先日、広島京都に出張した際、旅のお供に一冊の小説を持参しました。
京極夏彦氏の「死ねばいいのに」
ひっそりとプロフにも記載しているとおり、私は京極夏彦(=なっち)のファンなんですよ。
最近、アメーバに毒されいて読書はずいぶんご無沙汰だったのですが、
これがなかなかの傑作でしたので、みなさんに紹介したいと思います。
物語は、鹿島亜佐美さんといううら若き女性の変死をめぐる、回顧録として展開していきます。
主人公は、故人と「知り合い」だったという渡来健也という若者。
亜佐美の生前の関係者に対して、健也が次々とコンタクトを取り、
「アサミのことを教えてくれねーか」
と、チャラ男節全開で聞き回っていくのですが、
その関係者というのが一癖も二癖もある人間ばかり。
例えば、派遣先の上司はアサミと愛人関係だったり、
アパートの隣人はアサミに彼氏を寝取られたと逆恨みし、陰湿な嫌がらせをしていたり。
挙げ句はアサミを借金の形に売り飛ばした実の母親や、
アサミを囲っていたヤクザなんかも登場します。
彼らは面識のない健也から不躾な質問を受け、困惑しあるいは敵意をむき出しにして応対するのですが、
いずれもアサミが死んで悲しむというより、自らの境遇を嘆き自己保身に終始するばかり。
そんな彼らに向け、健也は
「誰もアサミのこと教えてくれねーから。
誰に尋いたって、自分のことしか言わねーし。
まあ、他人のことなんか解る奴も居ねーんだろうと思うけど、
それにしたって的外れ過ぎ。
誰もアサミのこと見てねえ。
アサミがどう感じてたかどう思ってたか何を考えてたか、
そういうこと言う奴は一人も居ねーの」
といった具合に捲し立て、相手の理不尽さを舌鋒鋭く指弾していきます。
すると、心の闇を暴かれた関係者たちは、すっかり狼狽し冷静な思考回路を失った末に、
「そんなこと言われたって、どうしようもないんだッ」
と、まるで駄々っ子のように逆上。そんな彼らに対し、健也は一言…
「なら、死ねばいいのに―」
そう。これが、この小説のタイトルの真意なんです。
これ以上の解説は、ネタバレになってしまいますので割愛しますが、
人間の業というか、利己的で醜悪な部分が垣間見えて実に興味深いですよ。
ちなみに、ミステリーとして見ますと亜佐美を殺した真犯人は割とすぐに察しがつくと思います。
ただ、その動機がさっぱり解らない。
物語の最後に、真犯人の思いが明らかになるのですが、
その部分を読むと…
ぞくり…とします((((;゚Д゚))))
このオチの怖さは、妖怪小説を得意とするなっちの真骨頂だと思いますね。
なっちの著作の中では比較的短編の部類に入りますので、
宜しければ、みなさまも読んでみてくださいね(*・ω・)ノ
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そうそう。
京極夏彦氏をなっちと呼ぶことについて異論は一切認めませんよ(笑)