6.15
3次会の会場となっている部屋での睡眠は、不可能と判断し、階下の別室に避難しさっさと開いている布団にもぐりこんだ。部屋を空けてくれたysさんにここで改めて感謝。
夕べは暗闇の中で布団に入ってしまったので同室のメンツは誰なのかまったくわからなかったが、朝になってみると総長とJADE氏(HN失念スマソ)が既に起床していてお茶を飲んでいた。
窓の外を見る。おお、雨が降っていない。実は夕べチェックインしてから物凄い雨だったのだ。夕方着のメンバーは雨を逃れる事が出来たのだが、夜着の別働隊は道中で相当の豪雨にやられたらしい。悲惨だったのは岩手班の医局長だった。
高速に乗ってからZ1が突如オイルを拭き泣く泣く50キロの道のりを引き返し、クルマに乗ってまたやってきたのだという。しかも雨の中。皆さんのバイタリティーには本当に頭が下がる。
でも自称雨オトコと名乗っている自分は、道中雨に降られなかったというのは快挙に等しいと思っている。このまま帰り道、もし万が一雨に振られる事がなかったら、この雨オトコの称号は返上したい。はっきり言って感じ悪いから!
夕べの宴会が行われた大広間にて朝食。部屋のそこここに宴会の名残が残っている、まぁあの量の日本酒とツマミだ、一晩で片付けられるとは思えない。従業員の方、ご苦労様ですそして申し訳ないです。天気が持っていることもあるのだろうか、皆行動が早い。やはり走りたくてウズウズしているのだろう。しかもうまい具合に雨が上がっているのである、このチャンスを逃す訳には行かない。部屋に戻り、そそくさと出発準備を整える。なかには早くも革ジャンを身につけ荷物を抱えて外に向かっているのもいる。
自分は相方が奥のほうに入っていることを忘れていなかったので、比較的遅めに宿を出た。
駐車場にはすでに先に宿を出たメンバーがバイクを出している。夕べ大雨でどのバイクもびしょぬれになっている、ご丁寧にシートカバーを持参した人たちはしてやったりだったろう。
かくいう自分も長旅の時は、バイクカバーを持って走っていた。まぁ電装系が脆弱であるというのもあるZだが、それ以上に自分がテントに入って雨を凌いでいると言うのに、相方だけが雨に降られるというのはあまりにも忍びない。あとは道中のメカニカルトラブルを起こして欲しくないというまじないもこめていた。
「お前だけ、濡れないでなんでオレが一晩中冷たい雨に降られてんのよ」と相方に恨まれないようにするためのものだった。だから、今まで長旅を何度も行ってきたが、道中で動けなくなったという災難に遭う事なしにやってこられたのだと思う。
ここでこの旅館に行かなければ見る事が出来ない面白いものがあるという事を、昨日隊長から教えてもらった。旅館にある来客用の駐車場は、前述した通り乗用車4~5台が治まったら満車という小さなものである。それ以外に停めようと思ったら、路上駐車するしかない。
しかしそれ以外の場所に無理から駐車を強行した宿泊客がいたというのである。
その車はなんと、基本的に歩行者しか通行できない釣橋を渡り、宿のまん前まで突っ込んだというのである。軽タロウで。それも夜、そして酒を飲んだ状態でらしい。
その話を聞いた後で、実際に釣橋を渡り幅を計ってみたが、確かに軽自動車ならなんとか通れない事は無いと思う。しかし橋のハジはワイヤーが張られていてとてもじゃないが一発でクルマをまっすぐ橋に侵入させることは至難の業だとおもう。加えて驚愕させられたのは、その先だった。
建物の前はバイク2~3台並べられるかどうかの非常に狭い通路になっている。
