ボタン付け | new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~

ボタン付け

 ある日のできごと。
 わしと妻が買い物から戻ると、学校から帰ってきていた娘が、開口一番、
「スカートの腰の部分の止めボタンが取れたんよ。付けてくれない?」
と妻に頼んでいた。
 わしはてっきり、
「ええよ、すぐに付けてあげるからね。」
と了解するものと思っていたが、違うんですねぇ。

「何のために学校の裁縫の時間にボタン付け習ったの?自分でまずはやってみんさい。わからんところは教えてあげるから。それで、どうしてもできんかったら、お母さんがやってあげるわ。」
との返答であった。
 妻は5人兄弟の仲の一人娘で、実家が農家であったこともあり、小学校の頃から、台所に立ち、料理・洗濯など家事仕事をまかされていたらしい。
 それで、娘にも一人で何でもできるようにと、心を鬼にして、まずは自分でボタン付けをやらせようとしているらしい。
 
 最初は、
「えーー、できるかなぁ?お父さん手伝ってぇ。」
と、半分鳴きそうになりながらも、しまいこんでいた裁縫道具を取り出し、針に糸を通して、授業で習ったことを思い出しながら付け始めた。
 少し時間はかかったものの、途中からは結構楽しみながら付け終わり、
「やったぁ。できたできた。結構しっかり縫い付けられた。」
とニコニコしながらわしと妻に見せていた。

 やればできるんですねぇ。
 そう言えば、家事仕事に関しては器用な妻の血を受け継いでいるのか、以前、カレーを作ろうとした時に、料理で野菜の皮をむいてサイコロ状に切り分けるのも、上手にやってのけていた。
 娘よ、お母さんを見習って、料理上手な母となるんじゃよ!