小説「絵慕の夕風」--その15 レーススタート-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

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≪沖田≫R大3回生SFWSF

≪杉山≫R大3回生軽音絵慕のウエイター

≪三本木≫R大3回生絵慕のウエイター

≪浅田さん≫R大4回生 WSF軽音絵慕のウエイター

≪シゲさん≫knk大3回生絵慕常連ヨット

《内村 晴子》 S女学院1回生 WSF

《井本 里美》 S女学院1回生

(SF=サーフィン、WSF=ウィンドサーフィン)

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「さあ、ぼちぼちスタートラインにまで行くか」


琵琶湖のど真ん中に本部艇が湖に揺れている。


我々はそこに向かうことにした。



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スタートは必ずスターボードでスタートする。


つまり、風を進行方向の右から受ける船ばかりになる。

(スタートは必ず風上に上るので風上に対して右45度に進むか左45度に進むかを決めなければならないが、左45度に進むほうが優先権がある)


ここで一艇だけ右45度に進もうものなら他の艇とボコボコぶつかって大顰蹙(ひんしゅく)にもなるし、優先権がないので避けなければならず話にならない。


これは航海法でも規定されていて、ニュースでも自衛隊のイージス艦や潜水艦が民間の船と衝突した事故があるが、どっちが引かなくてはならないか、どういう避け方をしなくてはならないかはヨットレースでも同じだ。



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「ぷを~~~~っ」


殺虫剤のボンベのようなところにラッパを取り付けたようなホーン。


最初に聞くと、なんとも間の抜けた響きがする。


「今のは5分前やな、よし、本部艇の外へ廻るぞ」


「オキちゃん、風の向きはわかってるな、本部艇の外からちょっとづつ動いてスタートラインに並ぶから見といてな」


「おう!」


みんなこんなに大きな船をこまごまとぶつからずに操作している姿をみて、私は関心しきりだった。


なんというか、清清しく新鮮で静かな緊張感だった。



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「ぷを~~~~っ」


「4分前になったぞ、動くぞ」


オーナーが言って、シゲさんがセールを操作して、スタートラインに近づいた。


風があるので、早く並びすぎると、船を旨く止めていても風下には少しずつ流される。


「ラインを出るなよ」



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「ぷを~~~~っ」


「一分前やぞ、ライン絶対出るなよ!」


今回のレースは大きなレースで50艇ほど出ている。


だから、スタートラインはビッシリと並んで身動きはできなかった。


30秒前になって、どの艇も風を入れ始めた。


「ぷを~~~~っ」


スタートだ!。



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全ての船が、静かに、サーッと走り出した。


「すっごいなぁ・・・」


エンジン音のない乗り物のスタートを始めて経験した私は、音のない迫力を始めて味わった。


おc

田崎真珠 メルボルンー大阪カップのスタートシーン

http://www.osakacup.com/2003j/index-j.html

オーストラリアからダブルハンドで大阪までやってくる。

4年に一度開催されて今で5回目。

右端の船が本部艇でスタートライン。

風は左から、風上に上ってゆこうとしている。

ヨットレースのスタートは常に風上に向かう。

最初のポジション取りでレースの行方が大きく変わる。

ヨットやウインドサーフィンにとってスタート時の

ポジションやコース取りはとても重要だ。


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小説「絵慕の夕風」--その1--

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