良い映画は説明がない。「七人の侍」は雨と泥で完結する。「砂の器」は駅と線路。「ココシャネル」は街の女を見つめる眼差し。

逆につまらない映画はずっと説明し続ける。「シンゴジラ」はひどかった。あれでは期待して訪れた子どもたちは、あまりのつまらなさに眠ってしまうか、泣いて帰ってしまうだろう。

 

ホラーを見に来た大人たちの期待を、この映画はうらぎらない。問答無用で血が飛び散る。

良いホラー映画はシナリオができている。「エクソシスト」もそうであったが、悪霊は人間関係をずたずたに引き裂くために、面白い仕掛けをたくさん用意する。「エクソシスト」は老いた母親を孤独死させてしまう神父の苦悩がベースに敷かれる。この映画はヘロイン中毒になった妹を、兄が涙の出る献身で支えぬく。

 

観ている方は、悪霊の化身となった妹を「早く殺ってしまえよ!」とざわめくが、ダルビッシュによく似た、このお兄さんは、最後の最後まであきらめない。このあきらめない魂が、悪霊に打ち勝ってゆく。

 

製作スタッフはCGを嫌い、アナログな方法で凄惨な描写を、これでもか!と突きつける。ナイフが、注射針が、釘が、最後はチェーンソーまで飛び出して、血を、肉を、骨を血みどろにしてぶっ飛ばしてゆく。スタッフの本物感にこだわった熱意が、暑い夏の夜を、ひんやりとさせる。