星新一気まぐれレビュー32
~星新一ショートショート16~
本編の前に我が家のプチネタ。
今日のお題は「ももたの旅アルバム18」。
ここはどこでしょう?
ちょっと荒々しい感じの波が寄せている海岸であることは分かりますね。
まあ、それ以上はよく分からんと思うのでヒントの写真を付けます。
空撮です。
日本地図をよく見たりして、海岸線のかたちなんかがよく頭にはいってる人なんかは「ああ、あそこかな?」となると思うんですが…。
波がザッパーンという感じ
ももたが不安げ
上が北、下が南です
(撮影これこれ様)
正解は「室戸岬」でした。
どれくらいの人が分かったんだろう?
ヒントはほかにも灯台とか、お遍路さんとか、若い弘法大師像とか、中岡慎太郎像とかいろいろ考えていました。
どれが最適解だったのかは分からん。
閑話休題。
2007~2009年にNHK総合で放送された「星新一ショートショート」という番組から50話を選んで編集・DVD化したものを視聴しましたので、その感想を書いていきたいと思います。
実際の放送分は見ていないので、編集が加えられる前の元のかたちはどうあれ、視聴した限りの内容でレビューを書いていきたいと思います。
あとネタバレ有です。ご注意ください。
あしからず。
今日は第16回目です。
取り上げるのは次の3作品。
「アフターサービス」(『妖精配給会社』)
「欲望の城」(『ボッコちゃん』)
「よごれている本」(『ボッコちゃん』)
それではそれでは……。
「アフターサービス」
ある日。
ある画家のもとを一人のセールスマンが訪ねて来た。
「何か悩み事はございませんか?」
「悩みなどない」
画家はドアを閉めようとした。
「素晴らしい発毛剤をお持ちしたのですが?」
「発毛剤!」
画家は閉じかけていたドアを開き、話に乗って来た。
「しかし…見たこともない製品だ…」
「当社は毛髪というタネを皮膚という畑にまくという原理で特許を取りました」
「これがその毛髪のタネというわけだな?あるいは効くかもしれない。買うことにするか」
「お買い上げありがとうございます。では、一週間後にアフターサービスに参ります」
一週間が経った。
「ごめんくださいませ、いかがでしょうか?」
頭のてっぺんから緑の草を生やしている画家が出て来た。
「すばらしい!夢のようだ!驚異的な効果!科学の勝利!」
「ご満足いただけてほっとしました」
「しかし緑色をしている」
「何しろ植物性ですから。…もっともこれを黒く染める専用の薬品がありますが、いささか高価ですのでぇ…」
「かまわん!売ってくれ!」
「ありがとうございます。ではまた一週間後にアフターサービスに参ります」
一週間が経った。
「ごめんくださいませ、いかがでしょうか?」
髪をジョン・レノンのように伸ばした画家が出て来た。
「すばらしい!夢のようだ!驚異的な効果!科学の勝利!」
「ご満足いただけてほっとしました」
「しかしもうこんなに伸びてしまった。この調子だと床屋に通わなければならないなぁ」
「植物性ですので…。しかし当社はお客様本位、ご負担はおかけしません。当社で製作いたしました自動理髪機です!」
「それを買おう!」
そしてまた一週間が経った…。
鉛筆画のような、白黒のアニメーション作品。一部緑色がついている。
上から想像できるように、セールスマンによるねらい通りの波状攻撃によって画家の男がまんまとハメられていく様子が描かれている。
原作と比べると細かな会話の内容が削ぎ落されているが、逆にそれがテンポのよさを生んでいる感じもする。
まあ、矛盾点や不明な点などを絶えず探しながら会話を細かく聞き取る…なんていう見方をしているのでない限り大丈夫なレベルだと思う。
アニメ化の成功例じゃないかな。
最後の締めにセールスマンににゃっと下卑た笑いをさせたところなど、アニメならでは。
髪がぼさぼさに伸びた
当社の自動理髪機でございます