どう考えても道路ではない。だが釣橋を突破した軽タロウはその通路を走り抜けなんと建物の裏側に停まっているのである。恐らくあの場所に押し込めたのは、翌日になってから玄関前にガン停めしてある軽タロウが邪魔ということでどかしたのだろうけど、タイヤ幅ギリギリで、片方は崖になっている獣道をバックして奥に停められている軽タロウを見て、つくづくあきれ果てた。バイク乗りも時には常軌を逸した無謀な振る舞いをする時がある。しかしそれはバイク乗りの特権だと思うので、「へ~」で終了である。ところが、4輪で移動する人々は一般的にみたら「普通人間」が運転するものだ、と思う。それだけに、こういうアホな事を4輪ドライバーがおこなうと、逆に滑稽に見える。結局、橋を突破してきた軽タロウのドライバーは、引き返す事が出来なかったらしく、車はナンバーを外されて放置してある。
だが、あまり好ましいとは思わない。自然が美しい森の中の宿なのに、廃車があるというのは頂けない。
すくなくとも車の中にはオイルや燃料も入っているのだろうから、いつかは容器が腐食して漏れ出す恐れもある。早い所撤去した方がいいと思うのだが。
さて、自分も相方を引っ張り出し表の道路に出たところでなにやら、メンバーの様子がおかしい事に気が付いた。
それぞれが、後方を気にしている。
見ると、数人が一台のバイクを取り囲んでなにやらやっている。
Uターンが厳しい狭い道路である、しかも勾配がある。「これは・・・」と思った。
近寄って見るとBMWのミラーあたりにガムテープを巻いている。
どうやらUターンに失敗したようである。ううむ・・・BMWはハンドル切れ角が大きいバイクが多いのにコケテしまったのだろうか。おそらくライダーはこのバイクに乗り始めて間もないということらしいので、アクセルの開閉による車体の挙動でバランスを崩したのであろう。
若輩者で恐縮だが、BMW乗りのキャリアは多少長いので、コメントさせて頂くと、ボクサーツインのエンジンはイメージされてるほどトルクは太くない。信号アオでのゼロ発進も回転を1000プラスαくらいまで引っ張らないと、以外と進んでくれないものなのだ。まぁ乗り込んでいけばあの独特の挙動も全然気にならなくなると思う。むしろ、安定しすぎて国産4発に乗れなくなったりして!
本日は有料の山岳道路は走らないという隊長のお達しを受け、自分は少々がっかり。
確かに高額なスカイラインをもう一回走るというのは如何なものかというのも一理ある。
だが、時間はまだ午前中、このまま帰途につくのは余りにも勿体無い。
ここまで来たのは気の置けない仲間に会うのも勿論だが、なんといってもおなか一杯になるようなワインディングを走るために来ているのも目的の一つなのだ。
R100RSの修理も無事終わり、R115にて南下、土湯峠にある道の駅までフリー走行となる。そこまでの道程もなかなかで、有料道路のワインディングまでのハイペースとまではいかないが、新緑眩しい山道を気持ちよく走る。しかし生憎の日曜日、時間帯も悪かったのだろう土湯峠に向かう国道は一般の4輪が多く走っており、非常に邪魔くさい。
暫くは流れについて大人しく走っていたが、いいかげんあくびが出てきたので、突破する事にした。
路面を見る。
悪夢の浮き砂が無い事を確認、センターラインは黄色だがこういうときは、仕方ない対向車がこないのを確認して一気に抜きに掛かる。たいがい4輪が一台で走っている時は、後方のバイクの姿を見るとすんなり譲ってくれるのだが、この時は数台が連なっていたので最後尾の4輪はどうしようもない。こういうときはこちらからアクションを起こさなければいつまでたっても先には行かせてくれないものだ。相方のミラーを見る。後方に数台仲間のバイクの姿を確認。直ぐ後ろには角Z750FXのKさんがつけている。なんだか彼も先に行きたがっているような感じがする。
「これはいくしかねぇだろ」と判断。短い300メートルのストレートに入った瞬間、一気に2段落としヌキに掛かる。
ブレーキングを後らせ一気にコーナーに突っ込む、なんなくクリア。こんなのは朝飯前である。でも追い越し後は必ず手を上げて挨拶するのを忘れない。やはり死角から飛び込んで来るので、少なからず相手が驚いている可能性もあるからだ。所が、自分がコーナーを立ち上がり早くも次のコーナーに差し掛かったあたりで、後ろからケタタマシイクラクションの音が聞こえた。
