漂流・サバイバル06

~少女と少年と海の物語~

 

 

 

今回取り上げる作品

 

「ゴスロリJK無人島漂流記」 漫画 青田めい まんがタイムKRコミックス 2017

「無人島漂着100日日記」 絵本 gozz KADOKAWA 2021

「ひとりぼっちの不時着」 ジュブナイル ゲイリー・ポールセン くもん出版 1994

「世界のはての少年」 小説 ジェラルディン・マコックラン 東京創元社 2019

「少女と少年と海の物語」 小説 クリス・ヴィック 東京創元社 2019

「クソみたいな理由で無人島に遭難したら人生が変わった件」 小説 すずの木くろ 小学館文庫 2021

「そんなに仲良くない小学生4人は謎の島を脱出できるのか⁉」 ジュブナイル そのさなえ 小学館ジュニア文庫 2021

※ ネタバレ有です。ご注意ください。

 

 

 

「ゴスロリJK無人島漂流記」

 

 船が難破したらしいので無人島に漂着したJKたちの物語。

 

 無人島ではあるのだが、人っぽいヤギの「んみちゃん」やケサランパサランみたいな怪物?の「ぺむぺむ」がいる。

 

 これもう漂流しました設定いらなくね?どこか人里離れた場所を求めてふら~っと遊びに来ました…くらいのことでよくね?……とまで思われる、ゆるふわに過ぎる内容。

 

 最後、謎の生物「ぺむぺむ」に乗って島を脱出した……と思ったら、なんとなく日本に着いてました。

 

 「漂流・サバイバル」ものとしてはオススメできないです。☆2つ。

 

 

 

 

 

「無人島漂着100日日記」

 

 箱庭絵と短い日記文で綴られた絵本。

 

 船が遭難し、漂着したところは、大きな怪物をはじめ変な生き物たちが住む謎の無人島だった……。

 

 はっきりとした輪郭線で描き込まれた箱庭絵には、いろんな遊びがあったり、次のストーリー展開につながるヒントが隠されていたりする。細部までじっくりと眺めるようにしたい。

 

 トラブルが起こったときには日記の記述は止まり(当然かな)、絵のみのページとなる。読者は「えっ、どうなったの?」と思いながら、絵に見入ることになる。

 

 ありそうでなかった試みだと思う。今度は怪物は出ない感じでまた描いてほしい。☆は3の上。

 

 

 

 

「ひとりぼっちの不時着」

 

 乗っていた小型飛行機のパイロットが心臓発作を起こし、少年はカナダの山奥にたった一人で放り出されることになった……。持っているのは母からもらった手斧が一丁だけ。ごく普通の少年のサバイバル生活が始まる……。

 

 水は湖の水をそのまま飲む。食料は最初は木の実。次にカミツキガメの卵(生で食べる)。住居はいい具合に岩が大きくえぐられている場所を利用して。火は手斧を石に打ち付けたときの火花で……。

 

 普通の少年が、自然の中で生きる術を少しずつ身に付けていく様子がよく分かる。しだいにたくましくなっていくのが、とても頼もしく感じられる。

 

 生き抜くためには、自然の様子を細かく観察すること、五感をフル活用して注意深く見たり聞いたりすることがとても大切になってくる。失敗を重ねながら、少年は着実に大事なことを学んでいく。…過程がとてもすばらしい。

 

 救出後の話があっさりで、多少物足りなかった。☆は3の上。

 

 

 

 

「世界のはての少年」

 

 1727年、イギリス北部のヒルタ島で実際に起こったことを基にした物語。

 

 鳥を狩るために離れ小島に向かった少年9人と大人3人は、なぜかその島に取り残されることになった……。

 

 食料は当然ながら鳥。ほとんど木々も生えてない島なので、環境としては鳥島に似ている。だが、緯度がずうっと北なのでこちらの方が寒さがぐんと厳しくなる。

 

 水は雨水。火は「火口箱」がなくなってからは、ナイフを用いて火花で着火。住まいは自然の洞窟を利用。

 

 自分の好きなお気楽サバイバルではない。飢えや寒さ、嵐に苦しめられる。仲間同士で醜い争いも起こる。大けががある。仲間の死もある。凍傷にかかった足指を切断するところもある。狂気に侵されかけたりもする。実にハード。

