Yside














最近チャンミンが忙しそうだ。
何かとスマホで調べ物?をしているみたい。


放課後もいつも図書室で勉強をしていたのに、最近はすぐに帰ると言う。





週末は俺はバイトでチャンミンもTBちゃんになっているからなかなか会えない。
俺がテーマパークにTBちゃんに会いに行ってもそれはTBちゃんであって、チャンミンに会えているわけではない。



図書室での勉強を辞めたの?
だとしたらなんで?
特進クラスで塾に通っていないから放課後は図書室って確かチャンミンと同じクラスのキュヒョンくんが言っていた。




じゃあ今放課後は何をしてるんだ?











『浮気……?』



いやいや、さすがに無い。
自惚れではないがチャンミンは俺のことが好きでTBちゃんになっているわけだし……


いやでも…もしかしてあのキスのせいで俺を軽蔑した……なんてことはないよ……な?


体調不良の俺を心配して俺の家まで来てくれたのに、猿みたいに俺が我慢できなくなって俗に言うディープキスってのをしてしまった。

嫌がってはなかったと思うけど……
空気は読めてなかったよな俺。












もしかして、
ガチでやっちまったのか?!



















『チャンミン、今日も図書室には行かないの?』

「はい…今月いっぱいはちょっと…やるべきことがあるので」

『やるべきことって?』

「えっとー・・・」

『俺には言えないこと?』

「言えないというか、なんというか」

『…………そっか。わかったよ』

「………すみません」



そうチャンミンは俺に申し訳ない表情をしながら小走りで帰宅をした。
なにか事情があるんだろうけど、
付き合っているんだからその事情を俺に話してくれてもいいじゃん。

俺ってそんなに頼りない?












でも、今月いっぱいはって言っていた。
つまり来月になれば通常運転のチャンミンに戻るということだ。
だから俺は寛大な心で待つ男を演出すべく何も聞かないを徹底した。













そうして月末が近づく頃に、


「ユンホさん、次の日曜日はその…テーマパークに来ますか?」

『日曜日?えっと…バイトは休みだから行く予定だけど』

「よかった……絶対に日曜日は来てくださいね!」

『どうしたの?あ、まさかTBちゃんが何か特別なことでもするの?』

「それは…言えないんですが、でも絶対来てくださいね!絶対ですからね!」



先週末も行ったのに、来るように促されたのは初めてだ。
これは絶対に何かある。

もしかして、ショーでTBちゃんがセンターとか?!

それならチャンミンが一生懸命ダンスの練習のために忙しくしていたと理由付けできる……




『TBちゃんがセンターなら絶対に写真に収めたい…』





俺はそんな期待を抱き日曜日にテーマパークへと向かった。




















Cside


「やばい…人が集まってるよ…」

"いつも通りだと思うけど?"

「メインキャラのミノには分からないんだよこのプレッシャーが」

"TBだってたまにショーに出てたじゃん" 

「端とセンターじゃ雲泥の差だ。それにみんなTBを見てなかったから…でも今日は………あぁぁぁぁぁぁ」

"ユンホさんはいつもTBしか見てなかったけど?"

「不特定多数から見られるとはわけが違う。それに今日はTBにとっては最後だし、ユンホさんに有終の美を見てもらいたい」

"……………いつからTBの気持ちまで代弁してんだよ…ま、めっちゃ練習したしさっきのリハも完璧だった。だから大丈夫だよ"

「………うん。あぁぁ胃が痛いよ」

"でもユンホさん知らないんだろ?"

「………………」

"TBが今日で最後ってこと"

「うん…」

"ユンホさんどうなっちゃうんだろう"

「…………わからない」





ショックはショックだろうけど、
そのショックは僕の想像を遥かに超えるだろう。
そんな時、恋人である僕が支えてあげられると良いんだけど。












園内にはTBが今日で最後ってのは何も記されていない。
ショーの最後に挨拶程度、TBがペコリと頭を下げアナウンスで最後だということを伝えるのみ。


ユンホさんの気持ちを考えたら僕の心臓が痛くなる。















♪♪♪♪♪♪〜




"始まる合図だ"

「うん。行こうミノ」

"頑張れよTB!"

「………うん!」










音楽とともにキャラクターたちはステージへ向う。

子どもたちのキャッキャッとした声援や大人たちの拍手に包まれる空間。



僕ことTBがステージの真ん中に行く。
今まで見てきた景色とはまるで違うお客さんからの視線に怯みそうになったけれど、
そのお客さんの中にいつも似つかないユンホさんがポカンとした表情で僕を見ている。


TBがセンターで呆気にとられているようだ。












僕はここ数日死ぬ気で頑張って練習をしたダンスをユンホさんに披露する。

短い手、重い顔、動きづらい足、
それらを自分の身体のように動かすのは至難の業だけど、とにかく必死で周りの人気キャラクターからはお客さんを煽る手拍子がされお客さんが一体となったのが分かった。



ユンホさんも極上の笑顔で子どもたちと同じように手を叩きながらTBに声援を送る。

いつものユンホさんは大人の男がキャラクターに声援を送るのは変に思われるからと声には出さずに応援をしてくれている。
でも今日は、周りを気にせずに声を出してくれている。



そんなユンホさんの姿に僕はアドレナリンがでてハイになる。






ユンホさん。
僕はあなたに幼少期に恋をして、
そしてあなたに近付きたくて希望校を変更し、こうしてあなたの大好きなTBになって今あなたを喜ばせている。


僕の人生であなたは僕に大きな影響を与えてくれたんです。



だから僕も最後のTBをあなたに捧げるために頑張ります。



























パチパチパチパチパチ





"本日は当園のショーをご観覧いただき誠にありがとうごぞいます。
本日センターで皆さまにダンスを披露したTBは、誠に残念ではございますが本日付けで卒業することになりました。長い間愛してくださり感謝申し上げます"


ペコリ


"最後に大きな拍手をお願いします"




パチパチパチパチパチッ
パチパチパチパチパチッ




"TB〜お疲れ様でした〜!!"













そうアナウンスされ僕は短い手を振りながらステージを降りた。



ザワザワしたお客さんの中にひとり、
立ち尽くしているユンホさんの姿が脳裏に焼き付いている。



「ユンホさん……」




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