空想生物図鑑04

~鼻で歩く?驚異の鼻行類~

 
 
 

今回取り上げる作品

 
「鼻行類」 小説 ハラルト・シュテュンプケ 平凡社 1999
「ぞりん」 写真集 井口尊仁&石黒謙吾 扶桑社 2006
「ずぶろく園」 絵本 天王屋図夫六 BL出版 2003,2005
「ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の動物(植物)図鑑」 絵本 K・スギャーマ
絵本館 1991,1997
 
 
 

「鼻行類」

 

 ほとんど学術論文の体裁をしている。原著刊行は1961年。

 

 1941年、日本軍の捕虜収容所から脱走したスウェーデン人が漂着したのはハウアイアイ諸島。そこにはなんと「たくさんの鼻でゆったりと歩く」実に奇妙な動物の一群が生息していた!!!

 

 その20年後、核実験によってハウアイアイ諸島は消滅してしまい、超貴重な鼻行類もろとも地球上からきれいさっぱりなくなってしまった、という。

 

 この本の訳者の一人は、日高敏隆先生。

 

 鼻行類は様々な形態に分化していて、この本ではいろんなバリエーションの「ハナアルキ」を見ることができる。まあ「こびとづかん」のようなもので、あれよりも学問的という感じ。変な合成写真等は使わず、手描きの丁寧な図が添えられていて、本物らしさをよりアピールしている。

 

 お気に入りの鼻行類は、「ダンボハナアルキ」。名前の通りで、鼻で歩けるのはもちろん、大きな耳を使ってなんと後ろ向きに飛ぶことができる!?なんで後ろ向きに飛ぶのかという具体的な説明はほぼないのでよく分からないが、とにかくスゴイ。

 

 粘土で「ムカシハナアルキ」に似た感じのものを作ってみました。ものの数分ででっち上げた物なので、皆さんの理解の助けになるか分かりませんが、一応下に載せときます。

 

 現在の地球で、この鼻行類のような、常識を覆すような生き物が発見されるとしたら、まあ深海ぐらいでしょうなあ。☆は3の上。

 

 

 

 

 

「ぞりん」

 

 ミクシィに、いろんな動物とゾウとの合成写真を載せていたら、話題になってきたので一気に図鑑まで作っちゃいました……な本。これこそ「一点突破型」の典型的な例です。(「一点突破型」については、この旅読ブログの「昔話・童話パロディ03」の記事を見よ。)

 

 元々写真集と言ってもいいようなモノなのだが、図鑑らしきデータや解説部分がしっかりと付け足されている。繰り返すが写真のインパクトが強すぎる本なので、文章部分などはまるっと読み飛ばされてしまうかもしれない。それでもちゃんと図鑑のかたちを成しているところには好感がもてる。

 

 体長、体重、生息地、食物などのデータのほか、文章で語られている部分の内容はほぼ「なんで鼻がゾウのようになってしまったか」という理由である。内容はほとんどこじつけや屁理屈なのだが、筆者は多少「勝手なことばかり書きすぎているかも」という思いでもあるのかしらん。「~という説が一般的」だとか「~という説が有力」だとか「~とも言われている」とかいうように、ほぼ推測の話だとして語っている。

 

 しいて気になる動物をひとつあげると……。

 

「ぞす」:ゾウとリスのキメラ。奥ゆかしい性格なので、口を隠すようにしてエサを食べていたら、いつのまにか口を隠すように鼻が伸びていったらしい…です。ちょっとかわいいと思ったので選んでみました。

 

 これキモかわいい!、という人にはオススメ。☆は3。

 

 

 

 

「ずぶろく園」

 

 天王屋図夫六という冒険家が、世界を旅する途中で見つけた生き物たちを紹介するという体裁をとっている。第1巻で17種、第2巻で18種の生き物が紹介されている。

 

 身の回りの無機物にただ顔をつけただけみたいな、あまり生き物の感じがしないなーというモノも、結構混じっている。また絵は精緻なものではなく、かなり簡略化された線で描かれている。ちょっとたむらしげる似な感じもする。

 

 では、恒例のおもしろいと思った生き物のご紹介。

 

スタンプヒトデ」:ずーっと側転を続けているような、その動きがおもしろい。

 

バーバーマン」:色違いの3本の足をくるくる巻いて床屋のマークのようになり、さらにくるくる回る動きで、エサになる虫の目を回してとらえる、という。この習性がおもしろい。

 

 本当に世界がこんなオモシロ生物であふれていたら、「冒険家になりたい!」と思う人が増えすぎて困ったことになるに違いない。☆は3の上。

 

 

 

 

「ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の〇〇図鑑」

 

 K・スギャーマ博士の想像上の島「ノーダリニッチ島」。博士が「ノーダリニッチ島」を脳内冒険した際に発見した(発見したと言っていいんだろうか?)生き物を紹介していく、という体裁をとっている。

 

 「図鑑」とはなっているが、「動物図鑑」の方ではその動物の食物などについては言及していないモノが多く、主に性格・性質や特徴的な行動について書かれている。印象としては、生き物というよりも精霊獣、妖精獣というような感じを受けた。

 

 個人的には動物図鑑よりも植物図鑑の方がおもしろかった。

 

 では、動物植物両方こみでおもしろかったモノをご紹介。

 

ダンディライオン」:たてがみがタンポポの花のようになっている。秋・冬にはフワフワの綿毛に変化する。

 

パラワ」:首の周りのエリを広げ、高い所からパラシュート降下のように降りて来る。

 

ボウフラワー」:葉と茎が弓の役割を果たし、種を矢のように飛ばす。とてもよく出来た仕組みだと思う。

 

バブルバブル」:サポニン(混ぜると石鹼のように泡立つ化合物、ブドウやツバキなどにも含まれる)を多く含む植物。雨上がりに、花から種の入ったシャボン玉を吹く。これもイイネ。

 

ウーズ」:二股に分かれてる幹が一つに合わさるという、逆さVの字のようになっている。ゆっくりとだが歩くことができる。「トリフィド」だな(分かる人はどれくらいいるのかな?)。

 

ウィリーウィリー」:うねうね曲がりくねった茎が溝のようになっていて、レールの役割を果たし、先端にある種が落ちると、そのレールに沿って転がり落ちていく。これも種を遠くに運ぶための植物の工夫なのだが、わざわざジェットコースター方式にしてるというところがおもしろい。実物見たい!

 

 絵が今ひとつ地味な感じで、ちょっと損してると思う。☆は4。

 

 

 まだ続きます。

 

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