安っぽい4輪の音である。ミラー見るとKさんが先ほど自分が追い越した先頭の4輪の横に並び、なにか怒鳴っているように見えた。
かなり距離があったので、何を言っているのかは分らないがそれは後で聞いてみよう。
朝方のぁゃしぃ天気はウソの様に回復。峠手前の道の駅土湯は周囲の山並みが見渡せる好天に恵まれた。ここで先ほどのK氏に何があったのかを聞いてみた。本人かなりエキサイトしている、ははぁやはり何かあったようだ。
T:「どうしました?なんか此処までの道でKさん闘ってたみたいだけど」
K:「全くもう頭に来るよ!オレより先に追い越していったバイクにクルマのやつ意味のネェクラクション鳴らしやがってさ」
T:「ほう、でもそれだけではなさそうですね」
K:「そうよ、ほいでもってオレが余裕もって追い越したらまぁた鳴らしやがってさ!しかも加速して追い越させないようにするんだぜ!」
T:「むかつきますね、オレラビッグバイク相手に進路妨害なんて百万年早いですね」
K:「だもんで、抜かした後にも露骨に鳴らしやがったから、横に並んでうっせんだよコノヤロ!ってどなってやったら、その後は鳴らさなくなったけどな!」
Kさんいまだ怒りさめやらずである。熱いぜKさん
まぁとにかく休日になると、身分をわきまえないサンデードライバーがウヨウヨ出てくるので、困り者である。特に中途半端な高級車に乗っているオッサンの運転はあからさまに嫌がらせをしてくる事が多い。それに関しては自分も今回の集会にて、直接関係した出来事があったので別項にてご紹介する。
恒例のジュースジャンケンがここでも行われ、一服した後出発。一気に猪苗代湖まで降りる事になった。またまたフリー走行の始まり。長い下り坂を一気に駆け下りる。ブレーキランプをしきりに点けながら走る4輪を自分はセンターラインから、角ZK氏は路側帯やら道端の駐車場から抜いていく。ううむ。どちらが違反の度合いが大きいかな?
あとで1000JのJさんに伺ったところ、「どっちも悪質」と一刀両断された。(これは認識間違い、自動車の左方からの追い越し行為は禁止されている)
オレとしたらまだセンターの方がリスクが少ないような気がするんだがな~。なにせ路側帯は異物が沢山落ちてるし、狭いし。駐車場は道路じゃないから、何が飛び出してくるかワカランし。4輪の運転手も、まさか左からぶち抜かれるとは思っていないだろうから、そうとうビックリするだろうしな。メンバーそれぞれが好き勝手に走っているので、隊列もへったくれもない。
みんなバラバラ。自分も一台きりで走るという状態が長くなってきた。
だって、Kさんブッチギリスギなんですもの。しまいには後続のバイクの姿がミラーから消えてしまい、このままでは次の集合場所に全員集まることが厳しくなってきたので、自分は交差点にて一旦走るのをやめ、後続が追いついてくるのを待つハメになった。そんなことやらんでもいいんだが、やはり気配りしてしまうのは自分の悲しい性か?
湖畔のドライブインにて一旦全員が集結。
その後そこから数キロ走ったところにいい蕎麦屋があるという、隊長&超マブさんの情報を元に、移動。ようやく本日のランチポイントに到着した。
「お!」
そこの駐車場に自分はいい物を見つけてしまったのだ。
除雪ブレードを付けっ放しにしたまま、放置されている古い40系?(クルマにはカラッキシ詳しくないので)のランドクルーザーである。
しかしよく見ると、ナンバーはついていないものの運転席周りがキレイな事から、このクルマは冬の間だけ稼動しているようだ。駐車場の雪だけを除雪するのでナンバーがいらない訳か、なるほど。最近は廃墟や廃車を見つけると飛びついてしまう自分。周囲のメンバーもそれを知っているようで「ああ・・・いい感じに熟成してるから興味津々だよ・・・」と半ば呆れ顔。
いいんですっ!クルマを撮影しているだけなんだから、不法侵入じゃないでしょ?
