最近、豆乳を飲む事が増えましたが
豆乳、ものすごい種類があるんですねえ、、
どっちかというと
美味しくないイメージを持っていましたが
美味しい
イチゴ味はお気に入りです
さて、本題。
近衛十四郎さん。
時代劇ファンの方なら
知らない方はおられませんね
柳生十兵衛と云えばこの方!
という 当たり役もお持ちの
東映時代劇黄金期を飾られたスターさんです
当時の東映は、、
年に何本か、
東映オールスター出演の
娯楽大作映画が上映されておりました。
片岡千恵蔵御大、
市川右太衛門御大を筆頭に
東映京都のスターさん総出演
それは豪華絢爛なものでした
この中で、近衛さんが
片岡御大との
一騎打ちをされたのも印象的でしたし、
市川御大との殺陣では、
御大を引き立たせる立ち回りでありながら、
近衛十四郎ここに在り!
と言わんばかりの存在感を放ち、
一歩も引けを取らない、
豪快かつ独自な刀捌き。
子供の頃に観た映画でも、
そのお姿に目を奪われたものです
そんなスターさんたちの
素晴らしい殺陣に憧れ
橋蔵先生に弟子入りした訳ですが、、
弟子入りから数年、
橋蔵先生が
テレビの銭形平次を撮影されている頃、
近衛さんは 柳生十兵衛に続き、
素浪人 月影兵庫
という作品を 撮っておられました。
僕は橋蔵先生にお付きしているわけですから、
撮影入りの時など、
同じく月影兵庫の撮影に入られる近衛さんと
遭遇する事もありましたが、、
おぉっ、あの近衛十四郎さんやあ、、、
ほぼミーハー的気分で
そのお姿を見送るばかりでした
やがて 東映の演技課所属の俳優となった僕は
役者として、
あの素晴らしい先生方に追いつくべく
殺陣の稽古に励み、、
徐々に その現場にも
出させて頂けるようになってきました。
しかし、まだまだひよっこ
駆け出しのぺーぺーな僕は
先輩の代わりの 死体役が多くて
なかなか殺陣では かかれません
早う 殺陣で芯にかかって行きたいなあ、、
クライマックスまで残って死ねる
立派な殺陣メンバーを夢見て
日々 勉強あるのみでした
そんなある日の事。
会社に行き、予定を確認いたしますと、、
近衛さんの殺陣メンバーとして
峰の名前があるではないですか!!
何かの間違いでは?
と確認しますが、
どうやら本当にメンバーのようです。
その時点では、
どういう立ち回りかは、わかりません。
もしかすると、開始と同時にいきなり斬られて、
いつも通り、かかれぬまま死体かもしれません。
しかし、どんな形であれ
あの近衛さんに絡めるかもしれない、、
緊張と興奮で
早くもお腹を壊しそうな勢いです。
【 いただき勘兵衛 旅を行く 】
という シリーズものです。
当時、近衛さんは
ご高齢ではありましたが、
その殺陣、刀捌きに衰えは微塵もなく、
年齢など感じさせないものでした。
さて、その現場。
当然ですが、
目の前に近衛さんがおいでです。
先輩方を相手に、
サクサクと殺陣をされています。
僕、そのお姿を目にしただけで
口から飛び出そうな心臓を
飲み込むのに必死です
落ち着け、蘭太郎、、、
リハーサルに入り、
殺陣師さんが動きます。
このチャンスに、
近衛さんの技を
余す事なく目に焼き付けたい僕は、
どういう死体でいれば
そのお姿を取りこぼしなく見ていられるか、
なんて 必死で考えながら
殺陣師さんの動きをチェックしておりました。
「 おい、お前や 」
ふいに声がかかります。
、、へっ?
「 お前や 」
殺陣師さんが僕を指します。
なんと、、
殺陣師さんが
僕にも手を付けてくださったのです、、!
近衛さん、数人斬って移動する
僕が近衛さんに刀を突き出す
近衛さん、それを叩き落し
斜め右上から袈裟で僕をズバッ!
近衛さんはキメの構え、
ジリジリ移動される中、僕は死んでゆく
そんな手でした。
手がついた上に、
最後の方で死ねるなんて、、、
一瞬で月に到達しそうな気持の高揚と同時に
その重責に、とんでもない緊張感が襲います。
まずは手合わせいたしますが、、
髪の毛先を震わすのではないか、
と 思うほどの鼓動が打ち
力ばかりが入ります。
殺陣は力が入っては格好になりません。
力を抜かねば、とアタマで解っていても、
体はガチガチです。
タイミングを合わせられる、というのが精一杯。
そんな緊張状態のまま、迎えた本番、、、
よ~い、スタート!!
