5.04

朝6時ごろ起床。

カーテンを開けると、外はまぶしいばかりの太陽が。下の道路には早くもスキー板を担いだ春スキーヤの姿が。他のメンバーはまだ寝ているようだ。夕べは早くに床についたので、当然目覚めも早い。腹も当然空いている。しかし朝食は8時からなので、それまでは我慢しなければならない。というよりも、体中がベタベタで最高に気分が悪いので早くサッパリしたかった。
一人で朝風呂となる。すでに浴室には数人の先客が。場所は硫黄風呂と呼ばれるところ。たしかにその名の通り辺り一面硫黄臭い。温泉がその日の気温や天候によって色が変わると言うもの、本日はバスクリン色になっている、これが青色になったり透明になったりするらしい。湯船に入る前に体全体をきれいにする。昨日は汗をかいたり血を流したり、埃にまみれたりとハードな一日だったので、徹底的に洗い流す。
「イジジジジ・・・・・」
傷口が傷む。いちおうバンドエイドはしているが、当然激しくしみる。そして湯船に浸かる。
右腕を上げたまま、マヌケな姿である。風呂に入っているのに「センセイ!」しているのだ。しかしそれもいい加減疲れたので、思い切ってお湯の中に浸けることにした。
「ウヲ!イデデデデデデデ!!!!!!」

激痛が走る。しかし消毒せねばならない。気持ちいいはずなのに、辛い。アホの世界である。
無茶をしてコケルと、なにをやってもつまらない。やるもんではないのだ、ツーリング先での転倒は。
部屋に戻るとメンバーが起きていた。入れ違いに風呂にいくという。またも一人で留守番だ。
なにをしに来たんだか。待望の朝食の時間、ビュッフェスタイル(バイキングと呼んでいる所が多いが、これは間違いである)にて好きなだけ、おかずを持っていける。しかし最近は食を細くしているせいか、それほどの量は食べる事が出来ない。これが体重減に繋がっていければいいのだが、なかなか減っていないのが現実。日中の渋滞を考えてか、いつもより早めのチェックアウト(と言っても10時近くなのだが)だったが、もう時既に遅し。山頂一体の志賀草津道路はあいも変わらずの車列。昨日同様に対向車線を駆使しながらの、強行突破。小一時間移動して、途中のレストハウスでお土産と小休止。再び移動して万座へ。
温泉だ。また温泉である。このメンバーと行動を共にすると、走るときは激しく走り、休む時はグッタリ休み、そして風呂に入ったら暫く動かなくなるので、時間が矢のように過ぎていく。だが楽しいのは言うまでも無い。もうすぐ交流を始めてから10年になろうとしているこのメンバー。長続きするのはこういういい加減、でもメリハリがはっきりしている行動パターンに自分が合わせられるからだろう。そういえば、数年前ここの近くの「万座高原ロッジ」にて自分は空腹に摂取したアルコールが祟って、風呂場で湯あたりし動けなくなったのだった。
やはり、空腹にビールは非常に危険なのだ。それをいまだもって学習していない自分はアホである。ガマンすりゃいいのにその場の雰囲気で「乾杯」してしまうからイカンのだ!
万座の温泉は熊の湯以上に攻撃的な泉質なので、これまた傷口に激しく殺菌効果を体感する事が出来る。多少はこれで治りが早くなってくれるだろうか。

