プレミアムビールうまい。
En las estepas de asia central (youtube)
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「何故、あなたたちは父と母を殺したのですか?」
全てを終えたはずの人々に、透き通った声が降りかかった。
「誰だ!?」leadが周りを見渡しながら声を立てた。
「人は何故、僕たちの仲間を殺すのですか?」
その声は流暢で、人間がしゃべっているのと何の違いも感じられなかった。
声の主は玉座の後ろから、キングとクイーンが転がっている方へと足を進めた。
「何なの?あなた。」makが息を整えながら聞く。
「僕はメビウス。あなたたちにも心があるのではないのですか?」
倒れる両親の姿を見、顔を上げ、人々の顔をまっすぐに見つめる。
「おい、聞いてねぇぞ。何なんだこいつは!?」グレイブが隣のLlodに叫んだ。
「知らないよ!私だって何も聞いてない!」
いきなりの新しいタルタロッサの登場。さらに、あまりに人間と似通ったしゃべりに人々は混乱する。
「仲間を殺されると僕たちは悲しむ。わからないんですか?」
「お前たちが悲しむなど知ったことではない。こちらは仕事だ。」holicは混乱を沈めるように張りのある声で答える。
「仕事……心があるというのに何故……報酬をもらい、命を奪う……それが自分たちと同じ人間ではないから?姿形の違う、別のものだから?……僕たちだってエイシスに住むイクシオンと争っています。僕もそれは知っている。父がそのことで悲しいことをしていることも。争えばどちらか、いえ、双方に悲しみが生まれてしまいます。そのことがわかっていて何故、やめようとしないのですか?」
レブロットが少し考え込む。
「……悪いけど、禅問答をするつもりはないわ。」
レブロットの方を向き、「禅問答なんかじゃありません。」そしてまた、全員の顔を見渡す。
「簡単な問題です。僕はこのタルタロッサパレスを出たことがあります。その時に知ったんです。人間にも心がある。イクシオンにだって。感じ方や表現は違うかもしれない。だけど心、心に違いはないと気付いたんです。ある人は愛する人を失い、嘆き悲しんでいた。ある人は願いが叶い、欣喜雀躍していた。人間だってタルタロッサだって!!同じじゃないですか!?」
「心ですか。おもしろい見方をしますね。」にくじゃがが呼吸を整える。
「なのに……何故?」メビウスは沈痛な面持ちで目を伏せた。
「じゃあこっちから聞かせてもらうけど、あんたは世界の全てを変えたいとでも言うの?」みおんが静かに言い放つ。
「全てを変えることなんてできない。僕の力はそんな強くない。でも!!少しずつ、少しずつなら変えられると思うんです。父は僕の考えを否定しました。でも僕は僕だ。父とは違う。僕が王になったらイクシオンと共存の道を捜したいんです。どんなに困難かわからないけど。僕は、そう決めたから。」
「キレイな子ね。でも……純粋すぎる。」CALLINGがちょっと眉をひそめる。
「人間とだって。心があるなら通じ合えるはずなんです。僕は信じてる。性格などには裏表があります。でも、心に裏表なんてない。誰もが知覚していない本当の心。それは何よりも、何よりも大切なものなんです。」メビウスは透き通る瞳で人々に訴えた。
「どうするの?」スィエルが作戦立案のLlodの方を向く。
「これは……完全に依頼外の話だよ。」
「私たちに委ねられてるのね……」
「その心から目を背けて、争いを繰り返す。心の音から耳を閉ざす。どうしてなんですか?」
「ボク、この子の言うことわかる。やだよ。殺すのなんて。」Akasiが珍しくまじめに言った。
「私も同意できません。」むーちょがAkasiに同意する。
「こいつは危険だ。殺そう。」刺すような視線をメビウスから離すことなくholicが言う。
「holicさん……俺はイヤです。」
「レイルジュ。」
「いくら、holicさんの命令でも!!俺にはできません!!」
「やばいわね……みんなの気持ちが割れてる。」苦い顔をmakが浮かべる。
にくじゃががメビウスの目を見据えながら問う。
「一つだけ気になることがあります。私たちはあなたの両親を殺しました。あなたの心はそれについてどういう音を出したのですか?」
「……そのことは……とても悲しいことです。しかし、ここで僕が感情のままに行動しては……」
「揚げ足を取る気はないのですが、あなたの心、それに従うのならば私たちは憎むべき存在だと思います。感情は心から発せられる音色。逆らうということは心を否定すること。あなたが言っていることと矛盾してしまいます。」
「……僕は……悲しみたくないんです。これ以上。僕があなたたちと戦い、あなたたちの命を奪うことがあればあなたたちは悲しむ。……もう、たくさんです。」
「自分が犠牲になるってのか。殊勝だな。」グレイブは少し不満そうである。
「異常ね。血のつながってる肉親が目の前で殺されてるのよ?それを押しとどめるなんて。」レブロットは鞘に収めた刀から片手を離さない。
スィエルもレブロットと同じ意見をあげた。
「そうですね。私だったら正気など保っていられない。」
「なんでみんな素直に受け止めないの?」Akasi。
leadがイライラしたように声を上げた。
「確かに嘘は言っていないように聞こえる。だが……どうすればいい。」
「ボク間違ってないと思うよ。今まで考えたことなんてなかったけど。ボクだって悲しいのはイヤ。悲しみをもっと生むなんて、無意味だよ。」
「……俺らはこいつの親を殺してるんだぞ?」にらむようにleadが言った。