「欲望の城」
勤務先に向かう途中のバス停。
そこに、なぜか私の注意を引く一人の男がいた。
話しかけてみた。
「よくご一緒になりますね」
「ええ」
彼は愛想よく答えてくれた。
「おつとめですか?」
「小さな会社に勤めています。給料も安いし、つまらない毎日ですよ」
「でも、いつも楽しそうなお顔をしているではありませんか?」
「夢のせいかもしれません」
「ゆめ?」
「毎晩同じ夢を見るようになったのです。手頃な大きさの部屋の中に私だけがいる夢。外とは完全にかけ離れ、誰もはいってこられない。心休まる部屋です」
「自分一人の城が持ちたい。夢の中でその願いが満たされているわけですねぇ」
「そのうち家具もそろえました。これまで買えなかったすばらしい机と柔らかい椅子。今ではシャンデリアや衣装ダンスなどがそろっています」
私は事情を知って、その男がうらやましくなった。
…それからは顔を合わせるたびに男の方から得意げに話しかけて来た。
「例の部屋にいい彫刻を置きましたよ。家具の並べ替えにはちょっと苦労しますけどね」
彼が欲しいと感じた物は夢の中にすべて現れて来るらしい。
やがて…。
実写ドラマ。ディレクターズカットとなってるので一部カットされてるらしい。
原作では私が男に話しかけたのはバスの中なのだが、このドラマでは一体どこの田舎の話だっていうような、枯れすすきの原の中のさびれたバス停になっていて、お地蔵様なんかも建てられている。
なんでこういうシチュエーションになった?
違和感はすごくするのだが、それはまあいいとしよう。
台本のミスをひとつ。
私がその男を見たときの印象を言うモノローグで、「だが、ほかの乗客と比べるとどことなく違っていた」んだと!
バス停に二人っきりなんで、「ほかの乗客」なんかと比べようがないんですけど!
「ヒトの欲望には限りがない」というのが主題になってるショートショートであります。
この男が最後には一体どういう状態に陥るのか…まだ見てない人は想像してみてください。
男の夢の中
この頃は快適だった
最後の方の男
夢の部屋はどうなってるかな
「よごれている本」
男は古書店で魔法の本を手に入れた。
店主が言う。
「わたしには読めませんが、どうも珍しいモノには違いありません」
「どうせ馬鹿馬鹿しい内容だろう。ほかにもこのような本があるのかい?」
「いいえ。実を言いますと、しばらく前に古道具屋が置いていったモノなのです。詳しくはわかりませんが、魔法の本となると儲けものではありませんか」
「大体魔法というモノがあるかどうか疑わしい。いずれにしろいい加減なモノに決まっている」
男は家に帰り、本に書いてあったことを試してみる気になった。
赤いひもで輪っかを作り、呪文を唱える。
「ラムラ、タムサ、ミン、カムラ…」
すると輪っかの中から紫の小さな雲のようなモノが浮かび出て来た。
「やはりこの本は本物だったのだな。おもしろいことになってきたぞ」
やがて悪魔は全身を現した。
「なるほど、これが悪魔かぁ」
悪魔は笑ったように見えた。
「おまえはこんなところに出て来て、一体何をするつもりなのだ?」
「わたしの現れたわけはですね(ごにょごにょごにょ)」
悪魔の言葉は途中から小さくなり、よく聞き取れなかった。
「なんだ?」
「現れたわけはですね(ごにょごにょごにょ)」
やっぱりよく聞き取れない。
私は少しずつ悪魔に近づいて行った。
そして…。
絵柄はごく普通のアニメーション作品。
普通によく出来たアニメ化。
文句をつけるようなところはない。
原作との違いは男が本を買ってから悪魔を呼び出すまでの手順、過程が大きく省略されていることぐらい。
説明的な部分なので、まあ省略されても仕方ないかな?
オチはたぶんあなたの想像されている通りだと思います。
魔法の本を手に入れた
ほんとに悪魔が現れた
今日はここまで。
次回で「星新一ショートショート」は終わりです。