「さすがに朝からケーキは無理....うぅぅ」
『小さいサイズにして正解だった』
「夜だったら食べられたもん」
『そっか、ごめんごめん♪』
冷蔵庫にケーキを見つけたときはどうしようかと思ったけど、
朝ごはんとして食べたらさすがに胃が...
僕も年を取ったってことか。
悲しい現実だ。
「今日はどこに行くの?」
『ん~?内緒。ついて来たら分かるよ』
そりゃそうだ。
僕は仕方なくユノヒョンについて行く。
まるで親鳥について歩く雛鳥のよう。
お昼前にホテルを出てスウォン駅へと向かった。
スウォン駅からは在来線で見知らぬ駅へ。
「どこ.....?」
『もう少しだから。あ、タクシーに乗ろう』
「えっちょっと待ってよ」
タクシーに揺られながら左側にいるユノヒョンをチラッと見ても景色を見ていて何を考えているのかサッパリわからない。
一体どこに行くのだろう...。
『チャンミン着いたよ』
「え、あ」
ユノヒョンがタクシーの代金を払っていたから慌てて払おうとしたら、
『チャンミンはいいから』
と止められた。
「でも.....」
『おじさん、これでお願いします』
"丁度ですね。ありがとうございました"
『さ、チャンミン降りよう』
「うん...」
タクシー代金に気をとられていたけど、
ここって一体.....
タクシーを降り、
地に足を着いたその先は.....
"まってよー"
"追い付いてみろ"
"足が早いからってずるい"
なに、ここ...
幼い子供達が遊んでいる。
学校...かな?
"あら、ユンホさんお久しぶりね"
『先生お久しぶりです』
"すっかり有名人になっちゃって、あら?"
『あぁ、先生こちらはシムチャンミンさんで、僕の.....大切な人です』
"噂は伺ってるわよ。本にもなったって"
「................./////
あの、シムチャンミンです」
『チャンミン、この方はこの養護施設の園長先生だよ』
「.....養護...施設........」
"ユンホさんが、何年前かしら?
軍生活の時にいらしたのよね?"
『8年前です』
"そんなになるのね.....
除隊されても毎年来てくれて、ありがとう"
『いえ、ここの子達はみんないい子達ですし』
ユノヒョンが入隊していたときに訪れた養護施設らしい。
ということは懐かしい土地に挨拶にきたってところだろうか。
僕たちは園長室に案内され、
茶菓子までご馳走になった。
『園長先生、折り入ってお願いがあります』
"改まって何かしら?"
『僕たち二人に家族を迎え入れたいと思っています』
「........え、」
家族...?
『養子縁組を申し入れるために今日は来ました』
「ちょっ!ユノヒョン何?どういう...こと?」
『チャンミン...僕たち子供を育てない?』
「子供って.....」
『僕たちは夫婦だ。
でも僕たちの間に子供を授かることは不可能でしょう?
でも僕は二人で、チャンミンと子供を育てたい。だから養子縁組って方法を思い付いたんだ。.....どうかな?』
「どうかな...って、」
そんな急に言われても頭の中が真っ白だ。
子供?
養子縁組?
は?わかんない。なにも考えられない。
"ユンホさん。
チャンミンさんが驚いてるわ。ちゃんと話さず来たのね"
『先生.....すみません。サプライズで...』
"昔から変わらないわね。これと思ったら突っ走ってしまう癖"
『.....すみません』
"長所でもあるけど。
チャンミンさん、ユンホさんが仰る養子縁組って意味がわかりますか?"
「えっと...その、僕たちが親になって育てるってこと.....ですよね?」
"そうです。
ただ育てるだけじゃなくて、たくさん愛してあげるんです"
「愛してあげる...」
"我が子同然に惜しまず愛を.....
チャンミンさんにできますか?"
「..........」
『チャンミン?だめかな?』
子供を育てるって、
スヨンの時すごく大変だった。
反抗期もあったし、女の子だし、
お金もかかるし、自分の時間なんて皆無。
四六時中働いたし学校行事も皆勤賞だった。
あの生活をもう一度?
"オッパ!"
"オッパいつもありがとう"
"オッパはスヨンがいないとダメなんだから"
"ちょっとーオッパ聞いてるの?"
"オッパ.....ねえってば!"
"オッパ、大好き!"
"オッパ...愛してるよ"
スヨンが僕にくれた言葉達。
辛いことだらけだったけど、
スヨンの言葉と笑顔で疲れなんて吹っ飛んでたっけ。
すごいよな....スヨンは妹なのに。
親の立場になったらこんなにも愛おしい存在になるなんて。
養子縁組をしたら、
ユノヒョンと苦労と幸せを感じられるだろうか。
ふと、ユノヒョンからの視線を感じ顔をあげるとクシャッと目尻に皺を作り笑っていた。
『チャンミン、僕とチャンミンの愛し合っている証を残そう』
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