お座敷に通され、20数人がブーツを脱ぐ為上がり框(カマチ)は大渋滞。
自分は離れた所でブーツを半分脱ぎ、バタバタしている皆さんの横をすり抜けて席についた。
それぞれ好きなモノを注文ししばし歓談。
そのうち頼まれたものが次々とやってきたのだが、ちょっと様子がおかしい。自分は出来上がりが早いはずの、天蕎麦を頼んだのだが、一向に出てこないのだ。それより先に手の込んだ品物がドンドン運ばれてくる。横に座っている総長も自分が頼んだものがなかなかこない様子で、ご機嫌斜めである。おまけに両側に座っている人たちが「お先に」と食べ始めたからさらに雲行きが怪しくなってきた。総長の眉間に皺が・・・・・・。
S:「こういうときはサぁ・・・普通全部揃うまで待ってくれるもんじゃないのぉ?なんだか感じ悪いよね~」
S:「ねぇTavitoさん、そう思わない?」
T:「は、はぁ・・・もう少したって何も来なかったら煽ってみましょう」
しかしそんなこんな総長がグチをこぼしている刹那、彼がオーダーした品物が運ばれてきた。
自分のはまだ来ない。まさか最後かぁ?総長はワリバシをペキッと割って一言。
「じゃっ、お先に!♪」
って早っっっ!!!!手のひら返しかよ!待ってくれねぇのかよ!!!
全員のおなかが一杯になったところで、外に出る。さて、楽しかった福島集会もここで散会である。バイクを1列に並べ、集合写真。
いやはやこうやってまともに見ると壮観だな・・・・個人の呼びかけでこれだけのバイクが集まるというのもある意味結束力の強さを感じさせる。バイクの年代にしたら、70年代前半から今年まで、30年以上の差があるのだ。まさに急ごしらえの博物館状態である。
撮影会も一段落したところで、隊長から今回の集会についての総括の言葉を頂き、全員から労いの拍手を受ける。(進呈品はなし)そのあとだれが言い出したか知らないが、「次回の集会の幹事はジャンケンで決めましょうか!」
提案した人は今考えるとだいたい見当はついている。おそらく今までのジャンケンでボロ負けした人だと思う。真剣勝負がまたも此処に着てまで始った。20人が一斉に出すと、一向に勝負が決まらない為、いくつかの数人のグループに分かれて勝ち抜けし、それぞれのグループで残ってしまった敗者でプレーオフをするということになった。
結果。
BMWR100RSのH氏が見事次回集会の幹事をゲットしたのである。さぁ大変だ。
彼の住まいは東京都である。参加メンバーの大半を占める東北方面のメンツ、どうやってこっちまで引っ張ってこられるのだろうか。
まぁ別に幹事の地元で集会を開くという規約は無いので、また同じような場所でやるというのもいいし、それは勝ち抜けた自分の事、ベラボウに遠い場所でなければどうでもいいという、まぁ激しく無責任な期待感を持ってしまった。次回の集会幹事も無事決定し、最後に今回の幹事「隊長」のご挨拶を頂き、一本締めにて福島集会はこの場でめでたく無事お開きとなった。
時間はまだ昼過ぎである、このまますぐ高速に乗るのも芸がないと考え、自分は帰り道を考えていた。
ここからであれば、猪苗代湖までもどって、会津田島を経由し会津西街道を南下し、川治・鬼怒川温泉あたりでヒトップロ浴び、今市から高速に乗るというルートを組み立てた。
その間、数人の方から「Tavitoさん、どうやって帰ります?」と聞かれたので、上記のルートで帰るという事をお話した。
「但し、少々遠回りになるので早く帰りたい方にはお勧めしませんけど、自分はいつもこのコースでこっち方面は移動してますんで」と付け加えた。「へ~」とか「ふ~ん」とかいう反応であった。ルートがイメージできないのか、あるいは「わざわざ面倒臭いルートで帰るんだな」と言った感じ。その中で、ZEP1100のNさんは興味があるようで「適当にくっついていっていいですか?」と聞いてきたので、その点に関しては「お好きにどうぞ」とだけ応えた。その後栃木のZ1000JのZさんも「とりあえず一緒に途中までは帰るよ」と言ってきたので、「いいすよ」と軽く返事をしておいた。熱いオトコ角ZのKさんも「その道面白そうだな」と興味がおありのようだったので「高速にいまから乗っかったら、面白くないですからね。今日まだマジ走りしてないし」
