10.16

楽しみにしていた東北集会の日がやってきた。
今日は最初から会社に休みを届け出でしていたので、朝からのんびりと集会への準備をするというのが本来の予定だった。
しかし本日の午前中、親戚に頼まれて東京都内の某所にて公共工事の起工式に出席する予定が入ってしまっているのである。
その式典は色々と理由があって欠席は出来なかった。
と言う事で前日の夜に都内まで車で出向き、式典に集積する際の正装一式を会場近くにある親戚が経営する会社の事務所に置かせてもらい、当日の行動はこんな感じでこなすつもりだった。バイクに乗るときの正装で都内の親戚事務所に向かう。事務所内で 着替える。荷物は事務所内に置いたままにする。式典にスーツ姿で出席。式典終了後、事務所に戻り再びバイクに乗るときの正装に変身する。スーツ類は事務所に置かせてもらい、後日取りに行く。
東北へ出発。

というものだった。

所が、その会場へ向かう途中で大きく予定を狂わせるアクシデントが発生した。時刻は式典が始まる30分前、場所は明治通りと昭和通リが交差する大関横丁交差点を過ぎた、常磐線の高架線下。明治通り外回りは、週末の午後は必ずこの場所は渋滞する。
自分はあまり時間的に余裕がないのを感じていたので、交差点渋滞で停まっている車の間を抜け、先頭に出た。その直後信号が青に変わったのを見て、走り出した。
数百メートルも走らないうちに高架線の下辺りで再び信号につかまる。しかし様子がおかしいのだ。信号をよく見ると既に青になっている。
ふと沿道を見ると、見たくない連中が道路に数人出てきているのだ。
水色の制服に白いヘルメット、交通警察隊だ。
「停まれ」の旗を持ったままウロウロしている。
「な、なんだ?シートベルトか」最初はそう思った。
この場所は自分が運転免許を持ってからという10何年と通っているが、通過車両の取り締まりというのは一切見たことがない。
なにかここで交通事故かなにかが起きたのか、そうでなければありえない光景だった。
水色の制服を来たオマワリの一人が4輪を先に行かせ、バイクだけを止めている、嫌な予感がした。そして仕切りに無線で何かを喋っているのが聞こえた。
「どのバイクですか!?大きいの?小さいの?」
周囲を見ると自分以外に数台のバイクが止められている、50のカブと250のスクーターだった。
「大きいのでいいの?!黒いのでいいのね!?」

オレか?

数人の水色がオレを囲んだ。どうやら速度超過でつかまったらしい。
その後、路上で3~4人相手に、こないだの白バイ隊員とやりあったのと同じように大声で怒鳴りあうが、その後の式典の事を考え断腸の思いでバイクを降りた。結果指定速度超過違反という事で、50キロのところを94キロで走ったらしい。44キロのオーバーにて見事に赤切符となった。
このレポートを書いている時点でもいまだに腹が立つ。
あの場所に立って見るといい、どう考えても94キロも出せるような場所じゃない。キャブをO/Hしてアクセルのツキは圧倒的に良くなったが、幾らなんでもあのゴミゴミした信号の連続するような場所で100キロに達するかというようなスピードなんて俺自身がやるわきゃねぇだろ!
K察の取締りには以前から疑問を抱いていた、今回の取り締まりも間違いなくイカサマに間違いはない。あんな測定器なんぞ、そこのパイプ椅子に座っているやつのさじ加減で幾らでも違反を捏造することは可能だ。今でもオレは主張する。

94キロなんて、絶対に出してないっつーの。

今日の予定がなかったら、簡単には引き下がらずに警察署までなだれ込んでもめてやる覚悟だった。何故にそこまで思ったか?勿論自分自身が全くすっ飛ばしているような意識はなかったからだ。場所も場所である、信号から百メートルも走らない場所で 周囲には4輪のクルマがウジャウジャ居るところでどうやったら、90キロ以上も出せるのよ?オレが逆に聞きたいわ。

