パルコで3公演,北九州で1公演,大阪で1公演(千秋楽)を観ての,杏ちゃんファンとしての感想です。
公演も終わりましたので,ネタバレもありかなと思いますが,まだ観てなくてDVDを待っている方は,これから先はネタバレもありとのことでお願いします。
また,杏ちゃんファンとして,相当偏った解釈をしているかもしれませんが,そのあたりもよろしくお願いします。



まず,この物語,いろいろな所で,観た後いやな気になるとか言われていましたが,私は全然そうは感じませんでした。
パンフレットで,梅沢さんが「再生のお話で,明日から元気に生きていける」と言っていましたが,まさにそのとおりの作品であると感じました。


過去に心に傷を持つ馨が,結婚を機に新しい人生を歩み出そうとしている,その馨の再生を描いた物語です。
そして,あのホテルでの数日間は物語の中でも実際にあったのかどうかわからないお話,馨の心の中だけのお話かもしれないと感じています。
特に美鳥ちゃんは,物語の中でも実在していなかった人物ではないか,馨が再生するために,馨の心の中にあったもの,馨自身であったり,妹であったり。。。そんなふうに考えています。
美鳥ちゃんの衣装だけが,赤や青や緑の原色を使っていたというのも,それを表しているのではないでしょうか。


そう考えると,美鳥ちゃんという役,実在のものかどうかわからない立場で,誰かに影響を与え,再生していく,「おつや」が彦さんを輝かせたように,「ミリ」がミヤモトを変えていったように,まさに杏ちゃんにうってつけの役ですね。
真っ赤な衣装は「小夜子」も着ていましたね。「小夜子」が影響を与えたのは,涼や由似子でしょうか。


この物語のラスト,水の流れるホテルに真っ赤な彼岸花が流れてきて,そこへ夫の信助がドアを開けて入ってきて馨に「帰ろう,我が家へ」と叫び,馨が「はい」と答える。
これを観たとき,ある映画を思い出しました。『空中庭園』です。
血の雨が降る中,小泉今日子さんの絶叫があり,団地が血に染まっていく。
玄関には杏ちゃん達が帰ってきていて,小泉さんがドアを開けて「お帰り」という。
血が彼岸花であり,「お帰り」が「はい」であり,この2つの作品が全く同じに感じられました。
家族の再生を描いた『空中庭園』に対し,『SISTERS』は,観る人の立場にもよると思いますが,一人の女性の,夫婦の,親子の,姉妹の,家族の再生の物語でしょう。


最後の水の演出ですが,これは千秋楽を観たときに感じたのですが,馨の過去が洗い流せた(過去の呪縛から解き放たれた)ことを表しているのかもしれないと思いました。
物語の最初は,梅沢さんがホテルの壁を拭いているところから始まります。

「拭いても拭いても取れないんだよ」というようなことを言っていました。物語の中盤でも,松さんが「擦っても擦っても滲み出てくるシミのように」と言っていました。
そこから解き放たれて明日に向かって進んでいくというラストである,その象徴としての水かなと。(ちなみに『空中庭園』の血は,小泉さんが生まれ変わったことを象徴していましたね)



ところで,最初に書いたように,このホテルでの数日間が実際にあったのかどうかわからないお話であるとすると,もっと大胆な解釈もできるかも知れません。
過去から解き放たれたいと考えている馨に,それを手助けするかのようにホテルの住人達が現れる。
最初に現れた「貧乏神」三田村優治を馨は切りつけてゆく。
さらに,「疫病神」神城礼二に,そして「死神」神城美鳥に相対してゆく。
3人の「憑神」を乗り越えた馨は,夫のもとへと進んでゆく。


これは飛躍しすぎた解釈かも知れませんが,見たままに,神城礼二と美鳥は死を選んで,三田村がもうおしまいだと叫んで,ホテルは終わって,かすかな光として馨が「はい」と答えた,というだけでは,辛すぎます。
最後に横たわっていたのは,馨が乗り越えるべき父と妹の影であり,馨はそれを乗り越えた,そうすると,やはり,ホテルの住人達は馨の心の中のお話で,馨を再生させた憑神様だったとの解釈も,案外そうかもしれないですね。


と,杏ちゃんファンでないとよくわからないこんな長文にお付き合いいただきましてありがとうございます。
『空中庭園』も『憑神』も大好きな作品なものですから。
そして今回の『SISTERS』,杏ちゃんの作品の中で最も好きな作品になりました。
DVDが発売されて,再び観たとき,どんな感想を持つのか楽しみです。