さらば知床

羅臼~斜里町(清里斜里YH)

テントの撤収を始める頃には小雨が降り始めていた。
速攻でテントを木陰に持っていき、バッグ類は管理棟の軒先の濡れていない所に並べ、各々の荷物を相方に積み、8日間占領していた自分のテントサイトはようやく空く事になった。濡れ掛かっていたテントを畳み、相方に乗せる頃には雨足が強くなって来ていた。本当に今年の北海道はよく雨に降られる。いや、初めて北海道に来た年もこんな感じであった。しかし、今回は滞在期間が長いにも拘らずその分の雨の期間も長い。やはり、異常気象なのは間違いない。真夏の北海道がやってくるのは本当に何時なのだろうか?

羅臼の町に下りてガス補給。ここから相泊までの区間はスタンドが全く無い。相方は昨日の峠越えの途中でリザーブになっていたので、ここでガスを入れておかないと行ったは良いが、まず帰って来られなくなる。フル雨装備での移動開始。小雨が降る知床東海岸を先ずはセセキ温泉に向けて走る。20数㌔でセセキ温泉に到着。しかし湯船を覗くとお湯が入っていない。やがて、そこの管理人らしきオヤジが歩いてきて湯船の点検を始めた。聞くと掃除したばかりらしい。


ん?どこかで聞いたような話だ。そうだ、妙高の燕温泉だ。去年そこの露天風呂に入ろうとした時丁度掃除直後で全くお湯が張られていなくて、泣く泣く入浴を断念したのだ。セセキ温泉は海底から湧き出している、今の時間帯は丁度干潮なので、湯船は完全にそとに露出している。しかし入れない。そしてその温泉の湧き出し方が岩の割れ目から滲み出てくるような物なのでタバコ1本や2本で溜まってくれるようにはとても思えない。ということで、計画を急遽変更、その直ぐ先の相泊温泉に行く事にした。

400メートル程走って、相泊温泉はある。此処はブルーシートが屋根になっている掘っ立て小屋があり、男女完全に別の風呂となっている。湯船にはしっかりとお湯が張られており、先客も2~3人入っていた。先客がある程度ハケた所を見計らって、自分も湯船に浸かる。これまた熱い。熊の湯といい勝負だ。どうしてまた北海道の温泉というのは熱いのがこうも多いのだろうか?しかし、上がったり浸かったりを繰り返して時間を潰すには丁度良かった。
1時間弱そこで温まり、再びセセキへ。辿り着いてみると二つある湯舟のうちの一つに数人の若い男女が入っている。皆水着を着ている。勿論自分も水着は持ってきているが、振り分けバッグの奥深くにしまってあり、取り出すことは出来ない、というか最初から水着なんか着るつもりは毛頭無かった。仕方ないので、もう一つの湯舟の陰で服を全部脱ぎ、膝上10センチ程のお湯に浸かろうとした、しかし猛烈に熱い。これは熱いお湯に慣れた自分でも全く入る事が出来ない。例えて言うならば、熊の湯の源泉そのものの温度で、間違いなく火傷してしまう程の熱さだ。
どうしようかと困っていると、上の岸壁から先ほどの主人の奥さんがなにやら怒鳴っている

「其処は入れないよ!こっちの湯舟に移って!」

「え!だってあっちは卑怯な水着軍団だぜ、其処に移れってのかよ」

と思ったが、この温度では駄目だ、しかもここの湯舟にはポンプホースが放り込まれていて、折角溜まってきたお湯を隣の湯舟に移し変えているではないか!みるみる足元のお湯が無くなって行く。そういえば、最近見た温泉マニアのHPで

「セセキ温泉では現在、温度調節できる水道が故障していて埋める事が出来ないのでとても熱い」

とコメントしてあったがこれの事だったのか。今は干潮だから海水は全く入ってこない。これが、ある程度波飛沫が入ってくればここの湯舟も使えるはず、ちょっと時間を早まったか。
仕方なく、バスタオルを巻いて隣の湯舟に移動。それを察知してか数人のグループのうちの何人かのカップルはそそくさと湯舟を出て行った、そうそうその調子。こっちは本当の入浴すべき恰好でいるのだ。遠慮するのはそっちの方だ。湯舟に入る。ぬるい!とてもぬるい。これは長湯しなければ鼻かぜをこじらしてしまう。その後このしょっぱくでぬるい湯舟に1時間程は浸かっていただろうか、自分の他にもこれまた水着をきた家族連れや、やっぱり素っ裸で来たかのライダー二人が入れ替わり立ち代り入っては出て行った。そして、潮が少々満ちてきた辺りで自分も上がる事にした。うむ、大分温まった。これなら湯冷めはしないだろう。またまた、岩陰でパッパと服を着込み、再びフル雨装備になってセセキ温泉を後にした。


これで、知床半島でやりたかった事は全て終了した。


もう思い残す事は無い。いや・・・一つある。たった一つだけ。それは、NWBでも羅臼岳登山でも全くお会いする事が出来なかったヒグマ君である。勿論、彼らの生息場所は北海道全土ではある。しかしその本場は知床半島と大雪山系である。大雪山は広すぎるし、山も偉く深い。そこまで入り込むにはかなりの危険が伴う。しかし、知床は以外と簡単に見つかる時は見つかるのだそうだ。しかし、今回は完全に空振ってしまった。これが唯一の心残りであった。

雨の降りしきる知床半島を離れる、ここにやってきたときは晴天だった国道335を南下、峰浜という町に入って、途中で国道244へのショートカットを行った。しかし、その道が運の悪い事にダート。しかし直線だったので一気に走りぬけR244に合流。斜里町に向けて走り始めたが、天気がこれまた最悪で標津町と斜里町の境目にある釧北峠手前で雨は本降り、しかもこの国道沿道に民家は殆ど無く森の中を抜けるロケーション。昼過ぎだと言うのになんだか薄暗い。気分もダウン気味になる。しかし、峠を過ぎると天気は一変した。といっても雨が止んだだけ。峠を一気に下り斜里町をかすめ清里町に入る頃になると、オホーツク海側はかなり雲が薄くなっていた。振り返ると、あの斜里岳が半分ほど見える。明日はどれ位まで見えるのだろうか、天気予報では今日ほどの荒れ模様にはならないと言っているが。

3時半YH到着。
その後はYHの風呂には入らず割引券を貰って、近所の温泉施設に久しぶりのまともな温泉に浸かった。その後はそのままYHの人が運転する車に乗ってこれまた近所の定食屋で晩御飯。そして、YHに戻り簡単な斜里岳登山についての説明を受け、部屋に戻った。
現在時刻午前0時13分。
何で、こんなに遅くなったかというと、昨日の分の日記を今夜書いていたからだ。明日また、山に登ると言うのに夜更かししてしまっている。この後、速攻でアップロードし速攻で寝るつもりだ。同室のチャリダ―も明日斜里岳に登ると言う。しかし、今も起きている。こっちに気を使って起きているかもしれないので、今日はこの辺で。