遠い昔‥練馬の果てで‥エピソード17 | 立川雲水のブログ

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「談志師匠は良い人だと思うんだけど‥どうにもあの取り巻きの人達がねぇ‥」藝界関係者や落語家社会に精通する人々からこの台詞を何度聞かされた事であろうか。

確かに家元の周辺に巣食っていた人物には弟子ながら前座ながらにも「この人はちょっと(人として)どうか?」と思わざるを得ない様なタイプの輩がいた。

永く家元のマネージメントを務めていた男。マネージャーだからマネージメント料をとるのは当たり前。カスリを取るのが自分の仕事。しかしながらこの男の場合はその職責に対して度を越して熱心に過ぎた。

俗に言う「ピンハネ」とは藝人側とマネージャー側とのギャラ配分の割合のことで「藝人9割:マネージャー1割」が常識的な分配率である。つまり「ギャラの1割(ピン)分を弾く(ハネる)」からこそ「ピンハネ」と称される訳だが、この男にかかると藝人側から見れば「ピンハネ」どころか「ピン貰い」か「ピン残し」としか言えない有り様で「マネージャー9割:藝人1割」みたいな遣らずボッタクリ形式が当たり前であった。

ある時などイベント出演のギャラを「先方の都合で現物支給になった」などという猿でも分かる嘘をつきながら50度数のテレホンカードで済ましやがった。そのテレホンカードを公衆電話に突っ込むといきなり45度の表示だったのには笑ったが。

勿論家元相手にはここまでエグい真似はしない。横車を押し通されても煮え湯を飲まされても文句を言わない(言えない)若手達が奴の餌食となるのだ。言っちゃぁ何だがこちとら此奴にいくら毟られたか計れやしない。

有り難い事に噺家を可愛がって下さる旦那衆は今も昔もいらっしゃる。食うに困っていそうな若手に小遣い・祝儀を渡して下さったりもする。件のマネージャー氏、お旦が「これ若手さんに」ときった札ビラを右手で受け取り「お~い頂戴したよ。御礼を言いな」てなこと言いながら左手で若手にその祝儀を渡すのだが、彼の右手から左手に移動した瞬間に諭吉が漱石に変身していたとの目撃談がある。

麻雀好きでよく卓を囲むこの男。盲牌した【伍萬】をそのまま「伍萬」と言って捨牌したのだが何故かそこに捨てられていたのは【一萬】だったと聞いた事がある。

配牌時に奴の手牌に入り流局時まで留め置かれた一索の鳳凰が一局の間に鶏ガラになっていたとも噂される。

リーチを宣言し下家の手をヒョイと覗くと国士無双13面待ち。ぶるってツモると不安的中の「北」を掴んだ。「あっ、ごめん!ちょっと急ぎの電話一本忘れてた!すぐ戻るから」と言い残して出て行ったっきり逃げちゃった。遺された3人がこう言ったという「さすがにペイ【北/PAY(支払い)】を踏み倒させたら天下無双やな」