先月「春画先生」で初めて無修正の春画を観て、"江戸時代のエロ本"位の認識しかなかったそれが、芸術として鑑賞に値するものだと知りました。本編上映前には「春の画」の予告もあって、この映画を結構楽しみに待っていたのです。

「春画先生」ではスクリーンに映し出された春画はほんの数枚でしたが、今作は春画そのものを紹介するドキュメンタリー映画ですから、数多くの作品を鑑賞出来ます。

代表的な絵師と作品を紹介する中で、春画自体は平安時代にはあった事、その頃は、発見されている限りにおいては、貴族の嫁入り道具であった、つまり性教育ツールだった事。江戸時代には版画技術の発展と相まって庶民にも広まると同時に、奢侈禁止令下では公に販売する浮世絵に色をふんだんに使えない中、別ルートで流れる春画ではそうした事を気にする必要がなく、それ故絵師も彫師も摺師も持てる技術を惜しみなく発揮できる場であった事。

江戸時代にはそれを"笑い絵"とも言い、多人数で鑑賞して楽しんだり、絵師も(と言うより版元か)それに合わせて一連の絵にストーリー性を持たせるなどの工夫を凝らした事。

ついにはあの有名な"蛸と海女"(葛飾北斎)が生み出され、それは現代に残る"触手物"の原点だと思われる事。

その流れは最終的には"無惨絵"にまで至った事。

そうした諸事が専門家や愛好家達によって語られて行きます。

観客はスクリーンに映し出される(すんごい)絵を観ながら楽しくそれらを知り、自国の文化の深さやおおらかさに誇りを感じられる作品でした。


春画と言うと喜多川歌麿が一番有名かと思いますが、それが何故なのか、何枚もの絵を観て、理解できましたし、この国が何故世界一のマンガ大国になったのかもすんなり理解できます。

ただ、浮世絵も春画もその芸術性を最初に認めたのがヨーロッパである事には、知っていた事とは言え、一抹の無念さを覚えました。