道路工事 | new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~

道路工事

 会社への通勤路、また道路工事が始まった。
 歩道側面の排水を整備するためのものらしく、交差点付近や横断歩道の端が、バリカで囲まれている。
 同じ場所が工事されているのならまだしも、日々状況が違っている。

 今日も会社からの帰り道、朝まではなかった場所にバリカが立っていたらしい。
 白杖カンカン横断歩道を渡ろうとすると、
「あーー、危ない、工事しとるよ。」
と後ろでおばちゃんの声がした。
「ありゃ、ここは、また通れんようになったんですか?」
とバリカが経っていると思われる場所を白杖で突っついていると、
「ダメダメー!そこは通れんって。左、左。危ない危ない。早く渡らんとだめじゃない。」
とすごい剣幕である。

 わしとしては、白杖でバリカの場所を探っているだけで、少しは見えているのでそんなに危険は感じていなかったんじゃけどねぇ。
「どうもどうも。」
とさりげなく挨拶をしてそこを通り過ぎた。
「あそこまでうるさく言わんでええのにのぉ。」
とブツブツつぶやきながら、いつも通る道を進んでいると、次の交差点に差し掛かったところで、
「あーー、そこも危ない。前の車、止まってあげてぇーー。」
と、こりゃまた後ろで金切り声が聞こえた。
 どうやらわしの後をこっそりつけて用心していてくれたらしい。

「わしのブツブツのつぶやきは聞こえなかったかしらん。」
と思いつつ、家路を急いだのでした。
 おばちゃん、お疲れさん。