出口王仁三郎著
「霊界物語」
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不思議に堪(タ)へずして、自分は金色燦爛(キンシヨクサンラン)たる珍玉(チンギョク)の明光(メイコウ)を拝して、
何となく力強く感じられ、眺めてゐた。次第々々に玉は大きくなるとともに、
水晶のごとくに澄みきり、たちまち美はしき女神の御姿と変化した。
全身金色にして仏祖(ブッソ)のいはゆる、紫摩黄金(シマオウゴン)の肌で、
その上に玲瓏(レイロウ)透明にましまし、白の衣裳(イショウ)と、
下は緋(ヒ)の袴(ハカマ)を穿(ウガ)ちたまふ、愛情あふるるばかりの女神であつた。
女神は、自分の手をとり笑(エミ)を含んで、
『われは大便所(カハヤ)の神なり。汝(ナンヂ)に之(コレ)を捧(ササ)げむ』
と言下に御懐中(ミフトコロ)より、
八寸ばかりの比礼(ヒレ)を自分の左手(ユンデ)に握らせたまひ、再会を約して、
また元のごとく金色の玉となりて中空に舞ひ上り、電光石火のごとく、
九重(ココノエ)の雲深く天上に帰らせたまうた。
その当時は、いかなる神様なるや、また自分にたいして何ゆゑに、かくのごとき珍宝(チンポウ)を、かかる寂寥(セキレウ)の境域(キョウイキ)に降りて、
授けたまひしやが疑問であつた。
しかし参綾(サンレウ)後はじめて氷解(ヒョウカイ)ができた。
教祖の御話に、
『金勝要神(キンカツカネノカミ)は、全身黄金色であつて、
大便所(カハヤ)に永年のあひだ落され、
苦労艱難の修行を積んだ大地の金神様(コンジンサマ)である。
その修業が積んで、今度は世に出て、
結構な御用を遊ばすやうになりたのであるから、
人間は大便所(カハヤ)の掃除(サウヂ)から、
歓(ヨロコ)んで致すやうな精神にならぬと、誠の神の御用はできぬ。
それに今の人民さんは、高い処へ上つて、高い役をしたがるが、神の御用をいたすものは、汚穢所(キタナイトコロ)を、
美しくするのを楽んで致すものでないと、
三千世界の大洗濯、大掃除の御用は、到底勤め上りませぬ』
との御言葉(ミコトバ)を承(ウケタマ)はり、かつ神諭の何処(イヅコ)にも記されたるを拝して、
奇異(キイ)の感に打たれ、神界の深遠微妙(シンエンビミョウ)なる御経綸(ゴケイリン)に驚いた。
女神に別れ、ただ一人、太陽も月も星も見えぬ山野を深く進みゆく。
山深く分け入る吾は日も月も/星さへも見ぬ狼の声
冷たい途(ミチ)の傍(カタハラ)に沼とも、
池とも知れぬ汚い水溜(ミヅタマ)りがあつて、
その水に美しい三十才余りの青年が陥り、諸々の虫に集られ、
顔はそのままであるが首から下は全部蚯蚓(ミミズ)になつてしまひ、見るまに顔までがすつかり数万の蛆虫(ウジムシ)になつてしまつた。
私は思はず、
「天照大神(アマテラスオホカミ)、産土神(ウブスナノカミ)、惟神霊幸倍坐世(カムナガラタマチハヘマセ)」
と二回ばかり繰返した。
不思議にも元の美しい青年になつて、その水溜りから這(ハ)ひ上り、嬉しさうな顔して礼を述べた。その青年の語るところによると、
『竜女(リユウヂヨ)を犯した祖先の罪によつて、
自分もまた悪い後継者となつて竜女を犯しました。
その罪によつて、かういふ苦しみを受くることになつたのでありますが、今、あなたの神文(シンモン)を聞いて忽(タチマ)ちこの通りに助かりました』
といつて感謝する。
それから自分は、天照大神の御神号(ゴシンゴウ)を一心不乱に唱へつつ前進した。
月もなく、烏もなく、霜(シモ)は天地に充ち、寒さ酷しく膚(ハダヘ)を断るごとく、
手も足も棒のやうになり息も凍(コゴ)らむとする時、
またもや「天照大御神、惟神霊幸倍坐世」と口唱し奉(マツ)つた。
不思議にも霊の神力(シンリキ)著(イチジル)しく、たちまち全身に暖を覚え、手も足も湯に入りしごとくなつた
アゝ地獄で神とは、このことであると、感謝の涙は滝と流るるばかりであつた。
四五十丁も辿り行くと、そこに一つの断崕(ダンガイ)に衝(ツ)き当る。
止むをえず、引き返さむとすれば鋭利(エイリ)なる槍(ヤリ)の尖(サキ)が、近く五六寸の処にきてゐる。
