というより今日、本当ならば俺はもうこの世にいない筈でした。
好きだった女に捨てられての選択。
34の俺が49になったばかりの彼女に捨てられての選択。
女に捨てられたくらいで死んでちゃ命がいくつあっても足りないぜ。
大方の見方はそうだろう。常識は多分そう。
俺が非常識なのだ。だが、されど失恋。
心の傷は大きい、特に俺みたいな精神異常者は。
5日分の睡眠薬とべゲタミンA10錠。
逝くには十分。確信はあった。これで楽になれると思った。
だが、現実は甘くなかった。
11時30分過ぎ、ケータイの着信音。好きなアーティストの例の景気のいい曲。
職場からだ。
「もしもし・・・」言おうとするが声が出ない。なんで、「も」すら言えない。
「あ・・・う・・・」疲れた赤子のような声がかすかに出るだけ。
時間が流れた。出せた言葉は
「あの、俺、生きているんですか?」
自分で言ってとっさに口を塞いだ。もう遅い。
服薬自殺したことがばれた。クビになる。親にも通報される。後悔した。
何を言ったのか。何を言われたのか覚えていない。電話が切れた。
またケータイが鳴る。今度は就労支援センターからだった。
「君、ダメじゃない。薬ガバ飲みしちゃ。明日連絡下さいよ。
でないとこっちから連絡するからね。いい。」
通報された。早い。早いよ。
俺を中心に世界が猛スピードで回る。一人ぽつりと立ちすくむ。そんな感じだ。
追い打ちをかけるように現実が襲いかかる。
死ねなかった。
体が言うことをきかない。のどが渇く、というより灼け付く。
何をすればいいのかわからなかった。
意味もなく、涙が流れて止まらなかった。
だるい。つらい。眠りたい。
全てが否定された気がした。何を考えても叶わない。叶わない。
自殺を試みたのは今回が初めてではない。服薬は初めてだけど。
何もできない無力感の中。俺に出来たことは昔のことを思い出す。
これだけだった。
なんでこんなことになったんだろう。俺はなにしに生まれてきたのか。
何のために今ここにいるのか。
俺の精神異常の始まりは、S県の有名な精神科のK先生が放った一言。
本当はもっと昔のことのはずなんだけど親に悪いから。その時を始まりにしたい。
「ああ、君、統合失調症ね。目を見りゃわかるよ。こりゃ長くなるよ。」
つづく