入院5日め。

4人部屋にいるが、隣の親父は自分の病歴をとにかく語る。女房が見舞に来ている時は死んだようにおとなしいが、帰ると息を吹き返し、若手の看護婦を捕まえて語る。

私が廊下で、眼下に広がる水田を見つめていると、鮫のようにやって来た。

「動脈瘤やで、あんた知ってはりまっか?

皮膚をこうベロンと剥がされて、頭蓋を外され、脳みその中、かき回しよってん」

私が驚くと、彼は一歩前に出る。

「再発したときは」と

彼は耳の上を指さし

「ここに穴あけられてん」


フランスに海に浮かぶ巡礼地、モンサンミシェルは、今では観光地だが、フランス革命の頃は扇動家をぶち込む牢屋だった。

対岸のアブランシュという街には、創立者オベール司教の頭蓋骨が金ピカの箱に保存されている。親父と同じ場所に穴が空いている。

言い伝えでは大天使ミカエルが、どついた穴となっているが、どうやら中世に穿頭術という手術を受け、そのまま長く生きたらしい。


親父もミカエルにどつかれたかもしれない。