11月11日

ポッキーの日。

朝から娘がうるさい

「今日はポッキーの日やな」

1が揃った位で何がポッキーの日だ。

んじゃ
11時11分はポッキーtimeか。
ふっつーに
「あ。11時11分やなぁ。すっげ1が揃ってる」
位にしか思わんだろう。

「ポッキー食べなあかんなぁ」

娘の瞳は期待で輝いている。

ポッキーごときここまで輝ける彼女が
心底羨ましい。
ピュアだ………。

「別に食べなあかんってことはないんやで」

てなことを話ながら娘は学校へ………
私は仕事にむかう

夕方
買い物を終え帰宅すると
娘が帰ってきて

「ポッキー買ってきた?」

と買い物袋を覗きこむ。

「あ………忘れた」

そないに?という位に落ち込む娘。
ポッキーのどこにそこまで感情を揺さぶるカリスマがあるのか………。

冷蔵庫に買った商品を詰め込む。

「………ん?」

冷蔵庫のちっさい引き出しの奥の奥
なにか箱のような物が見える

「こんなの入れてたっけ?」

と取り出すと

ポッキー極細がいた

「………奇跡や………ポッキーの日にポッキーを偶然冷蔵庫で見つけてしもた!すっげ!娘!ポッキーあった!」

「おぉ!!!奇跡!やば!」

「よし!この奇跡に感謝して食うぞ!ありがとう!ポッキー神!ポッキーの日万歳!」

箱に指をかけた瞬間

冷静になった………

そういえば
家には
もう一人娘がいる。

そう
興味なさげに振る舞いながら
メチャクチャ流行りに乗っかりたがる
JKの娘が………

さては………
このポッキーは奴が隠していたのか………

「これ食べたらお姉ちゃんが怒るわ絶対………やめとこ」 

そっと
極細を元の場所に戻した

そう………奇跡なんておこらない

ポッキーの日とか言いながら
身に覚えのないポッキーがふと冷蔵庫に鎮座しているような奇跡なんて

あるわけがないのだ。

ポッキーの日といえど普段と
何ら変わらない1日

せいぜい
ポッキーを両手に、うろ覚えのポッキーダンスをして、うへへと照れ笑いを浮かべながら
ポキッと食べるくらいの日

ただそれだけだ


JK娘が帰ってきた

開口一番

「ポッキーは?!」

食べなくて良かった

マジでさ。