帰り道は自分のペースで好き勝手に帰ろうと思ったので、出発の準備が整った後、まだ立ち話をしているメンバーの方々にお別れの挨拶をし他の方の準備を待たずに相方と共に今来た道を引き返すことにした。
走ること数分。ミラーにNさんの姿が見えてきた。その少し後ろにはZさんの銀色のZ1000J。
その後猪苗代湖を通過し、見通しのよい田んぼの中を突っ切る直線に出たあたりでミラーを確認してみる。「・・・・・・・・・?」
なんだか、台数が増えているような気がする。一台二台三台・・・・・四~六台はいる。別グループか。いや違う先ほどまで一緒に走っていた見覚えのあるバイクのライダーだ。
「あらー、なんだか結構な人数がついてきてるよ」
やがて先の信号が赤になり相方を停めその間に地図を確認する。
ふと後ろの気配が気になり今度は直接後ろを振り返ってみると・・・・・「げ」
十台はあろうかというバイクの列が後ろに繋がっている。なんだ?結局東北メンバー以外殆どついてきてるじゃないの!実は自分自身あまり先導というのが苦手で、勘弁してほしいというのが本音だ。とにかく、闘わない限りは後ろからプレッシャーを受けたくないのである。田舎道を自分のペースで適当にチンタラと走り、適当にミスコースをして思わぬ発見をしたりするのが好きだからだ。しかし既に道先案内人状態になってしまっているので、ここからは道を間違える訳には行かない。しかし間違って文句を言われてもチョト困るというのもある。そんなこんなを考えながら、会津田島を目指す。
走りなれた道のはずだった。所が、北上するのと南下するのとでは、微妙に目標物の見え方や、周囲の風景が違ってくる。どこで間違ったか、とうとうミスコースしてしまったようだ。
で、現在位置も定かでない。定かでないから地図での確認も出来ない。「こうなったら、カンで走るしかないな」と開き直り、太陽の位置とアスファルトに映る影の角度を確認しながら走り出した。
とあるT字路に差し掛かった。このまままっすぐ行ってしまうと、郡山市に出てしまうかもしれない。だがこのT字路を曲がって入っていったら、どこへ出るか分らない。しかしなんとなく、このわき道が通過点「羽鳥湖」へ向かっているような気がしたので、「ええいままよ」と突入した。
どうろそのものは非常に整備されていて、走りやすい。
しかし周囲の風景は田んぼしかなく、集落らしいものはない。道路そのものにもあまり生活感が感じられない。行き過ぎるクルマの姿もない。「ううむ・・・・しくじったか?」しかし後悔既に遅し、ミラーには何台ものバイクの姿が!しかし、悪い予感というのは見事に的中するものである。二車線だった快適な道路は、やがて路側帯がなくなりセンターラインが姿を消した。
そして目に飛び込んできた「この先幅員狭い注意」の看板。
「これは、オレが好きそうな道になるのか(汗」
その通りになった。鬱蒼としたスギ林の中をクネクネと細い道が走っている。
そのビジュアルは舗装された林道だ。しかし道のアチコチにスギの落葉があったり、夕べの雨で堆積した砂だろうか、枝やら落石やらで非常にコンディションが悪くなってきた。
そしてとうとうアスファルトが切れ、ダートに突入。しかし路面は非常に締まっており悪路ではない。少ない荷物で身軽な相方はこともなげにダートのギャップをクリヤしていく。さすが国道1号線がダートだった時代に生まれたバイクだけのことはある。これしきのジャリ道で音を上げるような挙動を一切見せない。乗っている自分もZ1でのダート走行は何度も経験しているので、さほど慌てない。むしろ、適度に荒れた道に入るとヒートアップするというオカシナ精神構造になっているので、よけいにエキサイトする。
しかし・・・・・・「ハッ!!!う、後ろ・・・・」
ミラーを見る。先ほどまでいい感じでついてきた後続メンバーの姿がない。やば~~~~~、エライ道に引き込んでしまった。アップハンドルの現行ネイキッドだったら、多少走りにくくともどうにかやり過ごせるだろう。しかしさっき信号待ちで後ろを振り返ったとき、自分は見てはいけないバイクもついてきているのを発見していたのだ。ZX-12RのSさんとZX-9RのBさんだ。
