家族の手引き | new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~

家族の手引き

わしが休みの日に外に出かける時は、妻か娘に手引きをしてもらっている。
会社に通勤する時や、どうしても単独で外出せねばならない時は白杖ついて歩行する。
大阪の日本ライトハウスでみっちり白杖での歩行訓練を受けているのでそれほど心配はしていない。
けんど家族と一緒でいろいろな場所に行く時には妻の運転する車で移動し手引きをしてもらうのである。
 
10年前くらいから本格的に視力、視野とも衰え始めた時にはなかなかこの手引きをしてもらうことができなかった。
というかこの手引きなるものを知らなかった。
8年前に日本ライトハウスのリハビリを受けるための面接に大阪に行った時も単独で行った。
その日の広島まで帰るために新大阪駅まで行く時に始めてライトハウスの指導員に手引きをしてもらった。
それまでは恐る恐る白杖なしで歩いていたのとは違い、何と楽なことか。
1年間泊り込みでリハビリ受けて単独での白杖歩行ができるようになり、ここ姫路に引っ越してきて、会社の通勤には白杖使うが休みの日には自然と家族の手引きをしてもらえるようになった。

わしは楽じゃが、手引きする家族はそれをどう思っているんじゃろうかなぁ?
わし自身、周りの様子は見えないのでええが他の人から見るとええおっさんが妻か娘の右ひじつかんで歩いているんだから視覚障害者の手引きを知らない人は変に思うじゃろうなぁ?
一見してわしは見えない人とは思えぬ風なんで、妙になれなれしいおっさんじゃと思うじゃろうなぁ?
今では家族もそんなこと思わなくなったじゃろうが最初はいやじゃったろうなぁ?

まあ、そんなこと考えてもしゃあないんで車から降りると妻が
「お父さん、こっちよ。」
とわしの左手をポンと叩き右ひじを突き出している。
そしてわしはその右ひじをつかんで二人でさっそうと歩いていく。
これからもずっとそうするじゃろうなぁ。
妻よ、娘よ、そしてお兄ちゃん、これからもよろしくね。