昔話・童話パロディ11
~こち亀版「桃太郎」~
今回取り上げる作品
「大人のための残酷童話」 小説 倉橋由美子 新潮文庫 1998
「赤ずきんのほんとうのお話」 絵本 アニェーゼ・バルッツィ他 大日本絵画 2008
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」85巻 漫画 秋本治 ジャンプコミックス 1994
※ ネタバレ有です。ご注意ください。
「大人のための残酷童話」
自分としては4冊目の倉橋作品。これまでに読んでいたのは「人間のない神」「夢のなかの街」「倉橋由美子の怪奇掌編」。安部公房にはまっていた頃によく読んでいた覚えがある。寓話的な作風が好きだった。
26もの短編が収められている。量的にも満足。
「残酷童話」とある通り、作中人物はなんだかんだで死んだり殺されたりする。ヒロインにも情け容赦ない運命が待っている。救いようのないままに終わる話が多い。
それとは別に、原作とは異なって、ハッピーな解決をもって終わる話もある。「人魚の涙」「新浦島」「猿蟹戦争」などは、この終わり方のほうがいいという人もいそうだし、「白雪姫」では悪い継母も特に不幸になったりしない。
「異説かちかち山」では、狸に同情する派閥の人たち(結構たくさんいそうだ)が小躍りして喜んでくれそうだ。
本のところどころに、モノクロの木版画が印刷された厚紙のページが挿入され、ダークな雰囲気を盛り上げている。
各作品の最後には、イソップ寓話みたいに短い「教訓」が添えられ、オチのような役割を果たしている。
お気に入りは「一寸法師の恋」。純文学の女性作家さんなのに下ネタがどどーんとぶち込まれ、想像も出来ない結末を迎える。
さわやかな読後感とはいかないが、一種カクっと突き抜けたような感じを受ける。☆は3の上で。
「赤ずきんのほんとうのお話」
題名通り赤ずきんのパロディ絵本。
仕掛け絵本になっている。ほとんどはめくり仕掛けである。
見開きページにはそれぞれなんらかの仕掛けがついていて、うんなるほどと納得したり、くすっと笑ったりさせられて、特にドラマチックな訳でもないストーリーを十分に盛り上げている。
森で有名になったオオカミにアンデルセンがインタビューするシーンなんかがおもしろかったです。
こういうパロディ仕掛け絵本、もっといろいろ出ないかな。☆は4。
「新説桃太郎!の巻」
(「こち亀」85巻所収)
ご存知「こち亀」の中の1話。1話だけなのだが私的にすごいインパクトなので、あえて紹介させていただく。
昔話の中の「子どもだまし」的なところをぐさぐさ突いていて、なんとも小気味いい。
「少年1人、日本犬1匹、日本猿1匹、雉1羽で鬼の本拠地に乗り込み、一体どうしようというのか?」という「桃太郎」の話の最大の難問題を一刀のもとにズバっと切り捨てちゃってくれている。
「七人の侍」でさえ、達人を含む7人のサムライが、40人の野武士を相手に村を守ろうとして、4人まで命を落とすことになるんだからなあ。
両さんに「桃太郎」以外の絵本のパロディも考えてもらいたい。「番外編」ということでなんとかならないかな?ならないだろうなぁ~。
何度見てもおもしろいのだが、初見の人はしっかり笑えると思います。1話だけの評価なんで、☆は3。
今回はここまで。続きは次回のupで。