Knock, and it shall be opened unto you.


観てきました。(ちょっと前だけど)
感想を一言で言うなら、He's just so professional.

ここしばらくはメディアでも彼の奇行ばかりが取りざたされ
マスクをして杖をついて子供と歩くような映像を見たり
鎮痛剤なしじゃ暮らせないというような報道に、
正直本当にコンサートなんてできるのかなと思っていた。

でもこの映画を観れば、それは杞憂であったと誰もがわかる。
もちろんリハなので、100%の力でのパフォーマンスは見せてないのだけれど
マイケルは歌も踊りも少しも衰えてなんかいなかった。
とても50歳とは思えない動き。
すごいよ、マイケル!むしろ13年前のツアーよりすごいんじゃない?

ブランクなどまったく感じさせず、ダンスにも演奏にも演出に関しても
迷いがなくビシバシと的確に指示を出していく姿は、まさにプロフェッショナル。

その言い方はすごく穏やかで相手を気遣う優しさを見せながらも
ほんの少しの妥協も許さない。
それは彼のショーマンとしてのプロ意識の高さからくるものだけど
誰にでもできることではないと思う。
「ベースの音はこうしたらもっとよくなる」「テンポはこう」
ほんのわずかな違いなのに、マイケルの指示によって実際グッと気持ちよく一段と洗練される。
彼は一流のパフォーマーであるだけでなく、自分の求めるものがはっきりしていて、
どうすればいいかも分かってる。プロデューサーとしても優れた人だったのだなと思った。

私はこの映画を見ながらどれだけ涙を流したか分からない。
今年一番泣いた映画だ。
私はそこまでマイケルのファンといえるほどでもないし、
彼が亡くなったことが悲しくてというよりも、むしろ彼のプロぶりに感動して、
そして1人の働く男としてかっこよすぎて、
そしてパフォーマンスが素晴らしすぎて、感動してほとんど涙がとまらなかった。
実際これはすばらしく楽しいライブ映画なんだもん。

もうマイケルのかっこいいことったら!胸キュンしまくりですよ。
スーパースターを目の前にして、目をハートマークにして歌を聞くダンサーたちの
気持ちがよくわかる。
個人的にツボだったのは、いろいろ指示や指摘するシーンもだけど
バックで流すビデオ撮影に現れ、ダンサーたちに自らフリを教えてあげるところや、
I can't stop loving youで熱気が高まり思わず本気で歌ってしまって「本気にさせるなよぉ」と文句を
言うところや(デュエットした女性歌手はマイケルが近すぎてドギマギしてた(^_^;))
「MJ航空」とか言ってフライトアテンダントの身振りをマネするところ、
そして女性ギタリストに向かって「もっと思いっきり弾いて。大丈夫、僕がそばにいるから」と言うところとか、
セクシーでチャーミングなマイケル満載で、本人は至って普通なのだけど、
周りの人は「ほれてまうやろー!!」と叫ぶしかないっちゅうの。
キムタクとか谷原章介とかみたいにわざとドキドキさせようとする意図も
自意識過剰なサービス精神など微塵もないわけです。
そしてビデオの撮影シーンでマイケルはちょっとした演技をするのだが、
それも本当に「さすが!」のひとことで 完璧!本物!
Billy Jeanも鳥肌立ったし、ああもうマイケルかっこよすぎ。
マイケルのかっこよさをすっかり忘れてました。

あと、このコンサートの豪華さにもおどろいた。
お金がなくなったから、コンサートをやることにしたなんて規模じゃない。
あれだけのセットと出演者、演出、バックで流す新しい映像など作ったら
準備だけで数億はかかるでしょう。

なんか、本当のマイケルを初めて見た気がする。
スーパースターという肩書きの前に、大人の働く男。真のプロフェッショナル。
50歳には見えない可憐で無邪気な雰囲気のあるお兄さんだが
奇人でも変人でもない。
実際、メディアに向けでない普段の本人が放った言葉を聞くのは初めてだった。

この映画の素晴らしいところはそれを見せられたことだと思う。
マイケルの作り上げるショーは、もちろん素晴らしいもので
私は幸運にもヒストリー・ツアーを東京ドームで見ることができたので
その感動も肌で感じることができた。
でも、ステージの上のショーはショーであって、素のマイケルの姿は見えない。
マイケルがスタッフへの挨拶で「観客が求めているのは日常からの脱出だ。
未体験の世界に連れていこう」と言っていたように。
メイキングを見ることで、素のマイケル、仕事人マイケルと見ることで
マイケルの偉大さがあらためてよく分かる。

そしてもう一つ、一番大事なのはマイケルのメッセージだ。
彼は早くから環境問題に取り組み、警鐘を鳴らしてきていたけど
それは今回のコンサートの大きなテーマでもあった。
MJにとってそれは本当に大切なことで、ダンサーやスタッフにも
「誰かがやってくれると思ってちゃダメなんだ。僕たちから始めなきゃ。
あと4年以内に本気でどうにかしなきゃと思ってる」と言っていた。
彼は自然を、地球を愛していて、本気で守りたいと思っていたんだ。
こういうメッセージを発信できる人はやっぱり素晴らしいと思う。

真のMJファンのトライセラの和田くんもブログで書いてたけれど
私も同じことを思ってしまった。
そのメッセージを伝えるためにこの映画が生まれたのだと。
マイケルが生きてたら、彼のメッセージはロンドンの会場の観客にしか届かない。
でも映画になったことで世界中の何十億人にも伝えることができる。
そのためにスパースターは天に召された。
でも逆に、神様がチャンスを与えたんじゃないかとも思う。
もうボロボロだったマイケルが、あれだけのパワーと煌きを取り戻したのは
この使命を全うするために神様が与えた最後のプレゼントだったのかもしれない。

この映画を見ながら、時間が過ぎるにつれ「終わってほしくない!」と思った。
楽しい時間を終わりにしたくないから、そして亡くなった人とつかの間の再会を果たしたように
離れがたい気持ちになった。
感動やときめきで流していた涙は、エンドロールで悲しみの涙に変わった。
ああ、マイケルはもういないんだと思うと本当に悲しかった。
エンドロールが終わった後、最後にもう一度マイケルからのメッセージが流れる。
たまらなかった。

すばらしい映画をありがとう、ケニー・オルテガさん。

今年は偉大な音楽家がたくさん天に召されてしまった。
中でもマイケルは特別というか、やはりどこか人間離れしていた。

マイケルに対し人々は「We love you!」 と声をかけた。 I じゃなくて We。

世界中の多くの人に喜びを与え救ってきた彼は天使のようだった。

彼のメッセージを受け取った者として、私も小さな努力を始めようと思った。