さらば四国、ご無沙汰本州 5.20
夕べの宿。あれは最悪だ。
ここは個人のHPだから敢えて思いっきりバッシングさせてもらう。
宿の名前は小松島千歳ユースホステル。
まず、「建物オンボロ」
いい加減建て直すかYHの登録を返上しろ。

「トイレ、暗くて汚くてムチャクチャ臭い」
水洗のクセに、吐きそうになった。

「階段、物凄い急」
夜恐ろしくて明かり無しでは降りられない、あんな死にかけの年寄しか住んでいないYHの事だ。どうりで二階客室部分が全く掃除されて居ない訳だ。
そして夜間に上り下りするその階段の明かりのスイッチも何処にあるか分からなかった。

「メシ、まずい」
年寄りが作った家庭料理だかなんだかしらないが、1食1000円であの内容は無いんじゃないか?
どれもこれも薄味だし、やたらグリンピースばっかだし、グリンピース、嫌いじゃないけご飯茶碗に8割がた埋まるような量を出すな!ウンザリする、だから半分残した。まったく、箸でつまんで別の皿にでも移してタイムを競うのかと思った。

「食器洗い、食事は自分一人なのに洗わされた」
今日日のYHで食器を洗うのは珍しいのに洗わされた。

「スポンジ、腐ってる」
握ると潰れて形が元に復元しない。
「食器洗剤が古くて劣化し、泡立ちが極端に悪い、そのボトルも埃を被っていて汚い」
「洗面所、ここの人間の私物が山と置かれていて雑然としている」
そして一つ一つがみんな汚い。不潔極まりない。
「風呂、お客が入る前に自分とこのボケジジイを風呂に入れやがった」
だれが、その後で入るか!YHに来る前に温泉に入っておいて大正解だ。
「部屋の中、汚い」
埃だらけ、テーブル埃だらけ。絨毯、毛髪だらけ虫の死体だらけ。毛玉だらけ。
「布団、ペッタンコ煎餅」
かび臭い、どことなくジメッとしている、だから使わなかった。
「夜の部屋、蚊の大群がどこからか侵入」
原因は隙間だらけで渾身の力を込めてやらないと動かないアルミサッシと機関銃でも撃たれたかのように蜂の巣になっている網戸。
体中刺された。
痒くて煩くて眠れない。
起き上がって手で1匹1匹叩き殺す。それでも、まだまだ出てくる。
暑いのを我慢してガラスを全て閉める。部屋の片隅に座り込み、奴らが何匹居るのか数えてみた。7~8匹はいるようだった。
頭に来たので、下に降り勝手に台所に入って殺虫剤を失敬して部屋に戻り逆襲に転じた。
部屋中に殺虫剤をぶちまける、バルサンも顔負けな位に殺虫剤を噴霧。部屋の中は霧が掛かったように真っ白になる。
台所に置いてあった数本のキンチョールなどを惜しみもなく噴霧しまくった。
勿論そんな部屋に居たら人間まで具合が悪くなるので、俺は廊下に退避した。
俺が一人蚊の大群と格闘していたら、晩になって1台のCBのライダーが来て同じ部屋で寝ることになった。
俺は「面白い漫画が有るのでまだ暫く寝ないので、お先にどうぞ」
と言い、彼は疲れていたのかすぐに部屋にあの不潔な布団を敷き灯りを点けたまま寝息を立て始めた。
外でその様子を見ていた俺は再び部屋を覗く、彼の頭上の蛍光灯の明かりにはまだかなりの数の蚊が飛んでいる、明かりが点いている限りはあの網戸からどんどん蚊が侵入してきてしまう。
このままでは寝る事が出来ないと判断し窓という窓を全て締め切り同室のライダーが寝ているのも構わずその頭上を飛び交っている奴にも死の煙を食らわせてやった。
当然霧となった殺虫剤はそのCBライダーの顔にも降りかかる。
しかし当の本人、全然起きない。

呑気なもんだ。多分翌日体の調子が悪くなっているのではないだろうか。だが、そんな事知った事ではない。こっちは眠いのを我慢して退治してやっているのだから少しは感謝しろってんだ。
部屋の中をグルッと歩きながら、口をタオルで抑えカーテンの陰やテーブルの下、天井にもまんべんなく死の煙を撒いた。手持ちのキンチョールが空になったので再び台所に侵入して3本ばかり未開封の殺虫剤を見つけ自分の体は部屋の外に出し、腕だけ隙間を開けた襖から部屋の中に突っ込みその手に持った殺虫剤を空になるまで噴霧した。
わずかな襖の隙間か殺虫剤が流れ出てくる、目が沁み咳が出そうになる、咳き込むとCBライダーが起きてしまうので口を押え暫く部屋の外に出て一服、殺虫剤が薄まるのを待って部屋に戻り見ると畳の上に何匹もの無数の蚊の死骸が。
再び横になった。鬱陶しい羽音はしなくなった。
その代わり、隣で寝ていたCBライダーが時々苦しそうなうめき声を上げていたのが気になりはしたが・・・、何が彼の身に起きたのだろう・・・?

