慌しき移動日
霧多布CA~本別町CA

寝坊してしまった。
確かに夕べは6時に目覚ましを掛けて、寝袋に潜り込んだ筈だったのだが、夕べ寝る前に飲んだ薬が効き過ぎたのだろうか。外の音に気がついて目が覚め、携帯を見ると7時半。おいおい、移動日だってのにこんなに遅くまで寝てしまっては、これからの時間がタイトになってしまうではないか。朝飯を抜いて朝の厚岸駅に赴き、名物の「牡蠣弁当」を食べる為に早起きするつもりだったのに自分とした事が・・・・
朝食を抜いた分、キャンプ場を撤収したのは9時過ぎに留まったが、あまりの慌しさに霧が晴れて海岸線まで見えた霧多布の眺めもじっくりと眺めている余裕は無かった。急ぎの旅ではなかったが、やはり空腹には勝てない。再び霧が立ち込め始めて来た霧多布の海岸をデジカメに納め、キャンプ場を後にした。
10時過ぎに厚岸駅に到着。

ううむ・・・・・こんな時間では朝飯も昼飯もないな、でも駅のキヲスクには目当ての牡蠣弁当が山と積まれているのを見てホッとした。弁当を一つ買い駅の外のベンチでで早速蓋を開け中を見る。う~ん、価格900円にはおよそ釣り合わない内容量。小ぶりな牡蠣が3匹。その他にアサリだろうか、貝が3匹入っていた。ご飯の量も少ない。甘辛く自分好みの濃い味付けになっていたので食べ終えた感想は旨かった。しかし、量が少ない。これも観光客目当ての商品の定めなのか。
お盆2日目に入り、釧路ナンバー以外の車でごった返す釧路市内に到着。まず、一等最初にお馴染みの「ホーマック」が目に入ったので、ここでキャンプ用品の買い足しとエンジンオイルを購入。今すぐ和尚市場に行くにはちょっと早い気がしたので、ホーマック駐車場の片隅でオイルの補充をしている間に、PCを出してメールのチェックと釧路市内のバイク用品店の検索をした。夕べ、バイク仲間のまーぼさんに相方のスプロケットの件についてのメールを出したその返事が返っていた。結果はあまり色よい物ではなかった。
やはり、社外品の部品調達ともなると取り寄せが原則となるし、しかも今はお盆に突入したばかり、例え頼んだとしても入荷するのは盆開けになるだろうとのこと。まぁ、蝦夷に居る間に盆があけるのを待つのは予定がずれ込んだ場合には当初からの予定でもあったので、別段問題ではなかった。しかし、スプロケットが本州に戻ってからでは間違いなくもたないので、いずれにしてもまーぼさんちで交換作業をするのは決定的であるようだ。そして、釧路市内でのバイク用品店の検索結果はゼロ。ちなみに釧路市内で一番大きなバイク屋となるとかの有名な「赤男爵」1件しかないのだが、これを見て実際に「赤男爵」の店に行って見たが、結果はまさに絶望的。店構えは小さいし、店内にはバイクしか置いていないし、部品は全て取り寄せとなるとのこと。これによって、相方の部品の件で釧路に居る必要は無くなった。しかし、まだやりたい事が有った。
まぁ、これは釧路市に入ったら、ライダーの半数以上は立寄るであろう定番中の定番、和尚市場での勝手丼を喰う事である。

先ほどの「牡蠣弁当」の量が控えめだったのが丁度良かったのか、和尚市場に到着した時には小腹が減っていた。まず、市場内を数周ウロウロ歩き回って、目ぼしい店を決め(殆どどれも同じ感じだが)市場の片隅でご飯と毛蟹の味噌汁を買って、先ほど下見して決めた魚屋でおかずをトッピング。またまた市場の片隅に用意された場所で自分で作った「勝手丼」を口にした。内容は、雲丹・甘エビ・蟹足・トロ・ネギトロの計2700円なり。
このなかで一番値が張っているのは、勿論雲丹だ。この時期ともなると雲丹はグンと値段が上がる。雲丹の旬は7月だから、もう泣いても笑っても生雲丹が手頃な値段で食べられる時期はお終い。今回の旅は雲丹だけに拘らないで色々と海産物を口にしたので、生ウニを食べたのは竜飛岬以来久しぶりである。

