Yside











『ん、』




なんだかスッキリとした気持ちで目が覚めた。
その理由がすぐに分かった。





『爆睡じゃん』


隣で可愛い寝息を立てながら眠っている俺の恋人チャンミン。
昨晩は1か月ぶりのチャンミンを堪能して、
気持ちが穏やかなまま眠ってしまった。



1か月ぶりのチャンミンに俺のネジは何本も外れてしまい、チャンミンには無理をさせてしまったかもしれない。



ピョンと跳ねているチャンミンの寝癖に触れ、

『ごめんなぁ』

自然と声に出てしまっていた。







「何にですか?」

『…………っびっくりしたぁ起きてたの?』

「ほんの少し前にです」

『そっか、』

「で、何に対して僕は謝られたのでしょうか?」

『あ?あぁ……チャンミンに無理させたかもって思って。1か月ぶりだったのに俺自分の欲ばっかりで悪かったなって』

「…………………ばっかり…じゃないです」

『ん?』

「僕も欲丸出しでしたから!!!」

『……………………』

「………あ……//// 失礼しました!!」

『チャンミン!今、僕って言ったな。
いつもは私って言うのに』

「申し訳ございません!」

『そうじゃない。
これからは一人称は僕で。
あと俺のことはユノ様じゃなくてユノにして。付き合いたてのころにもお願いしたよね?』

「むむむむ無理です!」

『…………………』







本当はもっと色々考えたかったけど、
本当はもっとシチュエーションとかちゃんとしたかったけど、





でもなんとなく今言いたくなった。
















『チャンミン、結婚しよう』

「…………………へ?」

『ふ、間抜けな声だな』

「………ユノ様…今なんとおっしゃいましたか?」

『ん?結婚しよう』

「なっ!?!?!!!!?」

『同性婚も可決したわけだし、
第一号ってことで良くない?』

「そんな簡単に!」

『簡単じゃないよ。めちゃくちゃ考えた』

「……申し訳ございません」

『それはプロポーズを断ってんの?』

「違っ!!!」

『あーはーはー』

「ユノ様!!!」

『じゃあプロポーズはOKってこと?』

「…………………」

『チャンミン?』

「同性婚…可決おめでとうございます。
でも…いくら同性婚が可決しても王と執事の結婚には反発が起きるのではないでしょうか」

『なるほど……』

「東方の國を大切に思う民にとって、」

『でもさ応援の声もあったぞ?』

「………………応援?」

『俺がマスコミの前でチャンミンを恋人って言って叫んだの知らない?』

「………拝見していました…///」

『見てたのに名乗り出なかったんだな』

「あ……」

『まぁいい。で、それを見てくれた民から沢山の応援の声が王室に届いたんだ』

「うそ…」

『本当だよ』




嘘は言ってない。
批判の声もあった…とはあえて言わないけど。







「……………そんな…奇跡が…」

『奇跡じゃないよ』

「………………」

『運命』

「…………運命…?」

『…………そう運命。
で運命の相手であるチャンミン返事は?』

「……………………」

『……………………』





チャンミンは暫く黙ったまま。
難しい顔ででも本当は「うん」と言いたいって表情。





クスッ




「何で笑いますか?」

『いやーなんか同じだなって思って』

「同じ?」

『付き合うときも、今と同じように難しく考えて断らなきゃって顔してた』

「………………」

『でも本音は付き合いたいって顔だった』

「………//// そんな顔してませんでした!」

『そう?』

「でも、……………今はしてるかも…です」

『…………それって……』

「結婚したいです……でも私なんかで本当にいいのでしょうか。私でユノ様を幸せにてきるのか……ッ」





ギュッ




 
『チャンミンが側にいてくれるだけで俺は幸せだから』

「でも……色々考えないといけないことだってありますよね?」



多分子どものことを言ってるんだろう。



『そういうことは結婚してから考えたらいい』

「………………」

『愛してる。俺と結婚してください』

「………ユノ様…」

『チャンミン……』




俺はチャンミンの大きな瞳をジッと見つめプロポーズをした。

チャンミンはそんな俺の視線を流し、
少し斜め下を見つながら、








「…………よ、ろしく…お願いします……?」

『チャンミン……』



付き合うときみたいに、
一度は断られグルグルと考えるかなぁって思っていたけど、
今日のチャンミンは結構あっさりと俺のプロポーズを承諾してくれた。


耳は紅く染めていたけど。








『本当に?』

「う、嘘なんて言えるわけないじゃないですか!?!」

『やっぱ無しは無理だからな?』

「わかってますよ」

『………………』

「なんですか?ユノ様がやっぱ無しなんて仰るつもりですか?」

『……………は?そんなわけ!!
やばっ!今すぐ婚姻届にサイン!気が変わったら困る!!』

「ふふふ。僕だってユノを愛しているんですから…/////」

『…………ッ!今!!!ユノって言った!?
もう1回言って!!!』

「なっ?!!一回ポッキリです!!」

『なんでだよ!?ほら、呼んでってば!』

「あーーーーしつこいですよ!!」





プロポーズして、
無事承諾してくれた。


そして初めて、







チャンミンは俺に対して砕けた口調で会話をしてくれた。


















この瞬間、王と執事ではなく、
紛れもなく対等な恋人だった。

そのことがどれほど幸せで嬉しかったか。






分かるかチャンミン?




















