有明FP
◎OPENING 有明をフェリーが出航するのは午後六時過ぎなので、荷物のパッキングは旧中の温かい時間帯に済ませた。大きなバッグを抱えてそれをリヤシートに乗せる。荷物が一つ一つ乗せられていく度に『Z1」のサィドスタンドがズリッズリッと横にずれてゆく。 天気は春らしくはっきりしない様相である、まあ降られても大した距離ではないから大丈夫だろうと高をくくって、取り出そうとしていたストームクルーザーをザックに仕舞い込んだ。今回の旅の殆どを山の中で過ごすので雨対策は例年に無く万全である、リヤバッグをすっぽり包むバッグカバー、ブーツから染み込んでくる雨を防ぐオーバーソックスがどれだけ役に立ってくれるかどうか見物である。時刻は出発の三時を過ぎようとしていた。 |
〇四月三〇日 |
徳島県 田ノ浦CA
竜王山CA
今朝パッキングしたばかりの荷物を全て下ろし、無造作に地面に広げ、ゆっくりとテントを立てた。一晩使っただけでもかなり湿気を帯びるシュラフをテントの上に広げ、早速麓の温泉「奥の湯温泉」に出かけた。
団体のオフローダー達が(ここで言うオフローダーとは全て、2輪の事を指す)通り過ぎてゆく塩江町内で買出しを済ませる。だが、あれこれと今夜のおかずを考えているうちにその内容にマンネリを感じるようになってきてはいた。そろそろ1日くらいレトルトメインではない内容の料理でも挑戦しようかとも考えた。
「奥の湯温泉共同浴場」はとてものんびりしていて露天こそない地味なところだが、混雑はしておらず快適である。湯温はとても高く湯船に長時間浸かっている事は出来なかったが、疲労物質が体内から溶け出していくのが分かるほど気分が良かった。
外に出て、汗が引くのを待ってから、キャンプ場に引き返した。サイトに着くと、2台の車と数名の学生がテントの設営をしていた。何か終始賑やかに大声で喋っているので、嫌な予感がした。「夜は静かにしてくれるんだろうなー?」
夜も更け、夕食も済み、暇になったので読書をしている間も連中は「カレーに椎茸入れてみはったらどないや?」等と、下らん話を大声でしていたがその声は山に響いてとても耳障りであった。
この様子を見て、自分が思うに彼らはきっとキャンプをしたことがないのだろう、キャンプニ日目にして耳栓を使うことになってしまった。
山間の日没は早い、東の空が黒くなってきたと思われる頃には一気に夜になってしまった。昼間はあんなに賑やかだった鳥の鳴き声もピタリと止み、その代わり虫達の声のボルテージが上がってきた。学生連中は相も変わらずデカイ声で喋っている。眠くなってシュラフに潜り込んでからは、ちょっとの間気になっていたが、こうゆう目には何度か遇っているので、間もなく眠ってしまった。