タタキ | new暴れん坊商人~視覚障害者の呟き~

タタキ

 昨日の夕食での出来事。
 会社から帰って来て台所のテーブルの上を見ると、見え難い目ながら、白い大きな平皿に黒い物体が盛り付けられていた。
「今日のおかずはなんじゃろう?」
と、詳細は見えないので、匂いをクンクン嗅いでみた。
 何かすっぱい匂い、そう、味ポンの香りである。
 そこで、妻に聞いてみた。
「今日のおかずは、タタキじゃね?」
 すると、
「そうよ。」
と答えが返ってきた。
「結構、一杯あるんじゃね。」
「そうねぇ?一杯といえば一杯じゃけど、野菜も一緒に盛り付けているから、一緒に食べてね。」
とのお言葉であった。
 
 家族4人が揃い、
「いただきまーーす。」
と食べ始める。
 わしは、よく見えんので、小皿にそのタタキを装ってもらう。
 そして、箸で口の中へ、ポイと入れる。
「ありゃ?こりゃちょっとムニャムニャとやわらかいなぁ?それになぜかしら魚の味がせんのぉ?」
 
 そう、わしはタタキと聞いて、「カツオのタタキ」を想像していたのだが、実際は、「牛肉のタタキ」であったのである。
 けんど、なんで「タタキ」って言うんじゃろうか?
 牛肉にしろカツオにしろ、軽くあぶっているものの、決して叩いてはいないんじゃけど。

 そういえば、大阪のリハ施設にいた頃、視覚障害者だけで、忘年会と称して鍋を食いに行った。
 みんなぼんやりと見えてはいるものの、鍋の中の食材を箸の間隔でつまんでも、口の中に含むまで、それが肉なのか?エノキなのか?白菜なのか判らないのである。
 さらにそれが肉であっても煮えているのか?生煮えなのかはわからないのである。
 
 やっぱし、目が見えんと、食べ始める前の心積もりも違ってくるんですよねぇ。
 困ったもんです。