1923年関東大震災後の被災地では流言蜚語が飛び交う。曰く「朝鮮人が襲って来る」「朝鮮人が井戸に毒を撒いている」「共産主義者が革命を起こそうとしている」「富士山が噴火した」「津波が来る」etc…
話には聞いた事がありました。
その中で言われの無い暴力や虐殺があったであろう事も想像に難くありません。
しかし実際にその一例が、福田村事件として記録が残っている事は今回初めて知りました。
千葉県福田村(現 野田市)で、偶々そこを通りかかった香川県の薬売り行商隊(男女15名)が朝鮮人と間違われて、暴徒と化した村の自警団に襲われ、9名が命を落としたその顛末を映像化した今作。
事件発生から100年です。関東大震災からも100年てすから、その節目としての映画化かと思いました。無論余り世間に認知されていない事への警鐘も込めて。
ちょっとググってみた所、事件が表面化したのは1980年代だそうで、真相調査会が設立されたのはなんと2000年だそうです。
愕然としますね…
そりぁあんまりです。
映画化の意味は充分にありました。
問題提起してくれてありがとうございます。
それは偽りない気持ちです。
劇中には穢多・非人問題も所謂赤狩りも当時から昭和の時代に至るまで忌み嫌われた癩病患者の描写もあり、人種に限らず、差別の卑劣さを訴え掛けられます。
昔から"村社会"と言って自虐していたこの国の、正にその部分をまざまざと見せつけられます。
こうした問題提起となると、兎角視点が偏って、一筋縄で行かない問題を一筋縄でまとめてしまい、問題事態は理解しつつ、ついツッコミを入れてしまいたくなるものですが、本作は良くまとめていたのではないでしょうか。
あの頃より少しはマシになったと思いますが、依然として差別や格差はこの世に蔓延しています。
あまり悲観的に物事を考えたくはありませんが、それが人間の本質でない事を祈ります。
そんな愁傷な事を思わず考えてしまう、そんな映画でした。