「……それは……そうだけど……」
「ですから、僕はこの現実を受け止めます。これ以上……もう……」
「私は……危ないと思うわ。」CALLINGがほほえまない。「ここまでキレイな心……一本の綱を渡るより、ガラス細工を扱うのより危険よ。」
むーちょは真っ向から反論した。
「大人はこの子の言う心の音すら聞くことができないの?目を閉ざして、耳をふさいで、必死に心を拒絶してるようにしか私には見えないわ。」
「そうですよ。俺はこのタルタロッサを信じます。この子の未来を。希望が満ちてるんですよ?」レイルジュもむーちょの側に立つ。
「ありがとうございます。やっぱり人間の心も僕たちと変わりない。みなさん、お願いです。悲しみを増やす戦いなんて不必要です。」メビウスは感極まったようにAkasiらの方を見つめた。
「俺は……信じたいけど……難しいな……どうすればいい。危険はわかっているが賭けたい。俺がガキなだけかもしれないが俺の心はそっちだ。」考え込みながらグレイブが告げた。
「お前ら……本気か……?話術に対する耐性がないのか?言いくるめられ、死を見るぞ。」holicは険しい顔をさらに険しくさせながら静かに言う。
「姿に騙される。目は情報の重要な一つです。だけど、それに頼りすぎてはいけない。全ての感覚で僕を認識して下さい。……お願いです。」
「確かに……完全に相手のペースね。ここまでやられちゃうと……」makが困ったように全員を見渡した。
人間は割れていた。
メビウスの言に賛同する者、異を唱える者、立場を決めあぐねる者。
賛同する者はメビウスを信じる。その言葉を理解し、未来を信じる。純粋な思想、美しいものは人を魅了する。そしてそれほど希望を感じさせるものはない。希望は心を明るくし、闇を払う。明かりを求めるのは当たり前の行動だ。
異を唱える者はメビウスを信じない。理解する者、理解できない者。理解する者はその心を危険だとし、理解できない者はその心を信じない。純粋ほど危険に満ちたものはない。キレイなものほどちょっとの汚れで台無しになる。そして一気に染まる。元に戻ることなどない。それを恐れ、危惧する。
決めあぐねる者はその二つの意見のただ中で揺れていた。どちらの主張も正当である。
この問題に答えを出すことなどできない。答えなどない。
だが、その状況は答えを出さなくてはならなかった。状況は逼迫していた。
人々が自分の心との葛藤、対話をしているさなか、誰も気付かないうちに一人の影がメビウスの横に立った。
全員を信じ、見ていたはずのメビウスですら影に気付いたのは隣に立った、その瞬間だった。
メビウスの小さな体に衝撃が走る。CALLINGの短剣がメビウスの腹部を突き刺していた。
刺された部分がじわじわと赤くなる。子供は腕を振り、CALLINGを吹き飛ばした。
「……それが……あなたたちの答えですか……わかり合える……信じていたのに……!!」
メビウスは悲しみに満ちた澄んだ声を上げると、空中に舞い上がった。
人間は意志はどうであれ、戦うことを強要された。
CALLINGはゆっくり立ち上がる。下唇を噛みしめ、悲痛な表情をしていた。
「……みんな!!来るよ!!」
Llodは何が起きているのかわからなかった。小さな口が空気を震わしたようである。
だが、人々はその声だけでは宙ぶらりんになっていた意識を捕まえることができなかった。
衝動のままに腰を落とし、身構える。武器を握る、精神を集中する。その一秒にも満たないコンマの世界、全員の肉体が傷ついた。手は地に付いており、体から液体が出ている。肉体が精神を通じ脳に異常を伝える。目は眼前の異常を訴え、信号を送る。
脳が二つの信号を受け取った。
眼前で起きていることがなんなのか。それを正常に処理できず電気をあらぬ方向に飛ばしていた脳は、さらに混乱を来した。
次に目は上空のメビウスを捉える。光の信号を受けた脳は、他の情報を切り捨て、感情、思考の一部をシャットダウンした。
闘争。
一つの本能だけが活動した。人は理性を外した。生き残る術はそれのみであった。混乱した脳の結論である。その結論に正しい、正しくないなどの判別を付けるのは間違いである。この時の生命が置かれていた場。そこで起こる意志、行動はそのような判別とは範疇が異なる。
本能という獣は、委ねられた肉体に歓喜した。脳が結論を出した瞬間、”人”は”人”ではなくなった。
人の中で”メビウス”は”メビウス”ではなくなった。CALLINGが何故。”何故”は獣に何の意味もなさない。そこに起きている物体と物体の変化。それのみが重要な要素を持つ。これより先、言語は役に立たない。物の変化を解釈するための修辞。それが使用していた場所を感覚が乗っ取った。いや、人が人たるもの、それは脳の命令により場所を明け渡し、その場所全てを埋め尽くすように獣が座り込んだ。
獣は沸き立つ。喜びを包み隠そうともせず、全身を震わせる。全てを支配し、咆吼を轟かせる。獣は生存のロジックのままに行動した。認識した状況状況から一瞬で答えを導き出した。迷うことなどなかった。迷いようがない道。答えが隣に用意されている問題に間違えることの方が困難である。
獣をある音がつんざいた。鼓膜ではなく、獣そのものを貫いた音。獣はその音がすり抜けると、体の底から湧き上がる歓喜に包まれた。毛は逆立ち、異常な快感に身を委ねる。牙をむき出しにして哄笑した。笑い疲れると体を折り曲げ、眠りについた。音は空間全体を震わせると、静かに、悲しげに消えていった。
”人”が”人”に戻ったとき、白かった羽は真っ赤に染まり、小さな体は体ではなかった。