この上は神に任し奉らむと決意して、氷に足をすべらせつつ右手を見れば、深き谷川があつて激潭飛沫(ゲキタンヒマツ)、流声(リュウセイ)物(モノ)すごき中に、名も知れぬ見た事もなき恐ろしき動物が、川へ落ちたる旅人を口にくはへて、谷川の流れに浮いたり、沈んだり、旅人は「助けて助けて」と、一点張に叫んでゐる。
自分は、ふたたび神号を奉唱すると、旅人をくはへてゐた怪物の姿は沫と消えてしまつた。
助かつた旅人の名は舟木といふ。
彼は喜んで自分の後に跟いてきた。一人の道連れを得て、幾分か心は丈夫になつてきた。
危き断崕を辛うじて五六十丁ばかり進むと、途が無くなつた。薄暗い途を行く二人は、ここに停立して思案にくれてゐた。
さうすると何処ともなく大声で、
『ソレ彼ら二人を、免がすな』
と呼ぶ。
にはかに騒々しき物音しきりに聞え来たり、口の巨大なる怪物が幾百ともなく、二人の方へ向つて襲ひくる様子である。
二人は進退これ谷まり、いかがはせむと狼狽の体であつた。
何ほど神号を唱へても、少しも退却せずますます迫つてくる。
今まで怪物と思つたのが、不思議にもその面部だけは人間になつてしまつた。
その中で巨魁(キョカイ)らしき魔物は、たちまち長剣(チョウケン)を揮(フル)つて両人に迫りきたり、今や斬り殺されむとする刹那に、白衣金膚(ビャクイキンプ)の女神が、ふたたびその場に光りとともに現はれた。
そして、「比礼(ヒレ)を振らせたまへ」と言つて姿は忽ち消えてしまつた。懐中より神器の比礼を出すや否や、上下左右に祓つた。
怪物はおひおひと遠く退却する。
ヤレ嬉しやと思ふまもなく、忽然として大蛇が現はれ、巨口を開いて両人を呑んでしまつた。
両人は大蛇の腹の中を探り探り進んで行く。
今まで寒さに困つてゐた肉体は、どこともなく、暖い湯に浴したやうな心持であつた。
轟然(ゴウゼン)たる音響とともに幾百千丈ともわからぬ、奈落の底へ落ちゆくのであつた。
ふと気がつけば幾千丈とも知れぬ、高い滝の下に両人は身を横たへてゐた。
自分の周囲は氷の柱が、幾万本とも知れぬほど立つてをる。
両人は、この高い瀑布(バクフ)から、地底へ急転直落したことを覚つた。一寸でも、一分でも身動きすれば、冷きつた氷の剣で身を破る。起きるにも起きられず、同伴の舟木を見ると、魚を串に刺したやうに、長い鋭い氷剣に胴のあたりを貫かれ、非常に苦しんでゐる。
自分は満身の力をこめて、「アマテラスオホミカミサマ」と、一言づつ切れ切れに、やうやくにして唱へ奉つた。
神徳たちまち現はれ、自分も舟木も身体自由になつてきた。
今までの瀑布は、どこともなく、消え失せて、ただ茫々(ボウボウ)たる雪の原野と化してゐた。
雪の中に、幾百人とも分らぬほど人間の手や足や頭の一部が出てゐる。
自分の頭の上から、にはかに山岳も崩るるばかりの響がして、雪塊が落下し来り、自分の全身を埋めてしまふ。
にはかに比礼を振らうとしたが、容易に手がいふことをきかぬ。
丁度鉄でこしらへた手のやうになつた。
一生懸命に「惟神霊幸倍坐世」を漸く一言づつ唱へた。幸に自分の身体は自由が利くやうになつた。
四辺を見れば、舟木の全身が、また雪に埋められ、頭髪だけが現はれてゐる。
その上を比礼をもつて二三回左右左と振りまはすと、舟木は苦しさうな顔をして、雪中から全身をあらはした。
天の一方より、またまた金色の光現はれて二人の身辺を照した。
原野の雪は、見渡すかぎり、一度にパツト消えて、短い雑草の原と変つた。
あまたの人々は満面笑を含んで自分の前にひれ伏し、救主(スクイヌシ)の出現と一斉に感謝の意を表し、今後は救主とともに、三千世界の神業に参加奉仕せむことを希望する人々も沢山あつた。
その中には実業家もあれば、教育家もあり、医者や、学者も、沢山に混つてをつた。
以上は、水獄(スイゴク)の中にて第一番の処であつた。
第二段、第三段となると、こんな軽々しき苦痛ではなかつたのである。
自分は、今この時のことを思ひだすと、慄然(リツゼン)として肌に粟(アワ)を生ずる次第である。
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