そうしてウニョクに婚姻届を取ってきてもらい、
すぐにサインをした。
本当は何か記念日とかを結婚記念日にしたかったけど、
俺たちはまともにデートをしたことがなければ、
記念になるようなイベントも経験がない。
だから、




せめてロマンチックな日が良くて、
7月7日の七夕に俺たちは婚姻届を提出した。



明日には王室から王が結婚をしたことをマスコミに発表する。







「なんか実感がありません…」

『そ?俺はチャンミンを守る責任ができてあー結婚したんだって噛み締めているんだけど?』

「守る責任は執事である私にあります」

『…………チャンミン、今日からは執事としてではなく伴侶として俺の側にいてほしい』

「でも私の仕事ですので」

『………………そのことなんだけど、
チャンミンのお義父さんから頼まれたんだ。チャンミンを執事から外してほしいって』

「え…父からですか?」

『うん。昨日部屋にやってきて』

「どうしてそんなこと……」





チャンミンは執事になるために幼少期からずっと訓練をしてくれていた。

執事としてだけではなく、
ボディーガードとしての武術も学び、
あまり好まない武術を俺のために身に着けてくれた。


もちろん代々執事家系ってのもあるだろうけど、チャンミンの人生はずっと王の為だったから、その人生である執事を辞めるなんてプライドもあって納得できないだろう。





『お義父さんが執事ではなく、
俺のために添い遂げるべきだと言っていたよ』

「添い遂げるなんて当たり前なのに」

『違うよ。添い遂げるっていうのは対等な立場で人生を共にすることだと思う』

「対等な立場……?」



そう。
チャンミンは執事として俺の側に居ればいいと思っている。
そうじゃない。


家族になるってことは上とか下とかないんだよ。














「ではユノ様の執事はどなたが?」

『ウニョクがしてくれる』

「以前より公務も増えてきています。
ウニョクさんの負担が増えてしまいます」

『チャンミンのお義父さんもボディーガードをしてくれるって。
ほら、親父も亡くなって今は時間を余らしているみたいだよ』

「………………なんだかユノ様に用無しと言われているような気分です」

『そうじゃない』

「………………」




拗ねてる。
気づいていないみたいだけど、唇を突き出しあからさまに拗ねているチャンミン。







『チャンミンと一緒にご飯が食べたい』

「へ?ご飯?」

『チャンミンと一緒にショッピングがしたい』

「???」

『チャンミンとデートして夜景も見たい』

「ユノ…様?」

『チャンミンと冗談を言って笑い合いたいし、1日の最後は一緒に眠りたい』

「………………」

『そんな当たり前なことを対等な立場でしたい』

「………………」

『結婚してもチャンミンが執事であり続ければ、すべてチャンミンは俺の一歩後ろにいるだろ?』

「…………ッ」

『ご飯だって俺が食べたあとに食べるだろうし、夜になれば自室で眠るだろ?』

「………はい…」

『それが嫌なんだ。お義父さんもそれが分かっているじゃないか?だから言ってきてくれたんだと思ってる』

「…………………」

『結婚ってそういうことだと思うから』

「ユノ……さま」







チャンミンはグッと唇に力を含め、
お得意のグルグルタイムだ。

ここで逃げないでほしいチャンミン。










「わかりました」

『っえ?!!』

「私だってユノ様を愛しています。
結婚だって夢のまた夢事だと思っていましたが、ユノ様からたくさんの幸せをいただいた身。今度は私がユノ様を幸せにすべく………ッ対等な立場でユノ様のお側におります!」

『チャンミン…』

「でも、執事はやめたくないです!!」

『なっ?!!』







執事でありながら対等な立場だなんてできるはずがない!





「切り替えます」

『……………』

「公務のときは執事として、
公務以外のときは伴侶として対等な立場でユノ様と向き合います」

『そんな器用なことができる?』

「します!!やってみせます!!」




そうだった。
チャンミンは頑固なんだった。





『じゃあ今は二人きりで公務じゃない。
俺のことをユノって呼んでよ』

「……………ッ」


そんな無理難題でもないんだけど。




「ゆ、ユノ…我儘を承知でお願い…」

『チャンミン!!!』





俺って単純。
ユノと呼ばれて、敬語じゃないだけで、
もうどうでもよくなっちゃったよ。


踊らされてるな完全に。






『じゃあ明日から1週間ちゃんと切り替えられたら公務のときは執事を務めてもらうことにしよう』

「ありがとうご………ッ ありがとう」


あーーー
俺って本当にチャンミンに甘い。
これから尻に敷かれたりして。




『じゃあさっそく一緒に寝よう!』

「……ッ うん!」

『!!!!』



破壊力半端ねぇな。
チャンミンのタメ口って少し幼さを感じる。


つまり可愛いってことなんだけど!






やばいな。
俺、チャンミン激甘かもしれない。
まぁでも。



とりあえず











『チャンミン愛してるよ♡』

「………………」

『チャンミンは言ってくれないの〜?』

「………………」




チュッ




「愛してるよユノ♡」

『!!!!!』





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