「爬虫類の知性について考える」

日ごろ爬虫類について考えたり書いたりしてるので、せっかくなので投稿します。以下長いです…



爬虫類の知性は、「爬虫類脳」という言葉に代表されるように、動物として非常に低レベルであると考えられている。しかし最近になって、これまでマウスで行われてきた”学習”の実験系が爬虫類にも応用されるようになり、爬虫類の知能について新たな知見が得られ始めている。

2011年に、米国デューク大学のManuel Lealらがアノールトカゲ (Polychridae) を用いて、爬虫類は学習できることを見出した。研究チームは、木片に2つの穴を作り、片方の穴にのみ餌を入れ、餌を入れた穴にのみ、キャップをかぶせた。トカゲを木片が設置されたケージに入れ、数日のトライを行うと、彼らはキャップを除去して餌を獲得することができるようになった。さらには、餌を入れた穴に青のキャップを乗せ、空の穴に黄色のキャップを乗せて数日トライしたところ、青いキャップの下に餌があることを学習した。(私は、餌の匂いなどのファクターを感知している可能性は捨てきれないと考えている)

トカゲの学習能力と社会性の関連性についても、2014年に英国リンカーン大学のAnna Kisらによって報告されている。研究チームは、フトアゴヒゲトカゲ (Pogona vitticeps) を用いて、ケージからの脱出実験を行った。内容を簡潔に述べると、ケージの扉を開けることができるフトアゴヒゲトカゲと他のフトアゴヒゲトカゲを同居させた場合、もともとケージの扉を開けることが出来なかったフトアゴヒゲトカゲはケージの扉を開けることができるようになる、というものである。
この研究結果から、フトアゴヒゲトカゲは他の同種の個体の行動を真似ることができ、さらにはその行動の末に起こることを学習することができると考えられる。また、フトアゴヒゲトカゲが同種の行動をもとに行動し、学習できることから、野生環境において何らかの社会性を持っているのではないかという見解もある。

他にも興味深い研究結果があり、フトアゴヒゲトカゲは体色の変化でコミュニケーションをとっている可能性も示唆されている。

このように、爬虫類の学習能力については、私たちがこれまで考えていた以上に高度であることが分かってきている。私は、誤って飼育しているコーンスネークの尻尾にシェルターを落としてしまったことがある。コーンスネークはそれ以降、ひと月程度の間、人間の手を見ると噛みつき行動をとるようになった。恐怖記憶がひと月で消失するのか、ひと月で人間の手は自分に害を及ぼすものではないと学習したのかは定かでないが、いずれにしても、ひと月の間コーンスネークに恐怖の記憶が維持されていたと思われる。数回トライし学習させた恐怖記憶ではないにもかかわらず、一度きりのトライでひと月もの間恐怖記憶が持続したことには驚きを隠せない。

爬虫類の飼育方法が確立されつつある現在より、更に爬虫類の研究が進んでいくことだろう。