朝、俺のお陰で熟睡したCBライダーは夕べ朝早く起きて剣山に登るからと言っていたので起きた時には姿かたちも無くなっていた。出て行くときの気配さえも気がつかなかったと言う事は、相当に安眠していたに違いない。YHのばあさんが部屋の入り口まで来て朝飯が出来た、と言ってきた。時刻は6時半。誰がそんなに早くメシを食べるなんて言った!
今すぐにでも宿を出たい衝動に押されるように朝飯を片付け、食器を洗い、直ぐに出発。7時45分フェリーターミナル到着。WEBでの時刻表では、8時半徳島出発とあったが、切符売り場横の時刻表を見るとなんと8時10分発となっているではないか!早すぎた朝飯がこの時だけは功を奏したようだ。オートバイは自分と相方1台のみ。30台程の4輪の横を通って1番前に並んだ。しかし、車両甲板への入り口には鎖のゲートが、「もう、この船は一杯なのか?タイムオーバーか?」と思い相方から降りて船の中を覗いて見る、1台も車が入っていない!そして間もなく作業員から「バイクの人乗って!」との指示。待ち時間ほぼゼロ。船に1番乗りで乗り込む。今回のツキまくりの象徴的な場面だった。
相方から降りて客室に入る、雑魚寝部屋のアチコチに「団体様予約席」の看板。即座に更に上に上がり船尾にある外の甲板に出て、一番眺めの良いベンチを確保。岸壁を離れ、船が180度ターンする。眼前に徳島の町と四国の山が見えてきた。今後訪れる事の無いであろう四国の山の見納めだ、写真に収めてさっさとベンチに戻り横になって眠る事にした。
2時間後、船内アナウンスに起こされ車両甲板に下りる。4輪ドライバー達は既に車に乗っていてタラップが開くのを待っていた。2輪専用スペースは我々だけなので、輪留めやタイダウンベルトを外した後は向きを変えいつでも船から降りられるようにしておいた。
重苦しい音と共にタラップが開く。傍にいた作業員が我々に向かって手招き、またまた1番のりだ。最高に気分がいい。後から来て、最初に船に乗り最初に船から下りる。オフシーズンならではのバイクに対する特別待遇だ。
R42を一端南下、有田市内で昼と買出しとガソリン補充を済ませ、R424から一路龍神村に向けて走り出した。やけにバイクが多い。そうか、今日は日曜日地元の単車乗りが龍神スカイラインに遊びに行くのだろう。ピカピカで小さなウエストバッグだけのライダーばかり目に付く。我々のような風体の単車乗りは1人も居ない。
龍神村に向かうR424は自分の持っている10年物のツーリングマップルが示すように全く様変わりしていた。地図のコメントでは「1~1.5車線」とあったが、それは一部の集落の中を通過する時か、工事中の所を通過する時位、あとは真新しい舗装が滑走路を連想させる2車線道路に変わっていた。四国の悪路の変わり様にも驚いたが、時代の波はここ紀伊半島にも押し寄せていたのだ。6~7年ぶりの紀伊半島。10年後には高速道路も通るのではないかと思えるほどの変貌振りであった。
2時過ぎにはキャンプ場到着。ここも最近出来たキャンプ場だ。10年物のツーリングマップルには閉鎖された「龍神キャンプ場」以外に満足なキャンプ場と言ったら、あの自分がボヤ騒ぎを起こした「小又川キャンプ場」しかなかった。
しかし、今は龍神村の中だけで新たに3箇所のキャンプ場が出来ていた。しかも、その内の一つはオートキャンプ場だという。今回のキャンプ場選びの条件として、最も重要視されたのが「電源の確保」だった。実は時間に余裕があったので、隣の集落「柳瀬」のキャンプ場も見に行ってみたのだ。ところが、ここは非常に新しいキャンプ場にもかかわらず自分は即座にNGを出した。その理由は明白である。まず、国道から狭い1車線道路を延々と走らされる。次に、狭い川沿いの峡谷の上に出来たキャンプ場なので、テントサイトがどこにあるのか一目では分からない。次に、炊事場にコンセントが無い。駐車場らしき場所が以上に狭く、しかも傾斜していて安定した状態で相方から荷物を上げ下ろしすることが出来ない。そして、決定打。携帯が思いっきり圏外になっていた。今回のツーリングではかなりの辺境の地にも幕営したが、まるっきり圏外というのはここが始めて。即断即決、撤収である。話にならない。
で、さっきのキャンプ場の前に下見しておいた「福井」という集落の外れにあるキャンプ場に舞い戻り、集落の中にある理髪店(ここが管理者)で受付を済ませ、無事幕営となった。
ここは、田んぼと河に挟まれた平坦なテントサイト、だが、トイレを初めとした諸設備が綺麗で清潔。炊事場には2箇所のコンセントが、しかも明かりが点く。そいでもって、携帯の電波状態は3本バッチリ立った。合格である。ただ、炊事場が狭くてテントは張れなかったが、天気の心配は全く無いのでこれもOKとした。
4月の18日に千葉を出発して一ヶ月と2日。今回の旅、最後のキャンプである。例によって、今晩は豪勢にやる。アルコールは無いが。(なんせ下戸なもので)米を砥ぎ、夕飯の下準備も整った。日が傾き、周囲を取り囲む田んぼからカエルの合唱が始まった。九州上陸2日目の夜から、やかましく鳴いて安眠を時折妨げていたこの声の主を今回初めて見る事が出来た。

あぜ道を歩くと「ポチャン」と田んぼに小さな物が飛び込む、暫くそこで待っていると、息がこらえ切れなくなってそいつは上がってきた。こげ茶色に黒の斑点、手のひらにも収まってしまう小さなカエルであった。こんな小さい奴があんなデカイ声を出していたのか、そう思うと、今まで忌々しく思っていた見えない声の主に対する感情は収まってしまった。今、日はとっぷりと暮れヤツラの合唱はいよいよ本番を迎えようとしている。でも、もうそれも今夜が最後。そう思うと、少し寂しい。
相方のトリップメーターは、2800キロを指していた。明日には3000キロを越えるだろう。
さぁ、晩餐の時間だ。
この投稿の関連画像はこちら。