【JR東日本が犯した罪 その2】特急停車駅削減でJRに振り回された長野県 | しなのは走るよ♩♫どこまでも☆♩♫♬

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その1では、E353系電車の投入によって悲運な末路を辿った信州しなの料金回数券について紹介しました。




今回は、2021年3月に実施された『JR東日本のダイヤ改正による終電繰り上げ』に関連して、2019年3月、2020年3月にJR東日本のダイヤ改正によって発生した



E353系特急あずさ号の

停車駅に関する問題



について触れてみたいと思う。



この事について扱った記事はたくさんありますが、地元(長野県)出身者として改めてこの問題を考察する。


[写真1]かいじ号の運用も兼ねる(2019年9月撮影)。



 中央東線の新エースE353系


まず、あずさ号とE353系電車の概要から取り上げる。


[図1]かつては千葉〜南小谷を結ぶ列車も存在した。


『特急あずさ号』は、都内と甲信地方の結び付きを円滑にする事を目的として、1966年に181系電車が運用に入る形でスタート。


その後183系・189系が投入され、特に1990年代〜2000年代に投入されたE351系やE257系によって飛躍的に速度が向上し、あずさ号運行開始当初約4時間かかっていた新宿〜松本間は2時間25分に短縮される。


E353系は、あずさ号の更なる高速化を目的としてE351系とE257系を置き換え、新宿〜松本間を最速2時間23分(歴代最速)で結ぶ事を実現した、最新型特急電車だ。


[写真2] E257系は臨時列車としてごく稀に運行がある。


前身のE351系(最速2時間25分)と比較すると、約2分間の短縮に成功。

1966年の運行開始当初(最速3時間57分)と比較すると、これは驚異的な速さである。




 快適性も重視


[写真3]E351系の様な窓際席の狭小感とは無縁の普通車。



また、E353系はE351系で不評を買った振り子装置を廃止して空気ばねを導入したことによって、最大5°あった曲線通過時の傾斜角度を1.5°に抑え、フルアクティブサスペンションを装備した事で全体的な乗り心地の大幅な改善に成功


[写真4]グリーン車のトイレ。電子ロックをかける事ができるため女性1人でも安心。



更にグリーン車には商業施設顔負けのトイレを設け、普通車・グリーン車共通で全座席にコンセントとフリーWi-Fiを完備した事で「便利さ」「快適さ」を揃えた列車として高い評価を得る。



新宿〜松本間最速2時間23分のダイヤが実現したのは、2019年3月16日のダイヤ改正時。


[図2]自由席が無くなった事も話題を呼んだ。


『中央線が、変わる』のキャッチコピーの元、「速さ」「便利さ」「快適さ」と三拍子揃ったE353系が君臨する事で、観光・ビジネス需要の期待は膨らみ、鉄道ファンをはじめ沿線自治体も、中央線特急新時代の幕開けを大いに祝福するはずだった。

しかし!その裏で密かに計画された沿線自治体を軽視するダイヤ改正が、後に地元の反感を買う様になる。


[写真5]JRの闇とは・・・?



 最速ダイヤ実現のため裏で計画された『上諏訪飛ばし』


実はこの時のダイヤ改正では、1つの大きな問題点があった。



それは


沿線の特急停車駅の削減



である。


[写真6]停車駅から上諏訪が消えた・・・!?



JR東日本は、E353系投入に伴い特急あずさの更なる高速化を図るために、長野県の特急停車駅において、停車本数を削減するという方針を打ち出したのだ。


具体的に削減された本数は次の通りである。


・塩尻駅  32本→28本

・岡谷駅  33本→28本

下諏訪駅 16本→4本

上諏訪駅 36本(全停車)→34本

・茅野駅  36本→36本(変更なし)

富士見駅 11本→4本


特に『下諏訪温泉』の最寄り駅である下諏訪駅と、『八ヶ岳観光』の拠点駅である富士見駅では停車本数を大幅に削減。


[写真7]岡谷駅を高速通過するあずさ32号(2019年12月)。



さらに、特急あずさの運行開始以来、全ての特急列車が停車していた上諏訪駅に通過列車が2本設定された事が更に波紋を呼んだ。


[表1]2019年8月のダイヤ。上りのあずさ12号は上諏訪駅を通過する。



上諏訪駅は、長野県屈指の観光地である『上諏訪温泉』の最寄り駅で、駅の周辺には20を超す温泉関連施設があり、駅の平均利用者は1日あたり約4,200人を超える。


これまで45年以上に渡って全てのあずさ号が停車している観光拠点駅であり、諏訪市内で唯一の駅のため交通の要所でもある上諏訪駅。


しかし、いくらあずさの高速化の為とはいえ、長野県の重要な観光拠点駅を通過させてしまうのは、沿線住民や自治体を軽視するJR東日本の方針が垣間見える。


[写真8]上諏訪駅から徒歩10分の高級ホテル「ホテル紅や」。下諏訪駅・上諏訪駅周辺の温泉施設は30を超える。



実はこの方針、1992年に運行が始まった東海道新幹線「のぞみ」の、『のぞみ301号』で行われた『名古屋飛ばし』と良く似ている(詳細はこちらをご覧下さい→東海道新幹線『名古屋飛ばし』)。


