都江堰市内には、至る所に仮設住宅やテント村がある。

テントはいうまでもないが、仮設住宅にもエアコンなどは無い。
蒸し暑い四川の夏を乗り越えるにはあまりに厳しい環境だ。

タテキング blog   「荒野を行く?」-仮設ロング

今回、「被災者の暮らしぶりを知りたい」と向かったのだが、
仮設住宅への外国人の出入りについて、公安が厳しく目を光らせているという。
仮設住宅の集まっている場所には、特に柵や門があるわけではないが、欧米人など、見るからに外国人と分かる人間が中に入ると、公安が飛んできて追い出すらしい。

オリンピックで盛り上がる中、すこしでもマイナスになるような情報は漏らしたくないということなのだろうか。

今回、現地の人間とコネクションが出来て、公安と実際の被災者に話をつけてもらったが、「日本人と分からないようにしろ」と言うのが条件だった。
そこで、「カナダ系中国人」ということでインタビューなどにも答えてもらった。


被災者は一軒ごとに四川省政府から、一日10元(160円)ほどの現金と、1キロの米を支給されているが、やはりそれだけでは十分な暮らしぶりが出来るはずも無い。
しかもその支援も、8月で打ち切られるらしく、9月からの生活に大きな不安を抱えていた。
何よりも大きな問題は、仕事が無いという事らしい。

街の復興については、四川省政府が主導して行うため、そこで必要な人足などの仕事も、すべて国の都合で突然始まり、突然打ち切られる。
街の目玉であった観光地にも旅行者は寄り付かず、現金収入のあてはほとんどなく、ほとんどの住民が途方に暮れる毎日を過ごしていた。


加えて、いまだに家族を失った現実を直視できない被災者もいる。

タテキング blog   「荒野を行く?」-被災者 涙


小学生の一人娘を亡くした父親は、蒸し暑いプレハブ小屋の中で、涙を流しながら、娘の写真を見つめていた。

「何故こんな事になったんだ・・・」

嗚咽に混じりにつぶやいた。

タテキング blog   「荒野を行く?」-被災者 子供の写真


14歳の少女は、妹を亡くした。
今はまだ学校が始まっておらず、ベッドの横の食卓で英語の勉強をしていた。
彼女の夢を聞くと、笑顔で「医者になる事」と片言の英語で一生懸命話してくれた。



確かに3ヶ月程度では、まだ震災直後と同じ状態。
何も進まないという現実も分からないではない。
神戸の震災の時も、そうだったと思う。
しかし、だからこそ、伝え続けて行かねばならないはず。


今は、世界の目が北京に集まっている。
それは致し方ない。
問題は、その後だ。

来月から中国政府は被災地の現状を、
どのように捉えて支援し、世界に発信して行くのだろう。

またいずれ、この街には戻ってくる事になりそうだ。

タテキング blog   「荒野を行く?」-被災地 人形


タテキング blog   「荒野を行く?」-がれき椅子