低い車高、高いシート、切れないハンドル、ハイパワーのエンジン強力すぎるブレーキ。ダートを走るにはあまりにも真逆なバイクのお二方はメットのなかで激怒しているかもしれない。
でも・・・・・・ワシャ知らんよ。だれも快適な広い道を走るなんて言って無いし、ダートを走るかもしれないとも言って無いし(完全責任感ナシ)、責任もてませ~ん。と思いながらダートを突破。急激に標高を下げながら、ようやく目指す国道118に出た。もう安心である。あとはこのまま田島町目指して走ればいいだけ。この先の湯野上温泉外れのパーキングで一服という所まで走れば結構な時間がたつだろう。ということで勝手にズンズン先に進んだ。
湯野上温泉街を抜けた先のパーキングで小休止。なんだか結構な数のバイクが駐車場に入ってくる。
「なんだかなぁ・・・・・帰りたい人帰っても良かったのに」
まぁ別に邪魔くさいなんて思っている訳ではないのだ。ただ、散会後はちょっと独りになって「祭りの後の余韻」を楽しみたかったというのがあったのだ。予定外のダート走行にメットを脱いだ人からは様々な反応が帰ってきた。
角ZK氏「なんだ!アレ!聞いてネェゾ!バイク泥だらけになっちゃうところだったぜ!」
確信犯じゃないですよ。
ZEP11N氏「面白かった~~~♪」
ポジティブシンキングな人。
総長「腰がぁ~~~~」
まさかついてくるとは思わなかったのです。
ZX-12RS氏「・・・・・・・・・・きつかった~~~」
Sさん、世界最速のモンスターでのダート走行楽しんでいただけたでしょうか、スンマセン。目ェ怒ってます。
駐車場での一服後、ZInさんの提言でこの後今市へ抜けると渋滞にはまりエライ目に遭うらしいので、途中から那須の山越えをして高速に乗っかるに変更した。後続のメンバーの方々も一様に賛成の姿勢を示した。本当はここで休憩しないで、川治温泉の露天風呂でじっくり休んで日光街道を南下して締めようと思っていたのだが、なにぶん大人数サマがついてきてしまったので、ここはその意見を受け入れる事にした。たしかに時計を見ると以外と時間を食っていたようだし、空を見上げれば真っ黒な雲が西方面から押し寄せているのも見えたので、判断は正しかったと思う。駐車場を出発し国道を南下、結構交通量が多くペースが思ったように上がらない。
大型観光バスがチンタラと走る那須の山を越えて西那須野ICから東北道にのっかり、最初のPAに到着した時には隊列を組んでいたはずの後続車が殆どいなくなっている。高速に乗る前にトイレがガマンできなくなり列から抜けてしまった人、高速に乗ってから最初のPAではなく、その先のSAまで吹っ飛んでいってしまった人、みんなバラバラになってしまったのである。
しかしまぁすでに散会してしまったあとだし、無理してツルんで走る必要もないしで、そこはそれ、ある程度人が集まったら次のSAへと出発し再び先行していったメンバーと合流。
悪夢のダートレイプをされてしまったZX-12RのS氏は、高速に乗るまでの時間が想像以上にかかってしまった事に危惧を感じそのまま帰ってしまったそうだ。
まぁあのバイクならZから見たらワープしてるようなもんだから、直ぐに自宅には到着するでしょう。ましてやすでに栃木県に突入しているのだから。那須高原SAにて南関東と北関東のメンバーはここでお別れとなった。
さらに高速を南下。
最後の休憩地点蓮田PAまでを一気に走る。その間来て欲しくなかった雨に遭遇。
「くそーーーここまで粘ったけれど、やはり駄目だったか!次のバス停でカッパ着るか」
所が、本降りになると思われた雨がいきなり止み。路面は一気にドライに復活。持ち直してしまったのである。
「おお!ラッキー!入梅後にしてはつき過ぎです」
結局ペースを落とさずにそのまま走行を続ける、後方から一台のバイクに追い越された。
使い古したカッパを着て、ZEP1100に乗っている「あれ?Nさん?」よく見ると足がバタバタと動いている。いや足をばたつかせているのではなく、身につけているものが風に煽られているようなのだ。コンビニのレジ袋をブーツに被せてブーツカバーにしているようなのだ。この方法あまり一般の方々にはお勧めしたくない。たしかに殆どタダだし、どこでも手に入る。
