"ヒョン....."
「テミナ...今始まったところだよ」
"ギリギリセーフでしたね"
テレビ収録には担当編集者が来るのは当たり前だったが、テミンは会議が長引いていて収録に少し遅れてきた。
まぁ、担当編集者がいてもいなくても正直なにも変わらない。
なんとな~く収録を見届けて、
強いて言うならイメージ外になることや、
本の内容を言わないように監視するぐらい。
"ユノ先生、スーツがめちゃくちゃ似合ってますね"
「........うん.../////」
"見惚れないでくださいよw"
「わかってるよ..... 」
"チョンユンホ先生はゲイだと伺っていますが、どうして公開なさったのですか?"
『どうして.....ですか。
理由はありません。自分が自己紹介するときに趣味、特技を話すことと同じ感覚なだけです』
"でも言われて嫌な気持ちになる人がいるかもしれないのに、わざわざ言う必要がありますか?"
『.................』
はぁ?!何その質問!
失礼すぎるんじゃない?
「テミン、あんな質問OKなの?」
"えっと、台本に書いてない質問されてます"
「なっ?!最悪じゃん!今すぐ止めてよ」
"はい!"
『どうして言われて嫌な気持ちになるのでしょうか?』
"それは....."
『普通じゃないからですか?』
"...そうです、ね"
『みんなが同じことが普通なのでしょうか』
"多数決の原理では"
『なるほど。ではなぜ嫌な気持ちになるかもしれないことを言ってはいけないのでしょうか、自分のことなのに.....』
"相手の気持ちを考えて話すことが思いやりだからです"
『........なるほど。
では今、あなたが僕に質問していることは思いやっていないということですね』
"え?"
『その質問をされて僕は嫌な気持ちになったので』
ユノヒョン.....
".................失礼しました"
『人は皆なにかしらのマイノリティを持っています。全部が全部周りと同じだなんてあり得ない。そしてそれを否定したり拒否してはいけない。それが個性だからです』
".................質問を続けます。
お相手の方とのことを書いていらっしゃいますがどうして書こうと?
ノンフィクションだと伺っています"
『はい。90%ノンフィクションです。
10%は勿体なくて書けませんでした。僕だけの彼なので。
実は僕は今まで恋愛に消極的でした。好きになってもどうせ...と。
でも彼に会って諦めたくないという気持ちが初めて芽生えました。そのときの想いを綴りたくて』
"だからタイトルが運命なんですね"
『はい。僕は彼に会えたこと、彼も同じ気持ちになってくれたこと、全てが運命だと思ってます』
ユノヒョン.....
僕もだよ。
ユノヒョンが話したことは本の中にも書いてある。
僕が校正したんだ。覚えている。
それにこの言葉は校正しているときにも感動したっけ。
何度聞いても、見ても、ユノヒョンの想いが嬉しくて...涙が出てしまう。
涙を流している僕を見てテミンが、
そっとハンカチを渡してくれた。
さすがテミン。
できる弟すぎて.....また涙が出てしまった。
"素敵ですね。では同じように性について悩んでいる方にアドバイスなどはありますか?"
『アドバイス.....になるか分かりませんが、どうか自分のことは自分だけでも愛してあげてください。そして認めてあげてください。悩んでいることを愛している人へ愛してくれている家族へ話してください。
時間はかかるかもしれないけれど、
必ず味方になってくれます』
"ありがとうございます。
では最後にチョンユンホ先生が望む世界を教えてください"
『望む世界...
そうですね。世間が同性愛にもっと寛容になってもらえたら嬉しいです。
僕たちは何も悪いことをしていない。
ただただ愛しているだけ、
男女の恋となにも変わらない。
あとは.....韓国も同性婚が早く認められることを望みます』
"本日はありがとうございました。
チョンユンホ先生でした"
パチパチパチパチパチパチパチパチ
ユノヒョン。
なんて格好いいんだ。
いや、ユノヒョンが格好いいことぐらい前から知ってたけど、
でも.....堂々と話すあなたが、僕の旦那さんであることを心の底から誇らしくて自慢したいよ。
今ここで、
この場でユノヒョンに愛していると叫びたいぐらいだ。
絶対に叫ばないけど。
『チャンミナ愛している!』
「なっ?!へ?、は?」
照明が当たっている場所から浮かれ気分のユノヒョンが僕に向かって走ってきている。
その距離10メートルを切った。
「ストップ!来ないでユノヒョン!!」
『へ?なんで?!って急に言われても止まれないぃぃぃ』
「!!!!!」
『ふふ、来ちゃった♡』
今まさにスタジオのスポットライトを浴びていたユノヒョンが、
スタジオの端にいた僕を抱きしめている。
隣にいるテミンは一瞬驚いていたけれど、
やれやれって表情で腰に手を置き溜め息。
「ちょっ!ユノヒョン離れて!」
『えーなんで?』
「それはこっちのセリフだ!」
『だってチャンミンの話したら抱きしめたくなったんだもん』
「公共の場だ!我慢して!!」
『無理無理!チャンミンの匂い~』
「ちょつ!変態!やー!!」
"なんかすごいですね。この二人"
"いつものことです。
だからあなたが入る隙間なんてありませんよ"
"あら♡バレてましたか?"
"バレバレです。そんな短いタイトスカートを履いて胸元を開けているんですから"
"でも本人には全く効かなかったわ"
"まぁ、同性が好きですしね。
でも例えユノ先生が異性を好きでもであの彼がいる以上、誰も太刀打ちできないと思いますよ"
"そうね...こんなにラブラブを見せつけられて、嫌になっちゃうわ"
"ふふふ、そういう人ですからw"
テミンと女性キャスターが何やら話しているけど、仕事の話かな?全然聞こえなかった。
それよりも僕からユノヒョンを剥がすのに必死だった。
「いい加減離れて!!」
僕の声がスタジオ中に響いた。
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