開始と同時に
まるで近衛さんに何かが憑依したかのよう。
リハでは見せなかったスピードと迫力に
足が竦みそうです
息もつかせぬ勢いで
数人を斬るその刀捌き
スクリーンで見るのと比にならぬ迫力
凄い、、、!!
目を奪われ 見惚れた
次の瞬間、
もう、目の前に近衛さんがおられました
い、いけない、、、!!
無我夢中で刀を突きだします。
それを 近衛さんの刀が叩き落す手です。
僕は 刀の衝撃を覚悟します、、、が
ふわっ
僕の手には
撫でるように触れた、
ような感触しか伝わりません。
が、
僕の刀は間違いなく、
ガチャーン!と叩き落されたのです。
、、、
その状況が理解できず、
放心してしまったその一瞬に
近衛さんはすでに
斜め右上に刀を振りかぶっておられます
、、はっ!!
気付くと同時に、
ガーーーーーーッツ!!!
近衛さんの気合いの声、同時に
ヒョンッ!
という音とともに
僕の鼻先を刀が走り、
胴に 袈裟斬りを食らいます
近衛さん、僕より小柄なお方ですが
ご使用の大刀サイズは
僕らのものより30㎝程も長いのです
その大きな刀身を、
こんなに狭い近衛さんと僕との間で
何にもあてずにスパッ!と斬られ、、
ただただ驚きました
崩れながら見る、目の前の近衛さん、、
しっかり柄を握る両の手をクロスに返し
その柄は 左肩上に、
刀身は 後頭部斜め上へ伸び、、、
ああ、、
映画で見た 残心のポーズや、、!!
※残心(残身)
殺陣が終わった時のポーズ。
ものすごく砕いて言えば決めポーズ、みたいなもの。
殺陣に入る前が前身、 殺陣の最中が中身、
殺陣の終わりが残心(残身)
目は飛び出さんまでに見開き、
唇の端をギリィッと噛みしめ
ギュッと据わった腰のまま
踵でジリジリ動く その姿
まるで仁王像の姿のようで、、、
倒れながら
本当に斬り殺されたのかもしれない、、
なんて 思いました。
近衛さんに圧倒され
今、自分の居る場が
撮影中の現場なのだと言う事を
忘れてしまったほどでした、、
しかし、、、
あの 刀を叩き落された時の感触。
僕には初めてで 未知の感覚。
まったく理解ができず、
不思議で不思議で
撮影後、
殺陣師さんに 尋ねに行きました
その答えは。
刀に傷をつけないため。
ご存知の通り
撮影に使う刀は
竹光に錫箔を張ったものなのですが
これを思い切り叩くと、
当然、衝撃で箔が剥がれたりします。
近衛さんは、残心で
顔の横で構え、
刃がしっかり映る位置に来るから
刀に傷がつくと しっかり目立ってしまう。
どんなに格好よく決めポーズをとっても
ぼろぼろの刃が見えては
そっちにばかり目が行き
カッコいいとは 言えません。
だから、その刀に傷をつけないよう、
握る力を柔らかく、
衝撃が 逃げるように持ち
スピードで叩き落したように見せつつ、
実際は軽く触れて落とすテクニックを使っている。
、、、という事でした。
そんな細心の注意を払いながら、
迫力に見劣りせぬよう、技で魅せる。
正に匠の成せる技です
心底、感服仕りました
近衛流。
殺陣師さんが近衛さんを語る時、
決まって口にされた言い方です。
たった一度の絡みの機会でしたが
今もなお、刀捌きのお手本となっており
僕にとっては近衛流に触れられた
貴重な体験となりました
月影兵庫。
その後、ご子息の松方弘樹さんも演じられ、
何度も殺陣で絡ませて頂けました。
松方さん
近衛流をしっかり受け継がれた、
迫真の刀捌きで
親子二代に渡り、
この殺陣に絡む事ができたこと、
僕にとって大変な宝物です、、、
あの日から
近衛さんのような刀捌きが出来るよう、
必死で勉強をしましたが、、
未だ、追いつけたなあとは思えていません。
永遠のテーマかもしれませんね、、
この歳にはなったけど
いくつになっても、
追いたい目標があると言う事は
幸せな事だと思います
生涯現役、生涯精進、、、
ところで。
近衛さんの 巧みな技術や
その迫力など
僕のつたない文章では
伝えきれなくて
読んでいても
どういうことなのかな?
と、理解に困ると思うので
解説付き実践動画を撮ってみました。
(サイズの関係で2本に分けています。二本続けてご覧ください)
近衛さんにはまったく追いつけておらず
狭い室内で動きも制限され
まったく 似ていないのですが、、、
文章とあわせて、
ああ、そういう事ね、と
少しでも ご理解頂けたら幸いです、、、