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国府の海岸はとても広いが、サーファーもかなりいる。
関西のサーフポイントは分散しているので天気予報が重要だった。
今のように、高知の室戸に行けばまず外さないというような時代ではなかった。
ポイントは、和歌山の磯ノ浦。日本海福井県の高浜、京都府の浜詰や由良、そして三重県の国府近辺。
あとは、波を求めて北上する。
国府に波が無ければ、フェリーに乗って愛知県の伊良湖浜に行く。
そこでもなければ、御前崎まで行く人もいる。
けどなぜか、三河近辺だけは避けた。
ロコ(地元)の縄張り意識が強く、もめるなら御前崎まで行ってしまえ、となる。
特に大阪のサーファーは、どこまででも車で行った。
それで、「どこにでもいる なにわ ナンバー」と言われていた。
国府の場合、ポイントを探して北に北上することができる。
しかし、和歌山磯ノ浦はいい波が来るし大阪にも近いが、波情報と天気予報を誤ると、次に捜しに行くポイントがないのでサーファーにとっては地獄の糞詰まりとなる。
日本海の場合、実は日本海というところは、石川県から山口県までものすごく沢山のポイントがある。
しかし、日本海は狭い海だ。
低気圧が通過してしまうと悲惨だ、太平洋のように遠路遥々やってくるタイプの うねり という波が無い。
そんなときは、ガラスのように綺麗な水面になってしまう。
しかも天気予報からは、読みにくく、一旦期待して外した場合は一日寝ているしかなかった。
波がある日は最高だった。
もともと、太平洋よりも塩は薄くて、水が綺麗で景色も良く遠浅のところも多い。
ブレイクする波も綺麗だ。
関東の人がうらやましかった。
静波あたりから伊豆半島、検見川あたりから九十九里浜・・・・。
お金だけあったら、どこかの浜に住み付いて生きたかった。
この日の波はヘッドほどの波で、すこしダンパー気味だったけど、何度も何度もいい波を捕まえることが出来た。
風は軽くてクロスオフショアー。
カレントを見つけて沖に出る。
沖に出ると案外静かで平和になる。
波待ちをして、自分と「友達」になれそうな波を捜す。
波は私に、チョロっと白い舌を出して呼びかける。
「俺に乗るかい?」
「いーや、行ってくれ」
「おーい、俺に乗るかい?」
「いーや、またにするよ」
「・・・・」
「お前に乗りたい」
「おう、おいで」
「友達」に背中を向けてパドリング。
体が波に吸い付いてゆく。
そして、「友達」が私を軽く押してくれた時、ボードにすばやく乗り上がる。
「友達」に押されながら滑り出す。
重心を低く構えてレイルをかます。
そこで波とぶつかってしまった。
(残念、ありがとう、またな)
泡で真っ白になった友達を後にして、ボードを沖に向けて元のところに戻る。
そして、次の「友達」を待つ。
昼時になって、波が下(お)ちてきた。
浜に戻ると、皆も戻るところだった。
「宿場、昼にしよか」
「おー、しょーか」
一旦駐車場まで戻ると岡田や他の連中も戻ってきた。
駐車場にあるお菓子屋さんでおばあちゃんと話しながら、おにぎりとコーラを買って堤防に戻った。
岡田が堤防に座っていたので、隣に座った。
岡田はもう「正常」に戻っていた。
「おう、今日もカナちゃんの愛妻弁当かあ、羨ましいのー・・・これ、くれ」
私は、岡田の弁当の玉子焼きに手を伸ばした。
「おう、食えや、これもやるわ」
「くおー、適度に塩が効いて、うまいなぁ」
「あいつ、結構上手いやろ」
「今日はカナちゃんどうしたんや」
「なんか、用事があったみたいや」
「ほーか、昼からどうする」
「そうやな、もうひと乗りしてから帰ろか」
「わかった、皆に言うとくわ」
横で藤本がウエットを脱いでうつ伏せに寝ていた。
「おい藤本、日焼けしすぎんなよ」
「うーん・・・」
我々はまた海に入り、疲れ果ててて戻ってきたのが14時すぎだった。
けだるそうにウエットを脱いでシャワーを浴びた時は、パリッとしたが直ぐに眠くなった。
いつものことで、少し寝た。
日が少し西に傾く時間に起きて、ボードを車に積み上げて、6人は2台の車に乗り込んだ。
太平洋にさようなら。
・・・また来るよ。
It's not far down to paradise
At least it's not for me
And if the wind is right you can sail away
And find tranquility
Oh the canvas can do miracles
Just you wait and see
Believe me
車の中では、クリストファークロスのセイリングが流れていた。
(サーフィンではなくてヨットの歌だけど・・・)
Sailing
Takes me away
To where I've always heard it could be
Just a dream and the wind to carry me
And soon I will be free
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【沖田】私。
【岡田】ドラムが好きな沖田の親友
【清水谷】ベース好きのサーファー、無口なので
あまり出てこない。プロを目指して東京に行く
【福山】ギターを弾く、女好き。
【かな子】岡田の彼女。日焼けで真っ黒。サーフィンもする。
【ちせみ】私の彼女
【宿場】13年落ちのホンダゼットを運転。後輩
【藤本】宿場の親友。サーフィンのプロを目指す。
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