結局、会場に着いたときには既に式典が始まってしまっていた。
受け付けで首を長くして待っていた親戚の人に謝り、着替えに行こうと思ったが「いいよその格好で、もう始まっちゃってるから、席もちゃんと用意してあるからさ」
紅白の垂れ幕と白いテントが林立する駅前の会場の中を、上下革でしかも黒ずくめの異様ないでたちのヤロウがトボトボと歩く。このときほど情けない事はなかった。
大事な式の日にまさに「やっちまった」訳だ。
神官が榊をもって振り回して祝詞を挙げている中、目立たぬように席につくがその場所も悪い。この公共工事には自分自身も実はかなり深くかかわっているので、前のほうにあるのだ。
後ろからの視線が痛い。絶対に「なんだアイツ」的な思いで見ているだろう。
式典は滞りなく終了し、会場の外に出る。そのまま簡単に挨拶をして一刻も早く会場から脱出したかったが、そういう時に限ってまた呼び止められる。
町内会長やら、工事関係者の社長やら、区役所の関係者やらから名刺を貰い、挨拶を交わす。しかし自分の格好はバイク乗りである。相手の人は「ほほう、これからどこかへお出かけなんですか?」なんてニコニコしながら尋ねて来た日にゃ、苦笑するしかない自分が本当に情けなかった。前日までにあれほどしっかりと段取りを組んでおいたのに、台無しになってしまったし、 親戚の人にも恥を書かせてしまったしで、これから仙台まで平常心を保って走っていけるかどうか自信がなくなってしまった。
このままドタキャンするか・・・?
相方を前にして一瞬そう思った。
しかし、今年の前半から中盤にかけては本当にマトモなバイク生活を送れなかったし、今回の東北集会を逃せば来年までおそらくお呼びが掛からない可能性もある。違反を認める認めないは既にサインしてしまった時点で終わっている、これから自分に出来ることは何か?と自分自身に問い掛けてみる。
やっぱり、みんなに会って少しでも外の空気に触れたほうが自分の為になるのだろうな。

気持ちは固まった。
親戚に挨拶をして会場を後にする。目指すは千葉の自宅ではなく仙台となった、集会に参加する決心をした。自分のこの決断が間違っていないことをこの2日間で確認するために。
渋滞する向島線を抜け中央環状線から東北道へ、浦和のバリヤーを通過し東北へ。
母が倒れてから初めての本格的な遠出の始まりだ。波乱の幕開けだったが、その後はオバカなサンデードライバーに切れる事もなく、近年まれに見るほどに平穏で淡々とした高速移動となった。日も沈んだ仙台南ICを降り、今回集会幹事のたかGさんに迎えに来てもらう。
夕方のインター周辺は大変な混雑ぶり、下り線が込んでいるのを見ても、これから温泉街へなだれ込む連中ばかりなのだろう。
少々無理をしながらも、渋滞の先頭に出てどうにかこうにか目的地の秋保温泉に到着。
宿の名前は忘れてしまったが、その建物の下にバイクを停めると、頭上から酔っ払いらしき宿泊客の声が降ってきた。

「お~~~いオトート~!!」

懐かしい声である。秋田の姐さんこと忍ネエだった。その様子からしてすでにかなり出来上がっている感じだ。部屋に入ると、酒とタバコが入り混じった濃密な空気が噴出してくる。
「おー!お疲れ~!」「ご無沙汰!ご無沙汰!」
おなじみの顔ぶればかり、早速楽な格好になりビール缶を頂き乾杯。 その後しばらくの歓談のあと、グッドタイミングで夕食の用意が出来たとの電話連絡。後は例によって、大騒ぎの大宴会の幕開けとなる。

みな顔なじみばかり(一見さんもいらっしゃいましたが)なので、最初から飛ばしまくり。顔を真っ赤にして大声で笑いながら喋り捲っている。会場はこのグループの貸切になっているので、他の客に気兼ねすることもなかった。だが、自分は今回ばかりはあまり心の底から弾ける事が出来なかった。その原因は今日の午前中にあったアクシデントが全てだった。
確かに違反をした事実が認める。だが、納得が行くか行かないかでその後の気持ちにも大きく影響する。
これから先は、Z1-Rのうめさんが提供してくださった画像を元に、一日目の様子をご覧頂くことになるが、そこに写っている自分の姿を久しぶりに見て思った。
「殆どうつむいてばかりだな・・・オレ」
その姿が、当時の自分の心境を如実に物語っている。これからは、こういう大事な催し物がある直前には何時にも増して慎重に道路は走らなければならないと、強く心に誓った秋保の夜であった。

ちなみに、この集会のあった日に、あのAkikoとの初対面が実現できる予定だった。(Akikoとはこの同時期に大手廃墟探索サイト、廃墟エクスプローラーのBBSを荒らしまくっていた自称仙台在住のハンドルネーム。たまたま俺が「今度仙台に用事があって行くからちょっと会ってお話しませんか?はぁと」と誘ってみたのだ)
本人も会う気マンマンだったらしいのだが、前日になって突如メールでの連絡が取れなくなり(アドレスを変更?ブロック?された)、当時自分が運営していたCGI日記である「新無駄話」でも連絡をよこすようにと知らせたのだが全くの音沙汰無しで、結局はご破算となってしまった。
やはり負い目をもった状況で、当事者に会うのは気が引けたのだろうか、あれほど強気でいたにも係わらず、尻尾を巻いて逃げてしまったAkikoには最後の最後まで呆れさせてしまった。
当日合流したカワサキZのメンバーの中にも、この事に相当の期待を寄せていた人もいて、その時には物陰からその様子を見物したいとまで話は盛り上がっていただけに、皆残念がっていた様子だった。

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