腹が落ち着いた所で移動開始。時間は結構経っている、本当は釧路湿原にも寄りたかったが、今からではゆっくりと廻る時間は無い。釧路湿原の周辺にもキャンプ場はあるにはあるが、おそらく難民キャンプ状態になっているだろう・・と思い、あえてそこはパスした。近くに温泉も無い様だし。
地元釧路ナンバー以外の車で流れが悪い大幹線道路R44を白糠方面へ走り、そこから分かれる国道を今度は本別町に向かって走り出した。国道が分かれて直ぐの所にコンビニがあったので、今夜と明日の朝の分の買出しを済ませる。
この時点では、本別町までは此処から60キロ近くあるとの事なので、そこまでの途中にある上茶路(カミチャジとも読むのだろうか)にキャンプ場があるのを地図にて見つけたので、今日の幕営予定地は急遽そこに決めた。そこまでは30キロソコソコで行けるのでチンタラとクルージングしながらの移動となる。町を出ると信号が全く無い、北海道らしい道になった。車も殆ど走っていない。これはキャンプ場は意外と空いているかもと期待しながら少しずつ山の中に入っていく。
程なくしてキャンプ場の看板を発見、ちょっと行き過ぎたのでUターンして戻ろうと思ったら、直ぐ手前にあるGSがキャンプ場の管理人の家との看板があったので、早速玄関の扉を開け出てきたオバチャンに
「キャンプしたいんだけど」
と言ったら、意外な言葉が返ってきた。
「お泊まりですか?でしたらキャンプ場を見て来てから決めて貰えます?」
との事、何故そんな事を言うのか問いただして見ると、以前来たお客が申し込みをした後にキャンプ場に行ったら、直ぐ引き返してきて
「あんな所泊まれないから金を返せ」
と文句を行って来たとの事。オバチャンの言うには此処のキャンプ場は役場が管理している所なので、一端お金を受け取ってからのキャンセルは原則的には出来ないらしいのだ。・・・嫌な予感がする。
オバチャンの言うとおり、申し込みは後回しにしてそのキャンプ場に行ってみる事にした。確かにキャンプ場入り口の看板を見ると、色が褪せていて傷みが激しい。なんだか、それだけでも充分やばい雰囲気が感じられた。
砂利道を慎重に進む。直ぐにキャンプ場らしい所に出た。
「うわ・・・・酷えなこれは」
と思わず口から出た。
荒れ果てているのである。テントサイトは何処から何処までがテントサイトなのか分からない位草ボウボウ、炊事場はトタン屋根が葺いているだけで、膝下の高さしかない流しが一つ、トイレはお化け屋敷みたいで、夜になったら恐ろしくてこれでは行け無い。
そして、このキャンプ場をパスする決定的な理由は、テントが1張りも張られていないことだ。全くの無人である。誰も誰一人居ないのである。こんな所でも酔狂なバイク乗りが1~2張り位は張っているものだが、それすらも無いのである。綺麗なキャンプ場でこう言う状態だったら、文句なしに幕営するのだが、これはやばい。
しかも、有料となれば論外である。北海道広しと言えども、こんなに管理・整備されていないキャンプ場が他にあるだろうか、知っている人が居たら教えて欲しい位だ。この惨状を見て、自分は相方から降りずにキャンプ場らしき草地を1周してそのまま、国道に戻った。仕方ない本別まで頑張って走るしかない。・・・・・・なんだか、G/Wでの岡山山中での悪夢のキャンプ場たらい回しが脳裏を過ぎった。こうなれば、本別の方がやばかったら路の駅にでもビバークするしかない、と走りながら考え始めていた。
上茶路から更に走ること30キロ。集落以外の場所では一発免停間違いなしの速度で走る。その間の沿道には全く民家が無い、あっても廃屋しかないのだ。こんな所で日没迎えるのは非常に危険極まりない。内地ならまだしも、蝦夷での山中ビバークだけは間違ってもやりたくなかった。
夕暮れの本別の町は以外にも栄えていた。車も多い商店街も一杯ある。人も多い。コンビニも食堂もある。賑やかな道に出る事が出来て、これだけホットしたのは今回の旅では初めてだ。そして、ツーリングマップに載っていた本別町のキャンプ場は町から2キロ走った所にあった。管理棟にてここのキャンプ場は無料だと聞いて、まず一安心。そして、実際にテントサイトを廻ってみてそのテントの数の多さにさらに安心。いつもは、混んでいるキャンプ場を見ると気分が凹んだものだが、今回はなんだか安心してしまったのは、先ほどのお化けが出そうなキャンプ場を見た後だけに余計だった。無料の割りには綺麗なテントサイトと炊事場、そしてトイレも結構清潔である。そして、携帯電波も3本立つしコンセントも簡単に見つかった。おまけに歩いて10分程の所に温泉もあり、不足な所は何も無い。恐らく、釧路からやって来たキャンパー達は上茶路のキャンプ場を素通りして皆ここに集結したのだろう。
これで、無事に今日の移動は完了した。明日は此処暫く毎日移動ばかりしていたので、久しぶりに連泊し、今日行かれなかった釧路湿原に行って見ようと思う。そして、これは話のネタとしてはいいと思ったので、帰りがけに先ほどのお化けキャンプ場にもう一度行って、その惨状を写真に収めてこようと思う。 |