 

 9か月後に少年たちは救助されるのだが、救助後もあまり救いがない(詳しくは書かないが)。ただ最後にどんでん返しがあり、読後感をイヤ~なものにせずにすんでいる。

 

 大人が十分頼りにならない中、主人公の少年の気丈さが頼もしすぎる。☆は3の上。

 

 

 

 

「少女と少年と海の物語」

 

 ヨットの訓練のため、ほかの6人の仲間と大人2人とで航海に出たイギリスの少年ビル。しかし嵐のために船は遭難。ビルは一人救命ボートで漂流することになってしまう……。

 

 漂流中、無人島でのサバイバル生活の様子が詳しく描かれる。お気楽サバイバルではなく、クスッとするようなところはない。

 

 食料は船にあった缶詰のほか、ウミガメ、魚貝類。水は太陽光による蒸留装置で。火はビン底をレンズのように使って太陽光で……。

 

 途中、同じように乗っていた船が難破して漂流していた、モロッコの少数民族の少女アーヤと出会い、二人は助け合って生きていく

 

 漂流中に一緒にいた(と思っていた)相棒が実は幻影だったという話がいくつかあるので、この謎めいた少女も実はビルの想像が生み出したものかも……と、物語の最後の方まで思っていた。

 

 ビルの救出後、ビルとアーヤは再会することができたのかどうか?ぜひ再会させてやりたいとは思うのだが、「少女と少年と海の物語」の真の結末は語られぬままがいいのだろう。

 

 最後の一文が心に刺さる!この本を読んでよかったなと思う。ふだんは軽薄ラブいちゃ、即席ハーレム王大好きではあるけれども、こういうのもいい!と思う。

 

 オススメです。☆4。

 

 

 

 

「クソみたいな理由で無人島に遭難したら人生が変わった件」

 

 題名長くてもおもしろいとは限らない。

 

 サラリーマンをしながらネットに自作の漫画を公開している主人公。取材旅行の名目で沖縄にやって来る。さっそく海で泳いでいると、波間に漂っている女性のビキニを発見。……したと思ったら大波に襲われて、気がついたらそこは無人島。その島には先に6人の男女が流れ着いていて……。

 

 食料はフジツボや魚。島でかつて栽培されていたらしいカボチャやサツマイモなど。水は雨やたまり水を煮沸消毒したもので。火はカメラのレンズを使って太陽光線で。

 

 石英質の岩で、ナイフや斧を手作り。魚網や針金、針なども見つけて利用。

 

 「クソみたいな理由で」7人の男女が、偶然に瞬時に一つの島に集められたことについて、この話の最後までなんの言及もない。それが気になる人は(全然気にならない人はいないだろうが)、この本の評価はぐっと下がると思う。

 

 「寿司が食べたい」と言うパパ活ギャル姫ちゃんの希望を叶えるため、カボチャの実をチネって米粒似のモノを作ろうとするところは、「よゐこの無人島0円生活」を彷彿とさせられた。

 

 お気楽サバイバル系なので、それはいいのだが、☆は3の下で。

 

 

 

 

「そんなに仲良くない小学生4人は謎の島を脱出できるのか⁉」

 

 題名長くてもおもしろいとは限らない。

 

 体験学習に向かう船の中、たまたま救命ボートに潜り込んだ4人の小学4年生は、間違ってボートを船から降ろしてしまい、嵐にもあってそのまま遭難してしまう。辿り着いた先は無人島らしき島。今まで親しくしたこともなかった彼らは、心を合わせてサバイバル生活をしていくことができるのか……。

 

 どちらかと言えばお気楽サバイバル。それなりにピンチは訪れるものの、いずれもそうたいしたことはなく、それぞれのもつ知識や体力等で問題なく乗り切れる。

 

 大きな謎も一応用意されてるのだが、都合よく事が運んで、大した苦労はせずにすむ。物足りなさはまああるのだが、読後感は悪くない。

 

 島にいたダチョウの描写に「額にはイモトアヤコ並みの真っ黒な太い眉を生やし」なんてのがある。これ、いいのか?いや、むしろおいしいのか?☆は3の下。

 

 

 今回はここまで。続きは次回のupで。

 

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