財団法人経済広報センター主催の米国シンクタンク研究者との朝食会に参加しました。「世界の構造変化と日米の新たな役割」との大きなテーマで、1時間半にわたり意見交換をさせていただきました。米国側の研究者は外交、国際政治などの専門家3名、日本側は私と岸信夫議員の2名でした。


伊藤達也ブログ

私からは、以下のような問題意識をお話ししました。


政策は理念が重要だが、現実の前に政策の優先順位をつけることが重要。


景気対策と財政再建をめぐり、市場原理主義批判や大きな政府と小さい政府の二項対立に持ち込み、リアリティを直視しない風潮に危機意識を持つ。このような不毛な議論を続けると政治は機能しない。


経済・財政政策に関して、私は成長あっての財政再建が原則であり、経済成長なくしての財政再建はありえないと考える。景気対策と成長戦略が最優先課題だ。ただし、無駄の削減や政府資産の圧縮などの財政固有の問題もあるので、歳出改革も実行しなければいけない。また、人口減少社会にふさわしい社会保障制度を再設計し、給付と負担の国民合意を目指す。最近話題となった消費税もこうした一体的な改革の中で位置づける問題だと思う。


こうした考えは、小泉政権末期に経済財政一体改革として党主導で取りまとめた。その考えの基礎となったのは、私が政調会長補佐として起案した日本版上げ潮戦略だった。これは政府の「経済財政運営の基本方針(骨太2006)」として2011年までの5年間の経済財政運営の枠組みとなったが、ちょうど折り返し地点にあたる今、内外の環境が激変する中で「ポスト上げ潮戦略」の策定が求められているのだと考えている。


最優先課題は、景気対策だ。専門家からのレクチャーがあったと思うが、わが国の景気はつるべ落としの状況だ。昨年10-12月の経済成長率は前期比年率で二桁のマイナスになった模様だ。輸出企業がいっせいに減産を行い、雇用調整を進めている。消費者心理の悪化は進み、金融面でも信用収縮が進みつつある。


政府の来年度の成長見通しは0.0%程度としているが、おそらく▲2%程度を大きく上回る落ち込みになると思われる。需要不足はおそらくGDPで▲8~▲9%に達するのではないか。デフレと失業の悪循環が予想されるなかでは財政出動は不可避だ。まずは、政府の経済認識を正す必要がある。


オバマ大統領はGDPギャップを約1兆ドルと見積もり、8250億ドルの経済対策を発表した。わが国の場合も、40兆から45兆程度の追加対策を覚悟しなければならない。


もちろん、短期には雇用対策を意識するが、中長期での経済成長を誘発し、将来世代にとって必要な制度やインフラの整備のために金を使うべきだ。地球環境問題への取り組み、地震対策、少子化・人口減少時代にふさわしいインフラ投資、減税などの組み合わせが必要となる。


中長期的な成長戦略の改定も必要だ。今日的には、環境立国戦略を強化すべきだ。
同時に、個人的には働き方の多様性とセーフティーネットの強化や能力開発、ワークシェアリングなどの労働市場改革に手をつける必要があると考えている。


第二に社会保障の抜本的改革。首相補佐官として制度改革を担う社会保障国民会議を担当した。最終報告では社会保障の機能強化が必要だという提言をまとめた。少子高齢化が急速に進む我が国で、現在の社会保障のレベルを維持し続けるためだけでも、2025年に143兆円の負担が必要になる。現状の非効率な制度のムリ・ムラ・ムダを温存したままでは、予算をいくらつけても足りない。構造的な問題にまで踏み込んで、効率的で効果的な社会保障の仕組みを再構築しなければならない。この議論は野党とも協力をして接点を見つけ出していく努力が必要だ。


第三に国家経営のあり方を変える。国と地方で社会保障にかかる予算とほぼ同じ予算を公務員人件費に充てている。ここに大きな歳出改革の余地がある。公務員の評価に成果主義の導入や労働三権の付与を条件に人件費改革に踏み切るべきだ。地方主権をすすめて、米国のようにどの地域からでも成長が可能な社会に作りかえる。そのためには、基礎自治体の強化、道州制の導入、中央省庁再々編と官邸の機能強化をセットにして、国のあり方を変えていきたい。