某中央省庁から俺が担当した秋の叙勲候補者16名のうち1名に過去の犯歴が見つかり推薦取消しと連絡が入る


過去にも何度か同様のことがあり事前チェックを厳格にと言われていた

 

だが、俺も俺の職場に候補者を推薦してくる会員会社の担当者も民間人

 

60過ぎの人間の何十年という人生の中の過去の犯罪歴など調べられるはずがない

 

当然まず雇用主が候補者本人に聞き取りをして、あとはこの雇用主からの犯歴ありませんでしたという報告が会員会社から俺に回り、俺から某中央省庁へと回る

 

要するに我々ができることなど本人の申告頼みなのだ

 

とにかく今後はこれまで以上にさらに厳しく身元調査をするようお願いしますよと言われましてもね

 

そもそもこの過剰すぎるほどの個人情報保護のご時世にですね

 

そんな個人の過去の刑罰調べるなんてどだい無理な話なんですよ

 

でも昔はそうではなかった

 

昔は役所が刑罰証明書といって犯罪歴が無いか、自己破産や差し押さえ等が無いことを証明する書類を発行してくれた

 

だから候補者に住民票などとともにこの刑罰証明書の提出を義務付けることができた

 

しかし個人情報保護法の成立とともに過去の犯罪歴や自己破産など特に取り扱いに留意する事項について自治体が証明書をむやみに発行することができなくなってしまった

 

国民の情報を一元管理するマイナンバーが施行されたというのに、こと個人情報の取り扱いについては後退していると言っていい

 

では、今回なぜ某中央官庁が犯歴の有無を把握できたというと、それは叙勲推薦のシステムにある

 

先ほど自治体が刑罰証明書をむやみに発行することができなくなったと書いたが、特例的に本人以外の第三者が容易にこの刑罰証明書を取り寄せることができる方法がある

 

それが叙勲推薦に係る身元調査というやつだ

 

叙勲はまず内閣府から全省庁に候補者推薦を依頼、そこから各省庁があらかじめ決まった推薦団体に依頼(ここが俺になる)、最後は推薦団体から会員会社に依頼する

 

うちの場合は推薦会社の本社からさらに支店に回り、そこから各現場所長へと回って最終的に協力会社へと話が行く

 

それは俺が担当するのがいわゆる叙勲ではなく、特に危険な作業、あるいは公共の福祉に資する人が嫌がるような職務に従事する者が別にいただくⅡ類分野、通称叙勲Ⅱ類というものだからだ

 

身元調査に話を戻すと、叙勲候補者の身元調査に限っては自治体は各省庁の求めに応じて刑罰証明書を提出しないといけない

 

そのための条件は番地まで入った詳細な本籍地住所と住民票に記載された現住所の提示だ

 

各省庁が叙勲のための身元調査を理由にこの2つの住所を提示したら自治体は速やかに刑罰証明書を発行し郵送しないといけない

 

今回はそこで引っかかった訳だ

 

先ほど書いたが、うちの場合は

 

①本人への犯歴有無の聞き取り結果を雇用主が現場所長に報告

 

②現場所長が雇用主からの報告結果を支店担当者に報告

 

③支店担当者が現場所長からの報告内容を本社担当者に報告

 

④本社担当者が支店から受けた報告内容を俺に報告

 

⑤俺が会員会社から受けた報告を推薦段階での身元調査結果として中央省庁に報告

 

という感じで、シン・ゴジラの自衛隊の武器使用でないが延々と伝言ゲームが続く

 

しかし実際にはこのそれぞれの段階で調査を行うことはなく、あくまでも最初の段階での本人の申告が延々と回るだけ、そして我々はその自己申告を信じるよりほかない

 

そもそも何回中央省庁から特に犯歴に関わる身元調査を厳密にと言われたとて、この個人情報保護のご時世に我々民間人がそんなことをやるのは不可能なのだ

 