つまり、あずさ号の更なる高速化のためには都内の複々線化もしくは茅野〜岡谷間の複線化を行うべきであるが、現実的には用地買収の問題がクリアできないため不可能である。


しかしながら、新型車両を導入するにあたって時間短縮を売りにできないのはアピールポイントとして足りない。


そこで、上諏訪駅を通過させるダイヤを組む事で『歴代最速ダイヤ』を強引に実現させ、アピールポイントの材料とした訳だ。


[写真9]最速2時間23分のダイヤは、ビジネス利用者からは一定の評価もある。


歴代最速ダイヤが実現できれば、快適性のアピールにも相乗効果が期待でき、何よりE351系では劣勢にあった、競合交通機関である高速バスとの価格競争においても有力な対抗手段となる。


JR東日本にとってE353系導入と最速ダイヤの実現は必須事項だったのかもしれない。




 山梨県内でも行われた3駅飛ばし


最速ダイヤ実現の裏で行われた『上諏訪飛ばし』をはじめとした特急停車駅削減問題。


実はこの問題は長野県内だけの話しではなく、山梨県内の特急停車駅でも同様に停車本数の削減が行われた。


[写真10]山梨県内で唯一全てのあずさ号が停車する甲府。



山梨県内で停車駅を減らされたのは、新宿方面から順に大月、塩山、山梨市、石和温泉、韮崎、小淵沢の6駅。


特に、塩山、山梨市、石和温泉の3駅は、それまで6〜10本のあずさ号が停車していたが「全てのあずさ号が通過する」様にダイヤが設定される。


これが意味するものは、これらの駅と松本を相互に直通する特急列車が無くなるという事であり、JR東日本のこの方針は上諏訪飛ばしと同様、山梨県でも大きな波紋を広げる事になる。




 信州かいじ号の新設


[写真11]尻拭いの役割を着せられた信州かいじ55号。



JR東日本は、ダイヤ改正に合わせて『信州かいじ54号・55号』という臨時列車を新設。


この列車は、観光シーズンの土日祝日を中心に運転される臨時の特急列車で、表向きは列車名が違うだけであずさ号と同じ新宿⇄松本を結ぶ特急列車。


しかし裏向きは、削減されたあずさ号の停車駅を形式上補填する為に尻拭いの役割を着せられた特急列車なのである。


この列車の停車駅は、次の時刻表を見て頂くと長野県内の上諏訪をはじめとした特急停車駅に全て停車し、山梨県内の塩山、山梨市、石和温泉に停車する様にダイヤが組まれている。


[表2]2019年8月〜9月の信州かいじ54・55号のダイヤ。

あずさ号との違いは山梨3駅の停車のみだ。



本来ならば臨時の「あずさ号」でもおかしくないダイヤ設定だが、わざわざ「かいじ号」とする必要性があるのか正直疑問。


これは恐らく、JR東日本があずさ号の特急停車駅削減ダイヤを計画した際に、停車駅を削減された地元住民や自治体からの反発をある程度予想していたので、「あずさ号を停めない代わりに別の列車を用意する」事で反発を抑える算段だったのではないかと思われる。


あずさ号の高速化の為にわざわざ列車を新設し、定期列車・臨時列車問わず、あずさ号は「山梨3駅には絶対停めない」というJR東日本の姿勢はすごく徹底していて、それだけ最速ダイヤ実現に重きを置いていた事がわかる。




 一方的なダイヤ改正に反発が集中


これだけの過去に例を見ない大規模なダイヤ改正を行うに当たって、JR東日本は停車駅削減について地元との協議を行う事なくこの方針を決定し公式に発表。


JR東日本側の「一方的」とも言える決定方針に、停車駅を半ば強制的に削減された長野県及び山梨県内の沿線自治体は強く反発。


[写真12]塩尻駅を高速通過するあずさ6号(2019年11月撮影)。



長野県では諏訪地域6市町村と塩尻市、木曽地域6町村などの約40の団体が、『ダイヤ改正の見送りを求める嘆願書』をJR東日本側に提出する事態に発展。


当時の長野県知事も



「東京都内区間の複々線化など抜本的な部分に取り組むことなしに停車駅数が減らされてスピードアップするというのは、我々の期待する方向ではない」(出典:日本経済新聞2019年1月11日)



