不良で生存率が低いがんになってしまうからくりは化学療法の手薄さにありました。
2017年の米国臨床腫瘍学会の報告書でも尿路上皮癌への免役チェックポイント阻害剤の登場を30年ぶりのパラダイムシフトであると挙げているそうです。

さて、先週判明した術後の病理検査の結果、すでに私の体内にシスプラチン耐性のがん細胞が存在していることが明らかになった今、再発後の治療ではキイトルーダが頼みの綱になることが確定しました。
しかしキイトルーダの奏効率はそれほど高い訳ではありません。もしもこれが効かなかったら次の一手はどうするのか?当然不安が出てきます。
不安な時はとりあえず調べてみようということで、家族と一緒に自分なりにキイトルーダの次の一手をざっくりと調べてみました。

全体的には分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤併用療法、殺細胞剤の三つが次の一手として見つかりました。
不完全ではありますが備忘録がわりにブログにもアップします。
もし他に情報があれば教えていただけると助かります。
ただし治験中の薬というものは有効性を示せずに消えていくものの割合が多いそうですので、こんなものもあるんだ、くらいの期待度で参考にせよとのことです。

1. 分子標的薬
1)尿路上皮癌専用の分子標的薬
①enfortumab vedotin
プラチナ製剤→免役チェックポイント阻害剤という治療歴があり、治療を使いつくしてしまった尿路上皮癌患者を対象にアステラス製薬のASG-22ME enfortumab vedotinという抗体?薬物複合体が治験中です。
尿路上皮癌待望の分子標的薬です。
これは尿路上皮によく発現しているネクチンー4に結合する抗体に、細胞分裂が盛んな細胞を殺す毒をくくりつけた薬剤です。
アメリカでは2018年4月にタキサン系と比較する治験第三相が始まりました。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03474107
日本では8か所の病院で2017年より治験第一相が始まっており今は募集していないそうですね。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03070990
2018年3月にアメリカFDAのブレイクスルーセラピーに指定され迅速審査が受けられるようになっているようです。

2)他の癌の分子標的薬
①サイラムザ
ラムシルマブ(サイラムザ)+タキサン系の併用療法は治験第三相が2017年に終了し、承認申請を準備中。

③スーテント
各種行われているようです。詳しくは調べきれませんでした。

②ローラチニブ
ローラチニブ単剤とタキサン系を比較する治験第二・三相が2018年7月より開始予定で、日本では20か所以上の病院が参加するようです。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03410693


2. 免役チェックポイント阻害剤+αの併用療法
1)細胞傷害剤との併用
①GC療法との併用
キイトルーダ、テセントリクなどで治験第三相が進んでいます。
腎盂癌ブロガーではjinzouさんがアテゾリズマブ(テセントリク)+GCの治験を受けてらっしゃいますね。

2)分子標的薬との併用
①ローラチニブ併用
ローラチニブ+アテゾリズマブ(テセントリク)の国際共同治験第一・二相が2018年7月開始予定で準備中のようです。
日本では国立がんセンター東病院、がん研有明病院、四国がんセンター、筑波大病院で行うとのことです。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03473756

②enfortumab vedotin併用
キイトルーダ/テセントリク+ASG-22ME enfortumab vedotin
前述の尿路上皮癌用の分子標的薬enfortumab vedotinと免役チェックポイント阻害剤の併用療法です。
アメリカで治験第一相が2017年10月から始まっているようです。
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03288545

3. 細胞障害剤
1)タキサン系
パクリタキセルやドセタキセル、ナブ・パクリタキセル(アブラキサン)など様々行われているようです。
膵臓癌で有名なアブラキサン+ゲムシタビン療法の治験が行われている国もあるようです。
パクリタキセルの報告などを見るとあまりぱっとしない感じのように素人目には見えます。

尿路上皮癌は化学療法が手薄ですが、手薄ということは治験の要件である「既存薬への優位性」を示すことが至難の業ではないということになりますので、もっと沢山の新薬がどんどん出てきてくれればなと思います。
一日でも長く生きのびて、新薬をつないで長期生存を目指したいところです。