東へ一気、晴れ一気

北海道(阿寒)~(羅臼・熊の湯)

朝の阿寒は今日も曇り空。いつもの時間に起き出して、いつもの様に撤収。荷物を相方に積み出した頃には霧雨が降り出す始末。一応、3日間阿寒湖の傍に居たのに一度も湖面を写真に撮って居なかったので、キャンプ場を出発後、遊覧船の発着する港に出て、証拠写真(記録写真)を1枚。

その後、国道に復帰し弟子屈との町境に差し掛かる辺りで、路面が濡れ出したのでまず人間だけが雨仕様になった。なぜ、荷物も雨仕様にしなかったかというと、自分たちがこれから向かう方向の空がこちらよりも明らかに明るかったからだ。

つまり晴天の予感がしたのだ。


その予感は的中した。弟子屈の中心街を通過し、田和平や開陽台に通じる道を通過した後は、空には雲が殆ど無くなりまさに「晴れ」といってはばからないほどの素晴らしい天気になった。道の途中で雨合羽を脱ぐ。後ろで飛沫を受けていたバッグも殆ど乾いている。あれだけ雨が降り続いたのに、空気が乾燥していて非常に爽やかである。

これが、本当の北海道の夏の姿である。滑走路のように真っ直ぐな道路、ユラユラと前方で見え隠れする逃げ水、視界一杯に広がる大草原・・・・本当に久しぶりに見た青空。最高だ!言う事な何も無い。走っているだけで何もいらない!走りながら、胸が一杯になった。これだ、この感覚を求めて此処まで来たのだ。夏の北海道に引き付けられてしまう病の元はこの風景にあるのだ!標津町にて早めの昼。再び出発して海沿いの国道を北上、右手の海の向こうに大きな島が見えてきた。


あれが、国後島か。その隣の高い山をもつ島が択捉島だろうか。北方領土を自分の目で見たのは勿論今回が初めてである。こんなに近くにある島が物議をかもし出しているなんて・・・にわかに信じられない心境である。

だって、その島影を見る限りは伊豆や四国を見るのと全然変わりない程、身近に感じられるからだ。
2時ごろには羅臼町に入り、そのままキャンプ場へ。もっと山奥にあるものだと思ったら、羅臼の町から2~3キロの所にある。目の前には川を挟んでかの有名な「熊の湯」がある。そして、ここのキャンプ場は無料。いかに道東でも屈指の人気があるキャンプ場であるかは、敷地の中に入って直ぐに理解できた。既に、テントサイトの半分が埋まっているのである。相方から下りて、ウロウロとサイト内を歩き回る。

まず、テントを立てる場所をここでは探すのではなく、電源だ。入り口を入って左側の坂を登った先のサイトは、比較的空いている、隣接するトイレも完全な水洗だ。しかし、トイレ内に入ってみると、コンセントがあるべき場所に蓋がしてある。その蓋を外してみると、如何にも配線をぶった切って使えないようにしているではないか。あまりにも不法に盗電する輩が多いからなのだろうか。嫌な予感がする。もう一つの坂を下ったところにあるサイトのトイレをチェックする。すると、入り口にいきなり『電源の無断使用禁止 羅臼町』とあった。まずい・・・ここで長居をするつもりなのに、ここにきて電源確保断念か・・・・と、思い外に出てトイレの建物の周りをぐるっと回ってみた(たいがい、元来ボットントイレには抜気する煙突が付いていて、それにファンがついていれば屋外コンセントは必ずあるからだ)しかし、ここのトイレには先ほどのような新しさが無い。しかも裏手に回ってみると煙突がある。だが、ACケーブルは抜かれていて新しく埋め込み型の電動ファンに改装されている、万事休すか・・・と思いその横を見ると・・・・・・なんと屋外コンセントがちゃんとあるではないか!早速、携帯のチャージャーを繋いで通電チェック。

「・・・・・・・!」

チャージランプ点灯、OKだ!これで電源の確保の心配は払拭された。心配のネタが片付いた所で早速幕営場所の確保。好都合な事にそのトイレからほんの少し離れた所の場所が空いていたので早速そこにテントを設営。場所の確保もOK。

阿寒の冷たい雨に降られてグショグショになっていたテントが見る見るうちに乾いていく。ベッタリと貼り付いていた葉っぱや虫の死骸がポロポロと音を立てて落ちていく、う~んいい気分だ。