とJR東日本側に言及。


山梨県では、ダイヤ改正の見直しを求める県知事名の要望書、また、山梨3駅がある甲州市、山梨市、笛吹市が同様にダイヤ改正の見直しを求める要望書をJR東日本側に提出。



これに対してJR東日本は


「速達性を優先したダイヤ改正」
「ビジネス客からの要望」

と回答している。



JR東日本があずさの高速化を重視する姿勢は、ビジネス客のニーズや新型車両投入のメリット等を考えると、地元出身者の私としても一定の理解はできる。


[写真13]速さと快適さを象徴するグリーン車の乗車口。



しかし、それだけ高速化を重要視するのであれば、JR東日本側の独断で停車駅を減らしたり一方的に方針を決定するのではなく、まずは地元住民や沿線自治体と十分な協議を行った上で一つ一つ確実に決めていくのが筋ではないのか?というのが正直な所だ。


利用者があって初めて成り立つ旅客運送業であるにもかかわらず、肝心の沿線利用者のニーズを考慮しないのではまさに本末転倒ではないだろうか。


この様な経緯を経て、結局、地元自治体とのわだかまりが解消されないまま2019年3月16日、ダイヤ改正が実施される。




 1年後に再びダイヤ改正


ダイヤ改正後、特に停車駅を減らされた下諏訪駅周辺の商店街や旅行施設では、明らかな客足の減少を嘆く声が地元メディアや長野日報をはじめとした地方新聞で度々取り上げられる。


しかしダイヤ改正から約9ヶ月後、とある地方新聞が地元を驚かせる。


[写真14]2019年12月14日付の長野日報。1面ぶち抜きで特急あずさの停車駅増加を取り上げる。



上の写真は2019年12月14日付の長野日報。


見出しは『特急あずさ停車増加』だ。


内容は、JR東日本が2019年3月16日のダイヤ改正で削減したあずさ号の停車駅を、2020年3月14日のダイヤ改正で再び増やすというもの。


[図3]下諏訪は5本増加だが、それでも以前の停車本数と比べるとまだまだ少ない。



特に停車駅を減らされた富士見と下諏訪は、上下合わせて5本増加。



JR東日本側はこの決定について、次の様にコメントしている。


「地域の思いをしっかり受け止め、この間、地元自治体との話し合いを続けてきた」


「利用状況を踏まえて、需要がある時間帯の停車を増やす」


[図4]地元とJR側が上手く折り合いをつけた。



以前の停車数までは戻らないものの、『あずさを停めて欲しいという地元』と『あずさを高速化したいJR』の両者が、上手く妥協し合って決定した事が読み取れる。


しかし、『上諏訪飛ばし』については特に変更される事なくそのまま据え置かれた。




 その後


2020年3月14日のダイヤ改正後、尻拭いの役割を着せられた『信州かいじ54号・55号』は廃止。


山梨県内で行われた『3駅飛ばし』も見直され、何事もなかったかの様にあずさ号が停車する様になる。


[表3]2020年12月のダイヤでは、上りのあずさ44号をはじめ、上り下り合計4本のあずさ号が山梨3駅に停車する。



さらに臨時のあずさ号の停車駅も見直され、長野県内全ての特急停車駅と山梨3駅に停車するあずさ号が数本設定される。


これにより、全体的な停車本数は少ないが、いちおう2019年3月16日以前と似たようなダイヤ設定に戻ったという事になる。




 おわりに


結局のところ、2019年3月16日のダイヤ改正から2020年3月14日のダイヤ改正までの約1年間を地元目線で見ると、「地元自治体との協議なく削減した特急停車駅を、反発を受けてたった1年で再び増やす」JR東日本側の方針は、少々行き当たりばったりではないかと感じずにはいられない。


また、上諏訪駅は2021年3月現在も相変わらず上下1本ずつ合計2本のあずさ号が通過する様にダイヤ設定がされているが、沿線自治体が『上諏訪飛ばし』を容認したかは実際のところ不明。


[表4]2021年3月現在のダイヤ。あずさ17号と18号が上諏訪飛ばしを行う設定だ。



しかし、JR東日本側からしてみれば、地元自治体からの反発はあったものの、最終的に特急あずさの高速化が実現できたのは予定通りと言った所ではないかと思う。


本来ならば何事もなく実現する予定だったあずさの高速化計画。


だが、結果的に地元自治体の反発を強く受けてJR東日本側は「高速化の為の停車駅大幅削減方針」を妥協せざるを得なくなったため、あずさ号の特急停車駅削減問題で振り回されたのは、地元ではなく、意外にもJR東日本側だったのかも知れない。






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 JR東日本が犯した罪


JR東日本が犯した罪 その1


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