ビールの酔いにキーを打つ手も・・・・ 5.11
連休に突入すると同時に渡った薩南諸島「屋久島」「種子島」を朝9時西之表港発の船に乗って本土に戻ってきた。しかし、自分の両脇には種子島で知り合った2人の旅人がいた。一人は愛知県から自走でやってきた、「百名山80カブライダー」、そしてもう一人は昨日まで種子島に移住する為に物件探しをしていた「サーファーカロゴン」である。カブライダーは、浦田のキャンプ場に遊びに来た時に「明日の船で本土にもどる」という話は聞いていた。しかし、サーファーの兄ちゃんは今朝になって、荷造りをしている自分のところにやってきて、「今日お供してよろしいですか?」と聞いてきたのだ。そりゃ、こちらは全然構わないのだが、どうしてまた?といった感じだった。彼に言わせると、その心変わりは自分に半分は責任があるという。
夕べ夕飯時に彼と話していた時の事、彼がまる2日間かけて種子島での物件を探しているという話を聞いた時に自分が「そこまでするとは、余程この島の波がお気に入りなんですね」といった言葉で彼は、はっと我に帰ったと言う。「お陰で夢から覚めて動く気になりました」と彼は感謝していたが、こちらはむしろ島に移住する方に賛同していたので何だか複雑な心境だった。自分は確実に船に乗りたかったので、8時前には西之表港に到着、古ぼけた薄暗いターミナルビルを通り抜け、岸壁の片隅に立つコンテナハウスの事務室で乗船手続きを済ませた。船は「鹿児島商船 第二屋久島丸」という船なのだが、実際に接岸している船を見て少々面食らってしまった。

・・・・ボロイのである。しかも変な薄緑色一色の味気ない船体の色。
作業員に誘導されるがままに相方ごと乗船、しかもこの船去年の10月に旅客業務を廃止したので本来は貨物船なのである。だから、繁忙期は車やバイクなどが集中する時は車両だけこの船に乗せ、人間は同じ航路を走るジェットフォイル(水中翼船)に乗って先回りし、この船が到着するのを港でひたすら待つというのだ。ツクヅクシーズンピークの時に利用しなくて良かったと思った。

相方から降りて船内に入る。凄い、なんともまぁこの鼻を突く重油の匂い。薄暗い船室。完全に閉鎖された売店。何故か入り口のあちこちに板を打ち付けて入れないようにしている特等室。さび付いた流しが鈍く光るレストランの厨房らしき跡。数年前に新造船前の小笠原丸に乗ったことがあったが、その船と同じ位凄いのだ。いや、それよりももっとボロイ。その雰囲気はまさに映画などで見る北朝鮮船籍の怪しげな貨物船そのものだった。
なぜか、船の中なのに120円と言う良心的な金額の自動販売機。確かに、客船ではない。まんま貨物船である。こんな、船自分としては大好きである。傑作は立ち入り禁止なのに開けっ放しの車両甲板のドアやなんとエンジンルームまで入ることが出来たのだ。大型船のエンジンを見るのは「船の科学館」のカットモデル以来である、しかも実働しているエンジンは初めてだ。

むせ返るような熱気と重油の匂い、耳をつんざくような騒音。電柱のような太さのプッシュロッドが、自動車エンジンの10倍それ以上あるかどうかのロッカーアームを動かしている。直列8気筒、先が二またに分かれているので2バルブOHVと言う事か。そのエンジンが並列に2機並んでいる。総排気量は幾らなんだろうか何十万ccなんだろうか。この船のエンジンはガスタービンなどというハイテクなものではなく、れっきとしたディーゼルエンジンなのだ。いや~何度見ても船のエンジンは笑える。過去にどこかの港にバルブ単体が転がっているのを見つけたことがあったが、あれも身の丈ぐらいの長さがあった。自動車のエンジンをまんまスケールアップしたつくりになっているので、非常に分かりやすい、だからなんだかギャグみたいでおかしい。しかも、このエンジン。ロッカーアームが剥き出しになっているのであたりにオイルが飛び散っている、学校にあった教材を動かしているような感じだ。タペットクリアランスは何で図っているのだろうか、まな板みたいなシックネスゲージでも使っているのだろうか。欲をいえば旅客料を倍額にしてもらってもいいから、出港から入港までず~っとエンジンルームにいて眺めてても構わないほど楽しそうだった。今度の仕事は船舶エンジンの整備士にでもなろうかなんてまで思ったりした。
ドロドロドロとズブトイエンジン音を響かせ、船は鹿児島湾に入った。開聞岳がはっきりと見えた。今日はあそこの麓まで走る。桜島も見えてきた、島に向かう時は雲に隠れて半分しか見えなかったのだが、今日は勿論山頂まで全部拝む事が出来た。あんなイカツイ山だったのか、写真で見るのと実物が放つ迫力はやはり違う。船が向きを変え港に入る、目の前を前後対称の船体を持つ桜島フェリーがイソイソと行き交う。定刻よりやや遅れてフィリピーナ第二屋久島丸は鹿児島港に接岸した。「百名山」は熊本へ「心変わりサーファー」は宮崎へと船上で別れ、自分と相方は一路鹿児島市内を南下、町外れのラーメン屋で昼飯を済ませ、近くのDIYショップで買おう買おうと思っていた4リットルの白ガソリンを購入。これで相方にはまた暫くの間ハイオクを食べさせる事が出来る。R225~226と走り繋いで(ここでも地元の車は法定速度をキッチリと守っていた)、山川町の小高い峠を過ぎた途端、目の前にいきなり「開聞岳」の勇姿が現れた。
「この道路はわき見で事故が多そうだなぁ」と思えるほどの見事な山容を横に見ながら開聞岳麓の国道をはしり、分かれ道から海沿いの宿「かいもん荘」に到着。時刻は4時。早すぎも無く、遅すぎも無く丁度いいタイミングで今日の移動は完了。

1回のみタダだが向かいにある保養センターで1日ぶりの温泉に入り、先ず今日の汗を流した。夕食では久しぶりの生中で少々酔いがまわり、そうそうに部屋に退散。暫く部屋の布団でゴロネして酔いが覚め今日記を書いている。明日も移動する。
この投稿の関連画像はこちら。