弥生(江口のりこ)・愛美(内田慈)・清美(古川琴音)の三姉妹が久しぶりに集まり、"お母さん"の誕生日祝いで佐賀の温泉旅館に一泊の旅に出る。3人が部屋に到着した時から、"東京03"のコントの様な予感に既に口元がほころぶワタシ。弥生と愛美は東京在住で滅多に帰省しないらしく、"お母さん"と暮らしているのは三女の清美なのだが、どうも"お母さん"は口が悪くネガティブなな事ばかり言うので、三人とも苦手な様子。今日は誕生祝いなので"お母さん"だけ露天風呂付きの部屋で、三姉妹は一般的な部屋一室に宿泊する。どうも到着するなり"お母さん"は「部屋がカビ臭い」の「こんな部屋勿体無い」のとネガティブ発言全開であるらしいのだが、実は弥生も「部屋がカビ臭い」「畳が臭い(井草の香りを言っているらしい)」「露天風呂に虫が浮いていた」「浴衣が足りないし変な匂いがする」「なんでこんな旅館を選んだ」と輪をかけてのネガティブ全開。それでいて"お母さん"のネガティブさには閉口しているらしい。

そもそもこんなクセツヨを江口のりこさんが演じるのである、そりゃそれだけで面白いでしょ。

そして次女役の内田慈さん。そんな長女のマシンガン不満を強引に止める声の張りは小気味良いけど、どうにも男方面に自制が効かないらしく、更には幼少の頃から勉強のできた長女と比べられてきた(と本人は思っている)コンプレックスを引きずっている。これが強そうで弱そうで良い加減なのだ。

三女はワタシのイチオシ、古川琴音さん。ちょっとぶっ飛んだ姉達に対して、少し控えめな感じながら、こちらは弱そうで強そうで、これまた実にヨロシイ!


そして彼女らの言葉のやり取りは、九州言葉(佐賀弁?)にちらほら標準語が混じって、本場の人はどうか感じるかわからないけど、ワタシは観ているだけで嬉しくなってしまった。

ググってみたら監督・脚本家共に長崎の出身だそうで、多分言葉使いも的確なんだろうと思います。


原案はペヤンヌマキさんによる舞台劇だそうで、とにかく脚本が見事だと思いました。あの言葉の応酬を自然に作り出せるのは、やはり女性ならではでしょう。あんなに激しい言い争いも翌朝にはチャラになっているのは、確かに家族ってそんなものかもしれないけど、中々男の思考では成せない気がします。更に三女の恋人(青山フォール勝ち)のいい加減な様で結構ポイントを突く発言も、男は細かいことには口を挟まず、ポイントだけ抑えていれば充分です、と言うメッセージに見え、それはちょっと前の価値観の様にも見えるけど、小気味良く感じました。

橋口亮輔監督は寡作の人で、ワタシは「ぐるりのこと」しか観ていませんが、木村多江さん・リリーフランキーさん共にあの作品が初主演だったそうで、この監督のキャスティングの上手さを改めて知りました。早く次作を観たいものです。


ほぼワンシュチュエイションで会話劇の今作。ワタシはそもそも大好きな部類の作品ですが、とにかく面白くて、滅多にない事ですが、声を出して(もちろん小声です)笑ってしまった。

そして、物語の中心人物"お母さん"役はいったい誰なのか?

それは是非ご自分でご確認(想像?)を。