そして、⑥ということで刑罰証明書の取り寄せになるのだが、実はこの段階でもまだ過去の犯歴が発覚しない場合がある

 

というか、この段階で発覚する方が珍しい

 

それは個人情報保護の観点から自治体が個人のプライバシーにかかわる情報を把握していない場合が多いからだ

 

過去には中央省庁での身元調査をスルー、内閣府もスルーしたが宮内庁段階で警察に行った調査で「戸籍に記載は無く、全て苗字が違うが同一人物のものとと思われる犯歴が見つかったから再調査を」と差し戻された候補者がいた

 

この候補者は複数回婿養子に入って離婚を繰り返し、離婚するたびに元に戸籍には戻らず、新しい戸籍を作る

 

そうすることで容易には過去の犯罪歴が追跡できないようにできるのだ

 

これと同じことをしていたのが、2015年の夏に大阪府寝屋川市で起きた中1男女殺人事件の山田浩二被告だ



 

女性が離婚歴を隠したり、あるいは差別部落の出身者が差別を避けられるようかわからないが、通称 原戸籍、正確には改製(改正)原戸籍には残るが、戸籍謄本や戸籍抄本には前の戸籍での情報は一切残らない

 

俺が担当したケースもそれを悪用したと思われ、

 

①婿養子に入る

 

②罪を犯す

 

③離婚する

 

④旧氏名に戻るが新しい戸籍を作る

 

⑤婿養子に入る

 

⑥罪を犯す

 

⑦離婚する

 

⑧旧氏名に戻るが新しい戸籍を作る

 

⑨婿養子に入る

 

とこの繰り返しで追跡できただけでも3回このループを繰り返し、さらに悪質なのは会社は婿養子の件はおろか、結婚したことがあること自体を把握していなかったこと

 

会社はこの男が60歳になってもずっと独身だと思っていたのだというから驚きだ

 

服役していないところを見ると、最後は相手が泣き寝入りするような、性犯罪や結婚詐欺的な物ではなかったかと思われる

 

そんなことぐらい民間人でもわかるんじゃないのというかもしれない

 

しかし実際にはこのケースも警察から「同一人物なのではないかと思われる」というだけで、犯歴があるとは一言も言われていないのだから、おそらく探偵を雇ったって無理な物は無理だった

 

そう、じゃあ探偵を雇えば?というかもしれないが、叙勲は1年に2回、俺が扱う候補者は15~20人

 

毎年年間20人の探偵調査を行っていたら金がいくらあっても足りないし、いろんなところで信用問題が起きて逆に推薦作業が立ち行かなくなるのは目に見えている

 

大体そもそも犯歴でひっかかって叙勲推薦を取り下げる人間は多くて30人に1人いるかいないかなのだから、その万一に備えて年間100万単位の探偵料など払えるはずもない

 

だから言いたいのは、せめて正直に話してくれないか

 

あるいは自分で犯歴があることを知られたくないなら、自分から辞退してくれ

 

もちろん故意でなく、おそらく30年とか40年前の話だろうから本当に覚えてないのかもしれない

 

だから故意に隠したとは言わないが、みんなが迷惑する話だし、自分もバレなくていい犯罪歴が明らかになってしまうのだから、正直に話すか辞退するかの2択にしてくれ

 

だっていくら大昔の話だからって、本人が自分の犯罪歴を覚えてねえ訳ねえだろ


調べたら絶対にわかることなんだから、そりゃあ天皇陛下から勲章もらいたいかもしれないけどさ

 

諦めて正直にきちんと申告してくださいよ

 

過去に犯罪歴のある人が皇居に入って天皇陛下に拝謁できるわけないじゃん

 

子どもじゃなく俺より長く生きてるんですから、それくらい説明しなくてもわかってくださいよ


某中央省庁や俺、会員会社、雇い主、そして誰よりも自分自身、みんなが困って得する奴一人もいないんだから