これだから、キャンプは止められん。雨だからといって腐ってばかりでは野宿屋は勤まらないのだ。身軽になった相方に跨り、羅臼の町に買出しに。相方から下りて、商店街をうろついていたら、正に偶然にコインランドリーも発見。

何だか今日になって天気の良さもあるのだろうか、事の運びがやけに上手く行っているではないか。勿論、熊の湯にも入った。歩いて2分。この便利さは美深森林公園のキャンプ場と双璧なのだが、今年から美深は有料化してしまったので、圧倒的に羅臼の方にキャンプ場の好感度としては分がある。熊の湯は前々から聞いていたように、湯温がとても高いことで知られている。若い人が熱がってそれを埋めようとすると、地元のオヤジどもに怒られるとも聞いていた。服をさっさと脱いで露天風呂へ。先客は10人位だろうか、だれも湯船に浸かっていない。空いている所で頭と体を洗う、桶に汲んだお湯を頭から浴びる。

「あつっっっっ・・・・・・!!!」

もう少しで声が出そうになった。
本当だ、噂にたがわずかなりの高温だ。これは心して入らねば。少し伸びかけてきた不精髭を剃り、ちょっと歯を食いしばりながら体についた泡を全て流す。流しながら、何となく周りの様子を伺ってみる。

やはり、数人のコワモテのオヤジがいて周りの新顔っぽい客に

「体を洗ってから入れ」

とか

「ここが熱かったら向こうへ行け」

とか

「上澄みが熱かったら自分で掻き回せ」

とか

「段々の岩がある所は人が出入りする所だから腰掛けるな」

とかやかましく注意している。自分は、こう言うところの風呂の入り方の作法は心得ているので、全く何も言われない。おそらく、

「こいつは露天風呂入り慣れてんな」

と思われているのかも。

何故なら後から入ってくるお客さんの殆どが何かしらの行動を取る度に、目ざとく注意されていたのだから。
さて、湯船に入る。

『う~~む・・・・・(汗&青筋)』

確かに熱い。北海道の温泉は何処入っても熱いという印象があったが、やはりここは別格の様だ。でも、熱そうなそぶりを見せたら、あの地元の温泉奉行達に

「ほれみろ(笑」

見たいに思われるのがしゃくだったので、平然と顎まで浸かってやった。うん、時間がたてばそれほどでもないぞ。確かに長湯が出来るような湯温ではないが、死ぬほど熱いというものでもない。熱ければ、上がってしまえば露天風呂だから外は涼しいし、数分もすれば体温も回復してしまう。これが、内風呂だったら偉い事だ。逃げ場が無い・・・・といえばそんな温泉があったではないか。屋久島の尾之間温泉だ。
あそこは内風呂しかないし、湯温もここと同じ位熱かった。おまけにそこに敷き詰めてある玉砂利が熱を持っていて焼け石の上に温泉という、3重苦だった。それに比べれば、熊の湯は大したことは無いと言う事だ。あの、熊の湯で偉そうに見張りをしているオヤジどもに是非とも尾之間温泉にたっぷりと浸かっていただきたい物だ。自分たちが井の中の蛙だったということに、そこで始めて気がつく事だろう。
でも、その中の一人のオヤジが湯船からチョット離れた所にある源泉が溜まっている所のお湯を桶に汲んで頭からかぶって「じゃお先」といって上がっていった。そのオヤジが上がっていったのを見て、自分も風呂から上がってからそのお湯溜まりに手を突っ込んでみたら

「あっつ!」

と思わず、声を上げた。熱湯だ、あれは。ゆで卵が出来るぞ、あんなの。頭からかぶって平気で居られるなんて、どうかしてる。あれだけは、真似しない方がいい。皮膚の弱い人は間違いなく火傷する。本当にだ。
さて、明日はいよいよ今回の長旅のメイン中のメインイヴェント。カムイワッカの滝にお出かけだ。そして、滝までの林道のマイカー規制も明後日から始まる。つまり、相方に乗って滝の麓まで行けるのは明日までと言う事なのだ。その為に、7月も早い時期から家を出てきたのだ。此処までの道中の目的はこれだけの為にあると言っても過言ではない。摩周湖や開陽台、知床岬観光なんてのは、そのおまけに過ぎない。「神の泉」に相方と共に行かれるのであれば、それでいいのだ。