6年目の春 | new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~

6年目の春

 眼ん玉を悪くして、職場復帰のためにここ姫路に転居してきて、まる5年が過ぎ、この4月から6年目を迎えた。
 見え方は、来た当時からそれほど変わっていないようだが、依然としてお城の下の公園の桜は見えない。
 妻にお願いして垂れ下がっている枝に咲く花を触ってクンクンするしか、桜の花を感じることはできない。

 仕事の上でも、どうにか自分の守備範囲を確保してはいるが、最近、緊張感が薄れているのか、ちょっとしたミスを連発している。
 いけん、いけん、これではいけません。
 気を緩めていては、この5年間に築いてきた信用を一瞬のうちに失くしてしまいそうです。
 
 風の噂では、わしの眼の病気に効く、網膜を再生する特効薬が見つかりそうだとかないとか。
 一瞬でもええから、もう一度、家族の顔と桜の花びらを見てみたいと思うのでした。