長距離でかつ乗り換えが少ない

そんな電車移動の時が私の読書タイム。

あーあと疲労困憊じゃないときてのも

読書モード発動条件に加えておこう バイバイニコニコむらさき音符





以前乙一さんの作品『箱庭図書館』を読み

めちゃくちゃ気に入って絶賛しまくって

そしたら共感してくれる人が居て、

乙一さんいいよね、他の作品もいいよ

と耳にしたので期待値上げつつ、

まず2冊↓手を伸ばしてみた。

夏と花火と私の死体

死にぞこないの青

以下ほどほどに

一部ネタバレあり。


 まず前者『夏と花火と私の死体』を読んだ。

乙一さんデビュー作らしく知名度が高い。

わりと良い評判を聞いていたせいか、

え?それほどか?と言う感想だった。

子供同士の恋愛三角関係を背景に、

わずかな嫉妬心と不運も重なり、

友達を殺めてしまう女の子。

そのシチュエーションは興味深くて、

ドキドキしながら読み進めたけれど、

オチも予想できてしまって感動は無かった。

乙一さんに対して残念な気持ちになった。

しかし既に購入済みだった2冊目を読む。

表紙からホラー感がただよう

死にぞこないの青』だが、

めっちゃ感動した拍手拍手拍手

ホラーじゃないキラキラ

道徳心に響くキラキラ

結末が良いキラキラ

絶対に表紙で損してるよーと思ったけど、

これも作戦なのかな?と思った。

ホラーでドロドロな話と勘違いさせて、

エンディングのギャップで心を掴む作戦。

見事に手の平の上で転がされてしまったな。


【あらすじ】

飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオをいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現れた。

こちら↑は、背表紙参照。

実際に読んでみたら、

背表紙の文言と印象が違った。

まず、マサオは内向的な子供で、そのマサオなりの心情描写が細かく書かれていた。「違う!と言いたくても僕は先生を前にすると言えなくなってしまう。先生が間違ってるんじゃないかな?と考えたけど、先生と言う生き物は、間違いを起こさないのだ、と思い込んでいたから、言い返すことができなかった」とか、そんな風に、弱い子側の心の声がメインに話が進む。せつなささえ感じさせた

また、マサオはとても純粋で寛容な子供だった。自分をいじめる友達に対しても「彼は優しい人だって僕は知ってる。彼も不安から逃げるためにこんな行動をしているんだろう」そう考えて、友達や先生に対して怒らず、大人顔負けの洞察力を持っていた。そしてマサオの巡らせた考えは的確だった。

「いじめ」と言っても殴ったり蹴ったり暴力的なものじゃなくて、自分の立場が悪くなると「マサオくんのせいでした」「マサオくんは本当に駄目だな」と話題にして皆が笑う。そうすることでクラスが平和になる。これを本文では「江戸時代、農民よりも低い身分(えた ひにん)を作ることによって農民の不満を下に向ける。そうして民衆を支配した」それと同じだと表現されていた。なるほど、と思わされた。いじめの本質はそこなのかなーと考えさせられた。

物語の後半、自分が『クラスの最下層』であることを受け入れ、我慢していたマサオだけれど、夏休みに入り、心に限界が訪れた。

ここで起きた出来事は

あえて伏せておこうかな。

気になる人は読んでみてね。

そしてマサオがヤバイ感じになって、これはバッドエンドかなーなんて思っていたら、最後にマサオは、いじめていた皆を許す。逆転、ハッピーエンドかーて思っていたら、新学期に入り羽田先生に代わる新任教師が現れた。この流れは、もしや、過ちは繰り返される的なバッドエンドなのでは!?とか妄想した。しかし違った。優等生タイプで周囲から人気者の羽田先生はその人気を守るためにマサオをいじめた経緯があった。一方、不器用タイプの新任教師は羽田先生ほどの人気は無いが一生懸命な人だった。マサオは不思議に思って「先生は、まわりの人の評価が怖くないんですか?」と、質問した。誠に失礼な質問だが子供だからしかたない(笑)先生は考えてから照れくさそうに言った。「頑張ってる結果がこれなんだから、しょうがないでしょ」胸に残る言葉だった

【私の感想】

いま気付いたのだけれど、ラストの新任教師に名前は無い。これは『羽田先生』との対比が目的の登場人物だから、存在感を出さないために、あえて名前を付けなかったんだなーと思い至った。乙一さんサスガ!と思った。

勝手ながら、是非お子様の夏休み読書にいかがですか?とか思える本だった。エグい言葉は最小限で、それでも『いじめる側』『いじめられる側』の心理が明確。それでいて『相手を許す心』を主人公が体現してくれている。

もちろん大人の社会でも類似ケースがある話だからこそ、大人が手に取る文庫本として書店に並ぶのだろう。最後マサオの言葉「まわりの人の評価が怖くないんですか?」に対する「頑張ってる結果がこれなんだから、しょうがないでしょ」これには賛否あるかもしれない。甘ったるいと思う人も居るかもしれない。もちろん日頃から諦めるのは良くない。きっとこの言葉は誰にでも使える切り札ワードなんだと思う。心が疲れたときにつぶやいたらいいんじゃないかなと思う。

↓乙一作品参考過去記事:箱庭図書館↓
↑乙一作品参考過去記事:箱庭図書館↑