ここで諏訪方面に帰還するZRX1100RM氏は戦列を離れた。彼の自宅には彼の分身がいる。今年の年賀状に分身とともに写った写真を添えた年賀状が来ていた。しかしここの所よく外出するM氏。ヨメハンがどう思っているだろうか。家に帰ったら家財道具が一切カッサイ無くなっていない事を切に願うばかりである。
俗称ロマンティック街道を六合村~中之条と走る。長野原草津口から渋川方面への国道が激しく渋滞している事を予想して、帰り道ではいつもこの山道を走る。それなりに有名な道なのに交通量は相変わらず少ないのが助かる。
高速に乗る前に腹ごしらえをする為、道沿いのソバ屋に立ち寄った。道からも見える赤い番傘が目印の店だ。お品書きをみると一様に高い。まぁ全員社会人だし、チョンガーなので問題は無かろうということで、店の中に突入。まず最初にこの店の感想を述べさせてもらうと、
「もう行かない」の一言である。
いや・・・酷い目に会ったとか、ボッタクラレタという悪質なものではないのだが、その理由は以下のとおりだ。店に入る時間は2時ごろとあってか流石に空いている。席に着き、間も無くして注文をとりにオバチャンがやってきた。そして開口一番「ウチのお勧めはこしあぶらのテンプラとザル蕎麦です」
とのこと。
こしあぶらとは何ぞやとおもったら、山菜の一種らしい。天ぷらするまえの生のこしあぶらも見せてくれた。まぁ見た目はタラノメの大して変わらんが、香りがそれなりにする。オバチャンも「この山菜は貴重なんですよ!なかなか見つからなくて、味よりも香りを楽しみながら食べるものですね」などと講釈を続ける。そこまで推奨するのならと、自分はお勧めを注文。暫く待っていると、それが出てきた。さて、まずは蕎麦から食べようかと思ったら、
「お客さん、まずはこしあぶらから召し上がってください」
「あ、そう?」
「それと天ツユではなく荒塩で食べてください」
「荒塩ねぇ」
自分はいつも麺がくっつくのを嫌ってまずは蕎麦から食べるのだが、ここでは許されないらしい。揚げたての天ぷらはまぁ確かにうまい。香りも予想していたよりきつくなく、ほのかに青っぽい匂いがする程度。これで香りを楽しむというものどうなんだか疑問だ。
「どうですか?」
オバチャンが聞く。
「まぁいけるんじゃない?」
「でしょう、でしょう!?有難う御座います!」
トイメンに座ったメンバーのSRVのT氏は人がいい。
「うん!うまいうまい!」と連呼。オバチャンは大そう喜んでいた。
「ではごゆっくりどうぞ」
とオバチャンが撤収した後に、横から箸が伸びてきた。9RN氏である。
こしのあぶらがやはり気になっていたらしい。一つまみを口に入れる。
「どう?」
「・・・・・・」
見ると眉間に皺が寄って首をかしげている。どうやら感想はよろしくないようだ。
「まぁ味もそっけもねぇし、香りもなんだかよくワカラネェし」
「なるほど」
「オレだったらたのまねぇな~」
「だろうね」
で、最初の結論に至った訳である。高い割にはたいした事が無いという事だった。渋川までの道路沿いには死ぬほど食い物屋がある、今度来た時にはまた別の店に行こうと思う。

渋川伊香保ICから関越道になり、一路東京方面へ。頭上の電光掲示板に「東松山~○×まで渋滞26㌔」の表示。先頭を走る9RN氏はクビを横に振る。多分、「冗談じゃねぇや」と言っているのかもしれないが、
アンタ関係無いでしょうが!
埼玉県民で降りるのが東松山ICだってのに。アッシはそこから更に先、100キロ近く走らなければならんちゅうの!ということで、この先はただの渋滞との戦いが続くのみなのでレポートは此処で終了。
今回より「バトルツーリング」という集まりの名称から「遠征」と改められ、気分一新で走ったものの、峠での久方ぶりの転倒と負傷。ビール一缶での悪酔い。山岳道路の激しい渋滞と散々な内容であった「遠征」だったが、総括してみれば、成功であったと思う。
その最大の要因は、天気である。9RN氏、ZRXM氏、そしてZ1Tavito。この3人が終結すると、必ず天気が崩れるという伝説が今まで通用してきたが今回、3人がいる間一滴の雨にも降られなかったのである。これはまさに奇跡としか言い様が無い。これで今まで脅かされてきた「雨男」3人衆の汚名から解放される日も近いのではないだろうか。

しかし肝心の自分に問題がある。初日、朝。
京葉道路を集合場所に向けてすっ飛ばしていた時、自分だけ局地的な大雨に降られたということである。ほんの数キロだったが、前日に洗車した相方壱号機が元通りに汚れてしまったのが本当に悔やまれる。あれが今回のケチのつけ始めだったのだろうか。まったく、合点がつかないことはなはだしい。

さて、恒例の「遠征」次回は場所を東北会津磐梯に移し、宿は山形は新高湯温泉。時期は8月の夏休みシーズンが終了した頃になると思う。そして持ち回りである幹事は、オレの番のようだ。雨に祟られないよう祈るばかりである。そして下らない転倒で楽しい集まりをフイにせぬよう心して走りたい。
「完」