同じ寮に住む3人の日本人で天ぷらを食べた。エリンギ、アスパラガス、エビ、サツマイモ、茄子、今日はかなり充実していたと思う。

一人は別の棟に住んでいるので、一緒に食べる機会はあまりない。彼は前回うちのキッチンへ食事に来た時、サンダルが欲しいと言っていた。そして、今日見かけた彼は買ってきたサンダルを履いていた。これで素足で過ごす快適さと喜びを知っていくのだろうか。僕はそれを見て少し安心した。

チラッと見ただけだったので、特にその新しいサンダルに言及することもなく食事が終わり、3人で団らんしていると、おもむろに彼が切り出した。

 

「このサンダル、サイズちゃうねん。」

 

彼は、サイコ説がまことしやかに囁かれるほど、時折やばい一面を見せてくれるのだが、今日は背筋が凍った。

 

画像1

 

ちゃいすぎやん。

片方尋常じゃないぐらい膨らんでるやん。

 

右足UK6 左足UK11

 

 

正直舐めていた。1サイズくらいかなーとか思っていた。これはちょっとサイズちゃうとかのレベルではない。

 

 

しかも彼は1週間気付かずに履き続けたという。

 

 

日本サイズで考えると左30㎝で右25㎝くらいである。片方だけNBA選手みたいなサイズ感。日本で売っているのはまず見たことがない。なぜこんなに異なるサイズをを選択したのかもわからないうえ、気付かなかったことも意味が分からないが、彼は

「左だけ水吸ってデカくなったと思った。」

という謎の主張を繰り返していた。もちろんそんなわけないし、吸ったとて左だけ肥大化することもないし、そんなシチュエーションも訪れない。

 

奇跡のサンダル。こう名付けようと思った。

 

 

 

事実、このサンダルはいくつもの奇跡を潜り抜けているのだ。

まずこのペアで販売されていた奇跡。サンダル選んでるときに気付かれなかった奇跡。試着しながら気付かなかった奇跡。一緒に行った友達が気付かなかった奇跡。レジのやつがスルーした軌跡(何気にこれが一番やばい)。そして買ってきて履いた時に気付かなかった奇跡。最終的に1週間履いといて気付なかった奇跡。

細かい網の目をいくつも潜り抜けてきたこのサンダル。5㎝のサイズ差を悠然と履きこなすテクニックを僕は持ち合わせていない。しかし、彼はストレスを感じている素振りもなく、終始ニコニコしていたし、これからも履き続けていく意思を見せていた。

 

やがて団らんも落ち着き、彼は何事もなかったかのように、それを履いて帰っていった。