でも強度は無いし、ブーツの形に合わせて作ってある訳ではないので、走っている間にずれたりペダルに引っかかったり、足を着いたときに「ズル!」と滑って立ちごけすることもある。何を隠そう自分はそれの経験者だからだ。雨上がりの蓮田PAに到着。日も沈み、混雑が激しくなってきた。駐車場もほぼ満車。人間の姿も多く騒がしい。休日夕刻のよくある風景でもあり、現実に引き戻される風景でもある。結構頑張って走ってきたので少々疲労が溜まってきた。明日の仕事は早朝出勤ではないのでその点が非常に楽である。
一息ついた当たりで総長が切り出した。
「さて、今集会最後のジュースジャンケンしましょうか」
おお!ここ最近の総長は勝率UPしているので、かなり強気のご様子。勿論自分は場の空気を読んで勝負に参加する事にした。
「最初はグー! ジャンケンホイっっっ!」
なんだかいい年をした大人、それもいかつい格好をした数人のライダーが輪になって目を三角にして真剣にジャンケンをやっている風景、微笑ましいというか日本はまだまだ平和である。
「のわっっっっ!!!!!くっそーーーー」
結果。
言い出しっぺの総長が轟沈した。メンバーの注文を聞いて廻った後に一言。
総:「こういうときはさ、一人じゃ持てないだろうから悪いから一緒に行きますよ。っていってくれる人がいるもんなんだけねぇ・・・・・・感じ悪いよね~」
その他大勢:「勝負は勝負ですから、よろしくお願いしま~す(笑」
Tavito:「総長言い出しっぺなのに・・・オイシすぎます」
文句をブツブツ言いながら買ってきた総長のお土産を全員が飲み干した後。
またしても総長の鶴の一声。
「今度はこの空き缶捨てるのをジャンケンでやるぞ!」
全員:「え~~またですかぁ」
総長はやる気マンマンである、絶対に負けないつもりでいる。
まぁさすがに自分もここで連敗するという事はありえないだろうと思い、ジャンケンを承諾。
「最初はグー! ジャンケンホイっっっ!」
勝負は拮抗し、なかなか決まらない。しまいには空き缶を捨てるのは抱えていくのが大変なので、2人まで枠を広げましょうという他メンバーからの折衷案まで出されたが、
総長は「買ってきたのが一人なのに、なんで捨てるのは2人なんだ!そんなの絶対に認めん!」と突っぱねた。
再びジャンケンが再開。
「アイコでホイッッ!!!ジャンゲンボイッッッ!!!!」
総長:「あ」
その瞬間総長の足元に全員の空き缶が怒涛の勢いで置かれる。その早いこと早いこと。
総長今日のオイシイ所全部持っていってしまいました。有難う御座います。
その後、怒り覚めやらぬ総長は隊長らとともに夕食を取らずそのまま一気に千葉へ帰ることとなった。お別れの前に、一人一人握手をし、次回集会での再開を誓い合った。やはりこの瞬間はチト寂しい。サービスエリアのレストランにて、角Z-Kさんと9RのBさんの3人で済ませ、ここでバラバラになることにした。SAを出発。渋滞をすり抜けて程なく東北道終点浦和料金所を通過。ふと路面を見ると、濡れている。加速する車のタイヤからは水煙が上がっている。しかし雨は降っていない。
「おお!本当についてるぞ」
約1時間後、自宅に到着。カッパの出番は結局無かった。こんなのは恐らく初めてではないだろうか。すくなくとも雨の多い国日本において、ましてや入梅直後の不安定な天気の下、
山岳道路を散々走ったにもかかわらず、本格的な雨に降られること無く、カッパを着ずに済んだというのはまさに快挙である。運を使い果たしたのは言うまでも無いだろう。1ヵ月後には、本当に久しぶりのソロツーリングを予定しているが、この日はジャンジャン降られるに違いない。でもこの日はダート三昧の林道ツーリングを考えているので、眼中に無い。ダートを走るときの服装は、全天候型だからだ。濡れる、汚れる、倒れる事を前提にして現地に赴くので、雪が降らない限りは平気のヘイで走りつづけられる。
バイクも長いこと出番を待っていたGSが登場する。
林道ツーリングは久方ぶり、そして泊りがけは本邦初と言う事で、上がったままのテンションはこのまま持続しそうな勢いである。
「Fin」