7月末に、今回の高速鉄道事故のメディア規制に対して
「こうした痛ましい出来事と鉄道省のお粗末な処理に対して思いつく言葉は――『くそったれ』しかない」
と言った中国広東省の有力紙「南方都市報」は、日本の感覚では日常茶飯事かもしれないけれど、中国ではまさに命がけで伝えただろうと思います。
中国人が当局に対してどれだけ敏感で我慢し続けているかというと、私の身の回りでも些細なことでも感じられました。
以前に中国人5,6人と立ち話をしていて、ひょんなことから
「自分個人の立場とかばかり言わずに、もっと政治や経済についても感じた事とかを言ったらいいのに。ここは日本なんだから大丈夫だって」
ってなことを言ったら、みんな一様に口を閉ざして黙ってしまった。
みんな日本の大学を卒業したエリートでさえです。
日本に居てでさえ、そんな感じだから中国国内ではどれだけ気を使っているだろうと想像していました。
7月29日には中国メディアに「過熱報道を速やかに抑制すること、肯定的な面を報じるか、あるいは大手国有官制メディアが報じた情報に準じること、それ以外の報道、評論を禁ずる」という通達が流れたらしい、新聞社はそれによって記事を削除・割愛しなくてはならなかったそうです。
個人の人間が客観的な判断をしようと思えば、客観的な事実や情報を頭に入れておかなければだめですよね。
しかし、中国人に
「そういうことは、たとえば教育とかで徹底させたら・・・」
なんて事は言ってはいけません。
中国人多くの人は、わかっているはずです。
特に、日本に来た中国人は報道や情報の自由に対して驚く反面、逆にあまりにも多い情報に戸惑って、纏まりきれない状態になっていると思います。だからか結局自分しか信じようとしない留学経験者ばかりになっているように見えるのは私だけでしょうか。
要するに自分が「なめられない」立場になろうと必死になっていて、日本の民主主義の特徴などをゆっくり勉強する暇なんてないって感じでしょうか。
このことは私個人的には悲しいことなのですが・・・。
さらに、報道を規制されたことに憤慨と理不尽を感じながら、規制元は中国当局であって自分の母国そのものなので、ひたすら我慢して黙っているしかないというジレンマも感じます。
だって悪口を言ったら、自分の母国をけなしていることになるから。
今回の鉄道事故で日本に居る私から見て、信じられない行動や対応は、といえば。
・宙ぶらりんの事故車両を20m下に落とした。
・事故車両を埋めた。
・現場検証のいいかげんさ
・死者は100人を超えるだろうにいまだに40人前後
・緊急時運行管理システムの信号は赤ではなく青のまま
・高速鉄道の高架のコンクリートの中からゴミがボロボロ
・遺留品すら探さない
・避雷針の無い落雷対策?
・避雷針はついているが給電設備が無い車両
・過去に何度も同じ対策で処理されていた?
・少女を救助した特別警察隊長が処分された
・無資格の運行監視担当者
・家族に無断で火葬
・過去の事故ではほとんどが死者は35人らしい
ってことでしょうか。
そんなときに、今の菅首相が思い浮かびました。
菅首相は、言動や、やろうとしていることが「間違っている」というわけではありません。
しかし、同調出来ないのは、なぜでしょうか。
数日前に、経済産業省の海江田大臣が菅首相を批判していました。
「個人の言葉なら鴻毛(こうもう:羽毛)より軽い」
そして、もううんざりしているのでしょうね・・・当たり前のことを言わなくてはならない情けなさを抱きつつでしょうが・・・
「総理の言葉は、内閣が一致しての発言なら『泰山(たいざん)』(中国・山東省にある山)より重い。総理発言は泰山より重くあって欲しい」(asahi.comより)
と懇願していました。
組織で意見を言うと、反対意見や様々な意見が出るものです。
それが気に入らないから個人プレーに走ってしまう。
上の立場で先に言ってしまえば、反対意見も弱くなるだろうってなものです。
たまに使うなら「技」でしょうが、使いすぎるとだめですよね。
菅首相は間違ったことは言わないけれど組織を全く使えない、つまり民主主義には似合わない人物ということになると思っています。
きつい言い方をすれば、
街の公園でゴミ箱から拾い出した新聞を読んで一人で吠えている浮浪者に内閣総理大臣という役職と権限を与えたらこうなるのか?
という感じに近いでしょうか・・・要するに不快なわけです。
最近では、組織を使うのがうまかったと思ったのは、小泉元首相でしょうか。
議論の中に自分の意見を細かく口挟まない。
議論でどんどん喧嘩させる。それをニコニコしながら見ていましたよね。
そのくせ信念の部分はマスコミなどを使ってうまく伝えていた気がしました。
自分の思った方向と違えば「ぶっ潰す」と言って壊してしまう。
そりゃあ首相の権限が物を言うから、これでいいと思います。
しかし、菅首相と違って、組織でどんどん決まってゆく。
組織で決まれば後の流れにも大きな支障が出てこないでしょうしね。
中国と違って情報が氾濫している日本。
その中で客観的な判断はしやすいから今の菅首相はかろうじて持っている。
これが中国高速鉄道事故のような環境だったら・・・、
太平洋東北地方大地震の死者は35人。
遺体はすぐに地中に埋められて、瓦礫はゴミとともにコンクリートで固められて道路や高架、堤防に使われ、福島原発は「多少破損したが異常はない」
として処理されるかもしれない。
・・・・・・なんて思っています。